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10年後の水文化を予測するためのツールブック

10年後の水文化を予測するためのツールブック

 かつて日本人は湖沼や河川、井戸から水を汲み、それを運んで暮らしていました。しかし、今は蛇口をひねれば飲み水が出て、水洗トイレはレバー1つできれいになります。下水道の普及によって衛生面も向上しました。飲み水の確保さえままならず、乳幼児の死亡率が高い途上国に比べれば、この変化は喜ばしいことと言ってよいでしょう。
 その反面、水をめぐって成り立っていたコミュニティが失われ、上下水道の普及で費やすエネルギーが膨大になるなど負の面もあります。でも、元の不便な生活に戻ることはきっと不可能です。
 日本社会はこれからさまざまな問題と直面します。人口減で国や行政の税収は少なくなるでしょうし、上下水道をはじめとする社会インフラを支えてきた担い手も減少するはずです。
 はたして日本は、今の水文化を次代に引き継げるのだろうか――。これが「10年後の水文化を予測するためのツールブック」をまとめた出発点です。
 少し先の未来である「10年後」を念頭に、官公庁や公的機関が発表している水に関するオープンデータを集めて現状を把握し、注目すべきポイントを探りました。まだまだ不十分ですが、1人でも多くの人たちと一緒に「健全な水文化の継承」を考えるきっかけになればよいと思っています。

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10年後の水文化を予測するためのツールブック 10年後の水文化を予測するためのツールブック 10年後の水文化を予測するためのツールブック

目次

なぜツールブックが必要なのか

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 昨日まで着ていた服が、なんとなく場にそぐわない……誰にでもそんな経験があると思います。自分の変化と周囲の環境が合わなくなったと感じるからです。文化とは、社会の実態に合わせて人々がまとう服のようなもの。水の文化も同じです。戦後、経済成長を遂げましたが、東日本大震災以降、潮目が変わったように思います。時代潮流を踏まえつつ、現在の水文化にかかわるデータを見つめ、「何がおもしろいのか」「注目すべき点は何か」を考えることで「次代の文化の芽」を発見する。これがツールブックの目的です。

  • 潮目が変わる
  • 文化の基盤が変わる
  • 未来を見る目を変える

序章

10年後の水文化を考える前に・・・・
私たちと水とのかかわり

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 飲み水がどこから来て、使い終わるとどこへ行くのか、正確に説明できる大人は少ないのではないでしょうか。水にまつわるシステムが高度化したことで、「水」と「人」の距離が離れてしまったと感じます。「見える水」と「見えない(見えにくい)水」、「物理的な距離」と「心理的な距離」を軸として、このツールブックで扱うべきテーマを考えました。

  • 「10年後の水文化を予測するためのツールブック」発行の目的
  • いつのまにか離れてしまった「水」と「人」の距離
  • 水と人のかかわり(水文化)を俯瞰する
  • 10年後の水文化を予測するうえでの問題点
  • ツールブックで扱うテーマ一覧
  • 「過渡期をいかに乗り越えるか」が水文化継承のカギ

1章

日本の人口動向と水資源

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 日本の人口は、2008年から減りはじめました。また、核家族化や晩婚化などライフスタイルの変化によって「家族のかたち」も変わりつつあります。人口減少は地域ごとに偏りが出るうえ、単独世帯も増えるという未来が待ち構えているのです。地球と日本の水資源の現状について踏まえたうえで、私たちの暮らしを支える上下水道の維持・管理に関するデータを集めましたが、国や自治体は危機感を募らせていることが読み取れます。

日本の将来人口予測  減り続ける人口。増えゆく単独世帯

日本の総人口の推移/年齢区分別人口割合の推移/
2040年の総人口に占める各地域ブロックの割合/
長期的に見た日本の総人口/地域別に見た人口減少と少子高齢化/
世帯類型別にみた世帯数の推移/日本の将来推計人口

地球と日本の水資源  日本はけっして水が豊かな国ではない

地球上にある水の量/世界の国々の降水量と水資源量/日本の年降水量の経年変化/
地域別の降水量と水資源賦存量/長期的に見た水ストレスの変化/
水使用形態の区分/日本の水資源賦存量と使用量

上下水道の維持・管理  人口減で水のインフラはどうなる?

主要都市の家庭用水道料金/政令指定都市および東京の下水道料金/
上水導管の延長の推移/下水導管の延長の推移/無居住化が進む日本の国土

2章

日本の「水と人」を巡るデータ

「見える水」と「見えない(見えにくい)水」、「物理的な距離」と「心理的な距離」を軸に洗い出したテーマとそれにまつわるデータを4節に分けてご紹介します。まずは身近な「見える水」からスタートして、徐々に一見縁遠いように思える「見えない(見えにくい)水」へと進みます。

(1)生活・水のインフラ
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 節水は、技術の進歩もあって進んでいますが、年代別に意識の差が大きいことが気になります。また、およそ7割強の人が水道水の質と料金について「現状のままでいい」と答えているのは興味深いです。つまり過剰な設備投資は求めていないのです。これは未来の水文化を考えるうえで重要なポイントとなりそうです。そのほか、人口減少は水道事業の継続性にも影を落としていること、ミネラルウォーターは備蓄用途が目立つことなどもわかりました。

生活用水  減少傾向の「暮らしで使う水」

生活用水使用量の推移/男女、年齢別の節水意識/不安を感じる水の災害/
家庭での水の使われ方/世帯人員別1か月あたりの平均使用水量

上水  水道水の「質」と「コスト」

高度浄水処理等による浄水量の推移/
三大都市圏における高度浄水処理等の割合の推移/
三大都市圏における水道水の10点評価の推移/水道水をどうしていくべきか

水道事業  人口減少、後継者問題に直面

地方公営企業の事業数/日本の総人口と有効水量/基幹管路の経年管割合/
給水人口別水道事業者数/水道事業の年齢別職員数

ミネラルウォーター  飲用だけではない普及理由

ミネラルウォーター生産量と輸入量の推移/
日本と海外の1人あたりのミネラルウォーター消費量の比較/
地域別世帯あたりのミネラルウォーター年間支出額/
地域別水道水の質に対する満足度/災害時の水の備え

水辺とレジャー  実際に水と親しむ機会は減少

水とかかわる豊かな暮らし/河川空間の全国年間利用者数の推移/
河川空間利用者の利用形態別内訳/泳ぎたいと思うきれいな川

地下水  長期ビジョンが必要な地下水利用

地下水使用の用途別割合/地域別の都市用水の水源別取水量/
全国の地下水使用量の推移/全国の地盤沈下の状況

湿地  生物多様性を育む湿地をいかに守るか

現在の湿地名別湿地面積順位/明治・大正時代と現在の湿地面積/
日本のラムサール条約湿地/田・畑種類別耕地面積の推移/
蕪栗沼へのマガンの飛来数推移

温水洗浄便座  日本人の暮らしを変えた水洗化

水まわり器具の保有状況/都道府県の水洗化率/水にまつわる生活家電の普及率推移

(2)災害・防災
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 過去40年間で年降水量の変動が大きくなっています。気候変動による異常気象の一環といわれますが、それは水にまつわる災害の危険性が高まることを意味します。堤防を越えて川の水が溢れる「外水氾濫」に加えて、市街地に降った雨が排水できず地表に溢れ出す「内水氾濫」が近年問題になっています。ICTを用いた水害対策や、ハード・ソフト両面の必要性について見ていきます。

ゲリラ豪雨  増加傾向を示す「短時間強雨」

アメダスによる1時間降水量50㎜以上の年間観測回数/
アメダスによる1時間降水量80㎜以上の年間観測回数/
日本の年降水量偏差の経年変化

情報通信技術  進化するICTの水害対策

ゲリラ豪雨を監視するXRAINの特徴/XRAINの整備状況/
ウェザーニューズのコミュニティ「ゲリラ雷雨防衛隊」の県別実績/
災害監視サービス「サイカメラZERO」の仕組み

土砂災害と河川氾濫  ソフト面の強化が必須

土砂災害発生数の推移/洪水氾濫域に集中する資産と人口/
2012年の都道府県別水害被害額/全国の水防団員数の推移

内水氾濫  都市圏水害の多くを占める内水氾濫

水害原因別被害額構成比の推移/水害原因別都道府県別水害被害額/
水害原因別一般資産等被害額および公益事業等 被害額構成比/総合的な内水氾濫対策

(3)生産・経済活動(ビジネス)
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 工業用水や農業用水は、ふだんの暮らしのなかでその存在を感じることは少ないでしょう。しかし、実際にはかなりの量を使っていますし、農業用水の場合は「仮想投入水」の問題も孕んでいます。一方、再生可能エネルギーの開発が求められているなか、水のもつポテンシャルを活かそうとする動きが活発化しています。舟運と港湾、漁港と市場、クルーズ観光の動向にも着目しました。

工業用水  生活用水に匹敵する工業用水使用量

全国の水使用量/工業用水使用量等の推移/業種別淡水使用量の推移/
業種別回収率の推移

農業用水  仮想的に輸入されている「農業の水」

農業用水量の推移/主な食品の品目別輸入率の推移/水消費原単位の算定/
仮想投入水フロー

小水力発電  自給率100%をめざす自治体も

発電電力量の推移/長野県のエネルギー自給率目標/
農業農村整備事業による小水力発電の整備状況

水にまつわるエネルギー  温排水利用と、新たなエネルギー資源

部門別最終エネルギー消費の推移/エネルギー源別最終消費の推移/BSR分布図/
メタンハイドレートの特性

海外の水ビジネス市場  日本の優位性を活かし海外進出なるか?

地域別取水量の推移と予測/世界の大型RO法海水淡水化プラント/
世界水ビジネス市場の成長見通し/日本が優先して取り組むべき事業分野/
日本の水ビジネス関連産業がめざす目標

舟運と港湾  港湾はグローバル経済の結節点

海上出入貨物年次推移/日本の港湾数一覧/取扱貨物量ランキング/
横浜港の輸出貨物/横浜港の輸入貨物

漁港と市場  漁業の「六次産業化」への期待と不安

指定漁港数一覧表/漁港地区登録動力漁船の推移/卸売市場の取扱金額/
漁業者の六次産業化に対する意識/漁業者による六次産業化の取り組み内容

クルーズ  「海の路」にも通じるクルーズ観光

外航・国内クルーズ乗客数の推移/外航クルーズ海域別シェア/
国内クルーズ泊数別乗客数推移/日本の港湾へのクルーズ船寄港回数/
2012年 港湾別のクルーズ船寄港回数

(4)水資源のマネジメント&水インフラのメンテナンス
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 水は循環する資源ですが、その大部分は海水や地下水で、河川や湖沼に存在する淡水はわずか0.01%です。限られた水資源を適切に利用するためには、水関連のインフラをいかに少ない投資で維持・管理するかが重要です。そのためには、点ではなく面でとらえる流域マネジメント、個々の施設・ビルでの雨水・再生水利用、さらに水源となる森林(緑のダム)の整備は欠かせません。これらの現状を表すデータを集めると、問題点が浮かび上がってきました。

水インフラのゆくえ  迫りくる水インフラの老朽化

国土基盤ストックの維持管理・更新費の将来見通し/
農業水利施設の老朽化状況/公共機関からの受注工事請負契約額/
河川管理施設への非破壊探査機器などによる特別点検

流域マネジメント(上水道)  豊かな地下水を残すための自主調査

西条平野(加茂川流域)の地下水流動概念図/西条平野の塩素(ppm)分布図/
西条平野の地下水利用量/西条市市塚地区の状況

流域マネジメント(下水道)  スケールメリット生む「流域下水道」

下水道処理人口普及率/下水道普及率と多摩川の水質の推移/
多摩川における下水処理水の割合/多摩川における高度処理割合の推移

水辺の新たな利活用  溜池や耕作放棄地での太陽光発電

耕作放棄地の面積/農家分類別の耕作放棄地面積/農業地域類型別の耕作放棄地面積

大規模商業施設・ビルの水循環
国レベルの施策が求められる雨水・再生水利用

雨水・再生水利用施設数/地域別の雨水・再生水利用施設数/雨水・再生利用状況/
用途別の雨水・再生水利用施設数

水源のマネジメント  みんなで手を携えて守る「緑のダム」

保安林面積/国産材供給量と木材自給率/森林ボランティア団体数/
企業による森林(もり)づくり活動の実施箇所数/都道府県による独自課税の使途

3章

将来の水文化を意識するための7つの潮流

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 ほぼオープンデータのみで現在の水文化を表すテーマを切り取りましたが、時代の潮流がどう変化しつつあるかも踏まえなければ、集めたデータもただ眺めるだけで終わってしまいます。そこで、未来に向けて変わりつつある時代潮流を7つ掲げました。7つの潮流を意識して、オープンデータを見直し、テーマごとに未来を企画・創造すれば、各地に多様な「クリエイティブ水都」が誕生するのではないでしょうか。

  • 文化をつくるために潮流を意識しよう

    潮流① 少子高齢化はチャンスだ
    潮流② 農の水利用が、地産地消圏形成へ
    潮流③ まちはコンパクトになり、ICTが新サービスを生む
    潮流④ エネルギーと水の関係が変わる
    潮流⑤ グローバル化する水文化
    潮流⑥ 回復しやすい治水へ
    潮流⑦ 移動がキーワードとなる

    クリエイティブ水都へ

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