2008年2月発行

水の文化 28号 小水力の包蔵力(ポテンシャル)

水の文化 28号 小水力の包蔵力(ポテンシャル)
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「日本は水力発電の国」
終戦後から高度経済成長期までの
日本のエネルギー政策は、
風土や気象条件を生かした水力でやっていく、
というものでした。
火力と水力が逆転したのが、1955年。
以来、電力供給の多くを火力、
そして原子力が担うようになりました。

そんなエネルギー事情は、
温室効果ガスという視点から、
今、変革を求められています。

落差と流量が生み出す水エネルギー。
その包蔵力は意外なほど大きく、
物理的な力を超えて、
人と社会の包蔵力まで
引き出す勢いを持っています。

日本は小水力のポテンシャルを生かして
持続可能な国を目指すことが
できるのでしょうか。

目次

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永続地帯指標から見る小水力と地域づくり
中山間地はエネルギー先進地域
倉阪 秀史 PDFダウンロード
水路をエネルギーの路へ
水路を「共の論理」で運用する
三野 徹 PDFダウンロード
みたか水車博物館
働く水車が伝える水のポテンシャル
小坂 克信 PDFダウンロード
地域小水力発電のポテンシャル
エネルギー自立型から供給型へ
小林 久 PDFダウンロード
小水力発電の普及は
住民参加型の発電所運営が鍵

環境を自分たちの力で守るエコ意識


(財)新エネルギー
財団


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市場原理を利用した
気候変動回避への取り組み

排出量取引の現状
阿部 敏明 PDFダウンロード
水の文化楽習 実践取材 21
〈長野県大町市〉NPO地域づくり工房

ミニ発電でくるくる地域づくり
編集部 PDFダウンロード
みずだより
水、土、木、無心になれるもの
永島 敏行 PDFダウンロード
水の文化書誌 19
水と食糧とエネルギーの根幹

《水路》
古賀 邦雄 PDFダウンロード
文化をつくる
小水力の包蔵力
編集部 PDFダウンロード
2007ミツカン水の文化交流フォーラム
インフォメーション
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永続地帯指標から見る小水力と地域づくり 中山間地はエネルギー先進地域

倉阪 秀史

倉阪 秀史 くらさか ひでふみ
千葉大学法経学部総合政策学科准教授

1964年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。87年に環境庁に入庁し、温暖化やリサイクル、企業の環境対策、環境基本法などの施策にかかわる。その後アメリカ・メリーランド大学客員研究員を務め、98年から現職。
主な著書に『環境を守るほど経済は発展する』(朝日新聞社 2002)、『エコロジカルな経済学』(筑摩書房 2003)他

現代社会が抱える諸問題を解決するために、
再生可能資源を基盤とする経済社会に
徐々に転換していく必要がある、
と提言する倉阪秀史さん。
「永続地帯」という指標を用いて
地域が持つポテンシャルを「見える化」していく過程で、
小水力の潜在力に出会いました。

再生可能資源を基盤とする経済社会へ

 産業革命以来、経済社会は枯渇性資源を基盤として発展してきました。しかし、化石燃料をはじめとする枯渇性資源は、文字どおり百年後、二百年後には無くなってしまいます。また、大気汚染や温室効果ガスによる地球温暖化などといった問題を考えると、たとえ無くならなくても高価すぎて使えない、影響を考えると使ってはいけない、という時代がすぐそこまできています。
 こうした事情を鑑みて、社会の持続可能性を確保するためには、更新性資源、言い換えれば再生可能資源を基盤とする経済社会に、徐々に転換していく必要があります。
 では、どの地域が再生可能資源ベースの経済社会に近いのか。それをわかりやすくしたのが「永続地帯」という指標です(※参照)。
 私が永続地帯という概念に注目したのは、自然エネルギーを中心とした経済社会にどのようにして変わっていくことができるか、と考えたことがきっかけです。「今すぐには無理だろう、徐々に変わっていくことしか考えられないだろう」というのは、当然のこと。
 国全体で見たら、自然エネルギー(太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマス)による発電量は民生用電力需要量の3・35%にしかすぎません。大型水力発電を入れたとしても、そんなにはいきません。
 しかし、国全体で見るという視野をいったん外してみて、地域ごと、例えば離島に限って見てみたら、今でも100%自然エネルギーでやっている所があるかもしれない、と考えました。
 見方を変えれば、自然エネルギー基盤の経済社会に近づいている所があるんじゃないか、そしてそれを見えるようにしていけば、みんながもっと気がついてくれるんじゃないか。さらに今、自然エネルギー基盤の経済社会に近づいている所が増えていけば、将来的に自然エネルギーを中心とした経済社会に移行していくストーリーを描けるんじゃないか、と。
 ですから今、やるべきことは「見える化」です。自然エネルギー基盤の経済社会に近づいている所が見えるようになれば、世間の目もそちらに向くでしょう。
 また、今後は化石燃料の安定供給に不安を抱かされるような出来事が増えるのではないでしょうか。そうなれば永続地帯の需要が一気に上昇するかもしれません。ですから、今から「見える化」をしていこう、というのが私の研究の発端です。
 人はエネルギーだけで生きているわけではありませんから、永続地帯という際には、食料とエネルギーについて考えていきたいなと思っています。今回の試算ではエネルギーだけ、しかも民生用の電力だけを対象にしています。民生用といった場合には、家庭だけではなくオフィス(業務用)も入りますが、工場(工業用)、輸送用は入っていませんし、熱量も計算には入れていません。
 ですから現在発表している永続地帯指標は、中間段階とお考えください。

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水路を「共の論理」で運用する 水路をエネルギーの路へ

三野 徹

三野 徹 みつの とおる
滋賀県立大学客員教授
京都大学名誉教授

1943年生。京都大学農学部卒業後、同大学院修士課程修了。同大学農学部助手、助教授、岡山大学農学部助教授、教授、同大学環境理工学部教授を経て、1997年より京都大学大学院農学研究科教授、2007年定年退職、現職。専門は灌漑排水学、水環境工学。
主な著書に『地域環境水文学』(朝倉書店 1999)、『灌漑排水(上)(下)』(養賢堂 1986)他

日本の風土に合った水利インフラとして
千年以上にもわたる歴史を持っている水路。
日本には、大小合わせて40万kmものの
農業用排水路が張り巡らされていますが、
これらは食糧生産のために
安定した水を給排水すると同時に、
エネルギーを運ぶ路でもあります。
国民的資産である水路を
「エネルギーを持続して使う」ための新たな社会的共通資本
(Social Overhead Capital)とするためには、
「信頼を生み出すような、人々のかかわり
(社会関係資本:Social Capital)」、
すなわち「共の論理」を育てることが不可欠です。

世界の水管理の潮流
「社会的管理から経済的管理へ」

 農業用水と水力エネルギーの関係をお話しする前に、イスラエルの水源であるガリラヤ湖(キンネレット湖)の例を話したいと思います。シリア、ヨルダンとの国境にあり、イスラエル最大の淡水湖です。この湖の水をポンプで汲み上げ、わずか数十年でシナイ半島にまで至るイスラエル全域を灌漑開発しました。紀元後すぐに国が消滅して以来、世界中に散らばっていたユダヤ人がいっせいに戻ることによって急増した人口を吸収したのが、この灌漑開発だったんです。これは1948年(昭和23)に独立したイスラエルのその後の発展にとって、歴史的に大きな意味を持つことになりました。
 湖の集水域であるシリア領ゴラン高原を、イスラエルが占領したのが1967年(昭和42)の第三次中東戦争です。つまり中東紛争は、水を巡る争いという一面も持っていたのです。
 したがって、中東紛争を抑えるためには、国境を越えた水の調整を避けては通れません。
 シリアは今のところこの水を使っていませんが、自分の領土に降った雨をイスラエルに全部使われてしまうのは面白くないので権利を主張しています。
 イスラエルはその水利用のための投資をして、インフラ建設を行ないました。そのために国家を挙げて水を守ろうとしてきましたが、最近方向が変わってきました。その調整を経済原理に任せようとしています。国家が管理するのではなくて、市場原理に任せようというのです。国と国が経済的に強く結びつけば、戦争をすることができなくなります。イスラエルはこれまで社会的に管理していたものを、経済的管理に切り替えようとしているのです。
 市場原理に委ねることにより、経済合理的にいっそう水の利用効率を促進することになり、和平をもまた、実現しようとしています。社会実験として、中東和平の仲介者であるアメリカの研究者とイスラエルの研究者が中心となって進めています。
 この「経済原理によって水利の調整を行なう」ことは、遠い国の話ではなく、日本でも県レベルで行なわれています。後でお話しする「琵琶湖総合開発」も、その出発点は「琵琶湖周辺地域が、湖の水を京阪神地域に供給する代わりに水源地域が経済的見返りを得る」ことでした。
 ガリラヤ湖でも、琵琶湖総合開発と同じように湖沼をダム化して、ヨルダン川と地中海沿岸流域へ水を流す管理をしています。しかし、ややもすると自然の供給量以上に水を使いすぎ、ヨルダン川に放流する分が少なくなり、最後に流れ込む死海が縮んでいきます。

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みたか水車博物館 働く水車が伝える水のポテンシャル

小坂 克信

小坂 克信 こさか かつのぶ
産業考古学会理事 水車と臼分科会代表
日野市立七生緑小学校 非常勤教員

「動力革命」の立て役者だった水車は、
食糧増産と産業発展の陰の功労者。
当時の最先端のテクノロジーを体現していました。
1897年(明治30)の統計では全国で6万台を数えた水車も、
動力が蒸気、電気へと転換し、
河川の水量が減ったことなどで、急激に衰退していきます。
しかし小水力発電の視点で見たときに、
日本の風土に合った水車は、
水の持つポテンシャルを思い起こさせてくれる生き証人です。

水車の歴史

 今でこそ、水車は田舎とか農村部のイメージを持つが、人力に比べて圧倒的な動力を持ち、大量生産を可能にした「動力革命」の立て役者だった。しかも、それは都市の動力だった。「水車は農村のもの」というイメージは、都市に動力用電力が整備されることで水車がなくなっていき、農村部にのみ残ったために形成されたのである。
 エネルギー源としての動力水車のほかにも、田畑に水を引く揚水水車が活躍し、それまで水を得にくかった土地に灌漑を施し農地を広げていった。
 つまり水車は、食糧増産と産業発展の陰の功労者。水車の「力」なくしては、日本の繁栄は有り得なかったと言っても過言ではない。
 日本に水車が入ってきたのは610年(推古天皇18)だといわれている。『日本書記』に高麗からの伝来とあるが、粉食に適した臼だったようで粒食を主とする日本には普及しなかった。その後、水車を671年(天智天皇9)製鉄に利用したという記録が残っている。
 揚水用水車を灌漑に使っていたという最古の記録は、829年(天長6)『類聚三代格(るいじゅうさんだいきゃく)』の太政官符に見られる。
 江戸時代には動力水車が大いに発達した。主に米搗(つ)きや菜種油絞りに使われたが、江戸中期から発達した背景には酒造業の発展や城下町への人口集中があった。短期間に大量の米搗きをする必要があることから、大型水車で多数の搗き臼を動かした。
 江戸後期になると、米搗き以外にも火薬製造や針金づくり、鉱石の粉砕、ふいごの動力、漢方の生薬挽きなどにも利用され、各種産業に応用されるようになる。現在の東京・小平市では火薬製造中に大爆発が起き、「所々で鳴動があった」と、江戸時代の名主の日記(東京・立川市)に記録されているから火薬製造はリスクと背中合わせ。したがって、高い手間賃を取ることができる仕事でもあった。
 この他にも、ノコギリを動かして製材をする水車、線香の材料となる杉の葉を挽く線香水車、陶土をこねる陶土用水車、と水の力を動力に変換して、考え得る限りに利用され尽くしたといえる。
 北関東と中部地方の製糸工場では、撚糸水車が活躍する。糸を染色してから織る先染(さきぞめ)織物は、生糸が細くて傷みやすいために、生糸を何本か撚り合わせる撚糸工程を経てから染色する。そのため、先染織物の製造には大量の撚糸を必要とするのだ。その動力として、水車が活躍した。

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エネルギー自立型から供給型へ 地域小水力発電のポテンシャル

小林 久

小林 久 こばやし ひさし
茨城大学農学部地域環境科学科准教授。農学博士。

1977年新潟大学理学部地質鉱物学科卒業、静岡大学大学院農学研究科農芸化学専攻(修士)修了、東京農工大学大学院連合農学研究科生物生産学専攻(博士)修了。民間コンサルタント会社勤務、コンサルタント事務所主宰を経て1996年より現職。2000年より東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程併任。全国小水力利用推進協議会理事。専門分野は農村計画学,地域資源管理学。
主な著書に『有機性資源の利活用(改訂農村計画学)』(農業土木学会 2003)、『肥料年鑑2006―第二章ライフサイクルアセスメントによる肥料の環境影響評価』(肥料協会新聞部 2006)他

小水力発電を活用したエネルギー自立型農村。
夢のような話ですが、
日本の水路が持つポテンシャルを考えれば、
決して実現不可能なものではありません。
地域の特性を活かした
村づくりに携わってきた小林久さんが、
その可能性とクリアすべき問題点を提示し、
エネルギー自立型をさらに進めて
エネルギー供給型農村に至る道筋を語ってくれました。

小水力発電推進協議会発足

 急峻な地形を一気に流れ落ちる水を、日本はうまくシステム化してきました。雨が多く、水は山肌を縫うように流れて、扇状に張り巡らされる。こうした地形や気候を活かせば、小水力をそのシステムの中に親和的に融合させることができるのではないか、と私は考えています。
 もともと、地域の特性を生かした村や町づくりが私の研究テーマです。その調査の過程で富山県南砺(なんと)市の城端(じょうはな)と大分県日田市の中津江村を訪ねました。
 城端と中津江は、かつて稼動していた水車を復活させて、地域を活性化しています。城端の場合は、90年代に市民から提案された「からくり水車復元」を実行し、町おこしを試みました。歯医者さんが歯磨き指導を目的につくった歯磨き水車や曳山水車など、「水車ウォッチングロード」にはすでに40基以上が稼動し、観光客もある程度呼べるようになっています。
 一方中津江は、鯛生(たいお)金山の開発時から水車による発電が行なわれていた地域。水車は20年ほど前に停止していましたが、2004年に「鯛生小水力発電所」を再生させました。この発電所は津江川の砂防ダムを利用したもので、中津江村の観光施設や村民の電力をまかない、余剰が出たときは九州電力に売って、経済的にもかなりうまく稼動しています。
 こうした例を実際に見聞きし、小水力発電に希望を抱いている人たちと出会ったことから、私たちは2005年に「小水力発電推進協議会」を発足するに至りました。

揚水水車と動力水車

 元来日本は、揚水水車で灌漑を行なって農業を発展させ、動力水車は穀物の精白・精米や製材、製糸などに利用して、産業の基礎を築いてきました。つまり、結果的に水がある所が生活や産業の始まりになりました。群馬県の桐生では撚糸に水車を使っていましたし、山梨県の都留や長野県の諏訪なども水車活用の良い例です。
 日光では線香をつくるのに、杉の葉を搗(つ)く動力として水車を利用していました。このように、水車は日本の中に「普通の施設」として自然にあったことがわかってきました。それで小水力利用は文化的な話と関連づけていく必要があるなと思っています。
 そればかりではなく、私は自然エネルギー関係の人とつき合うようになって、水車は魅力的というか、水自体を魅力的と感じるようになりました。それは、単純に作物用の水、飲み水、用水としてだけではなく、動力まで得られる資源として意味があると思ったからです。
 新エネルギーとしては風力発電も注目されていますが、オランダやデンマークなど常に一定の風が吹く地帯でないと効率が悪いうえ、風車自体も日本の景色にはなじみにくいような気がしています。

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小水力発電の普及は住民参加型の発電所運営が鍵 環境を自分たちの力で守るエコ意識

  • 上松 秦介

    上松 秦介

    (財)新エネルギー財団
    水力本部調査部

  • 礒野 淳一

    礒野 淳一

    (財)新エネルギー財団
    水力本部国際部

  • 橋本 雅一

    橋本 雅一

    (財)新エネルギー財団
    水力本部国際部

  • 橋本 信雄

    橋本 信雄

    (財)新エネルギー財団
    水力本部国際部

太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、
化石燃料に替わる新しいエネルギー源を調査・研究し、
国内外の情報を日本に普及させる活動を行なっているのが、
財団法人新エネルギー財団(NEF)です。
「日本の風土に適した小水力発電」と言われますが、
海外ではどのような取り組みがなされているのでしょうか。
その現状や、日本が果たしている役割についてうかがいました。

小水力発電
ヨーロッパでの事情

 ヨーロッパ諸国でも、日本と同じように大規模水力発電の開発がほぼ終わり、比重は小水力に移っています。ヨーロッパでは発電力1万kW以下を「小水力」ととらえていますが、地球環境問題の高まりで、再生可能エネルギーによる電力供給の比率を大きくすることが求められており、その一つである小水力開発についても議論が行なわれています。
 国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の水力実施協定に1995年、当時の通産省、外務省、科学技術庁から実施機関として指定され、当財団が調印し、以後そこでの活動を通して情報を収集しています。現在この実施協定に加盟しているのはノルウェー、フィンランド、スウェーデン、カナダ、ブラジル、中国です。
 再生可能エネルギーにかかわる実施協定には、水力をはじめ、太陽光、地熱、バイオマスなど10の実施協定があります。当財団は、加盟当初から水力実施協定の中に設けられた環境分野及び、教育分野の作業部会の活動に参画し、2006年度からは小水力作業部会の活動に参画しています。現在、参加各国やヨーロッパ小水力協会と連携して、最新技術を探ったり、情報を集めています。
 ヨーロッパの河川は、日本に比べると年間流量が比較的安定しています。灌漑水路もよく整備されています。EU15カ国で運転中の小水力発電所は約1万4000カ所あり、その出力計は1万800MWにもなります。近年は、既設発電所の設備更新が活発に行なわれているようです。さらに閘門開閉の水位差を利用して、タービンをつけて無駄に流れてしまうエネルギーを回収したり、イギリスの湖水地方でも石積み建屋の中に景観を壊さないように設置された発電所など、未利用のポテンシャルを環境と適合してうまく開発している例があります。
 各国の小水力開発の促進策としては、長期固定価格買取制度(Feed in Tariff)やグリーン電力証書が、多くの国で採用されているようです。やはり再生可能なエネルギーをもっと増やそうという視点から、法体系を整備して強力に後押ししようという姿勢が見受けられます。

東南アジア諸国での地方電化


 東南アジアには、まだ未電化地域が多いですね。例えばポルポト独裁という不幸な歴史を持つカンボジアは、国内に水力発電所が2カ所あるだけで、ほとんどがディーゼル発電となっており、国全体の供給能力も30万kWに満たない。しかも、その8割は首都プノンペンで消費されてしまいます。隣国のタイやベトナム、ラオス(予定)からの輸入電力などでその場をしのいでいる状況ですが、その3国ももちろん電気が余っているわけではありません。

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市場原理を利用した気候変動回避への取り組み 排出量取引の現状

阿部 敏明

阿部 敏明 あべ としあき
ナットソース・ジャパン(株)
アドバイザリーユニット
トランザクションユニット

地球温暖化の原因とされる
「温室効果ガス」の排出抑制の手法として、
注目を浴びる排出量取引。
しかし、
その仕組みが正しく理解されていない場合も見受けられます。
排出量取引の仲介・コンサルティングを専門に行なう、
ナットソース・ジャパン(株)
アドバイザリーユニットの阿部敏明さんに、
排出量取引の仕組みと現状を説明してもらいました。

気候変動と排出量取引

 気候変動は、今現在、実際に起こっている現象です。
 地球全体の表面気温が上昇していることは間違いのない事実です。その原因は、人類が排出する二酸化炭素をはじめとする「温室効果ガス」であることは、ほぼ疑いようのない事実と断定されるまでになりました。
 北極の海氷の縮小や、世界各地での氷河の融解、異常気象の頻発など、既に気候変動の影響は目に見えるまでに拡大しています。同時に、このままのペースで人類が温室効果ガス排出を続けた場合、地球表面の平均気温が21世紀末までに最大6.4℃上昇すると予想されています。
 その結果、海水面の上昇や、水の需給バランスの崩壊による降水量の偏りの拡大が引き起こされ、マラリヤ蚊などの生息域の拡大によって熱帯性感染症が広がるなど、社会や健康への影響をはじめとして、地球全体の生態系、環境に深刻な影響が出ることが予想されています。
 このような深刻な影響を最小限に食い止めるためには、できるだけ早い段階で温室効果ガスの排出量を削減し、自然(海洋や森林など)が吸収できる水準以内に抑制することが必要です。一つの目安として、人為的な温室効果ガス排出量を、2050年までに50%以上削減することにより「気温上昇を2℃以内に抑制できる可能性がある」という予測があります。
 気温上昇を2℃以内というのは、「環境や社会への影響が破局的な水準にはならない」ギリギリの数値であるとの予測から、環境の先進地域である欧州などはこの数値を長期目標として採用しています。
 温室効果ガスの排出は、経済活動を続けていく限り、ある程度不可避なものであるため、「可能な限り経済に対する負の影響を抑えながら、大幅に温室効果ガスの排出量を減らす」というのが気候変動対策の大命題となっています。この観点から生まれたのが、温室効果ガスの排出量取引という手法です。
 ちなみに「排出権取引」「排出枠取引」などの呼び方もありますが、ここでは「排出量取引」で統一します。
 排出量取引は、1990年代前半から酸性雨などの原因物質である硫黄酸化物の排出規制のために、アメリカで取り入れられてきた手法です。各火力発電所に硫黄酸化物の排出枠を定めた上で、排出枠を下回った発電所が、排出枠を上回った発電所に余剰となった枠を売却する制度です。

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第21回 水の文化楽習 実践取材
ミニ発電でくるくる地域づくり 〈長野県大町市〉NPO地域づくり工房

編集部

マイクロ水力発電で、
地域おこしに取り組んでいる市民団体があります。
地域の個性を生かした仕事おこしをしよう、と旗揚げした
「NPO地域づくり工房」の小水力発電への取組みに学びます。

内発型の開発を目指す

「NPO地域づくり工房」は、2002年の10月に発足し満5年を迎えた、長野県大町市にある市民団体だ。
「NPO地域づくり工房」の代表理事である傘木宏夫さんは、国からの援助や補助金、プロジェクトに頼りがちな傾向が強い中で、地域の個性を生かした仕事おこしをしていこうと、有志で会を発足させた。
 会の理念は、「市民からの仕事おこし」。もともと大町は、戦前から昭和電工、東洋紡といった大企業の立地があり、戦後はダム開発があり、近年ではオリンピックがある、というように外からの開発によって発展してきた地域だった。そのような体制に慣れてきてしまったために、そうしたことが望みにくい時代になった近年、苦戦を強いられるようになっている。
 まず発足からの半年間、《仕事おこしワークショップ》を計6回行なった。このワークショップは、地域で見捨てられている資源、生かされていない資源、いわば「ニッチ」を探そう、ということを目的に行なわれた。
 部屋を埋め尽くした人たちが、「この地域で生かされていないもの・こと・人・情報」をカードに書き出して、壁全面に貼った模造紙に分類しながら貼っていった。
 次に青い紙に「では、それを生かすためにはどうしたらいいか」ということを書いて出してもらった。ただし、「行政に何かしてもらう」というのは禁句だよ、というルールだったそうだ。
 それらの意見を再び整理していって、最終的に6つのプロジェクト案が残ることになった。
 その後、話合いを進め、「菜の花エコプロジェクト」と「くるくるエコプロジェクト」の2つが誕生した。なにぶん弱小貧乏団体なので、最初に立ち上げたときに寄附してもらった虎の子50万円をそのプロジェクトにあてるため、無計画なことはできない。できるだけ効果的に使えるように、計画は慎重に吟味された。
 誰でも経験があると思うが、アイディアというのは思いつきだけだったらいくらでも出てくるもの。しかし、具体的な一歩を考えること、つまり自分たちが持つ資源をどう活用するかを見極めることとなると難しい。それを半年間、ワークショップという形で、なだめたり叩いたりしながら練ってきたというのだ。

クモの巣状の水路

 小水力、いやマイクロ水力発電とも言うべき「くるくるエコプロジェクト」は、市内に張り巡らされた用水路を資源として生かそうというものだ。
 大町には2つの土地改良区があって、それを1枚の水路図にまとめてみた。そこに書かれた水路を全部つなげると、実に220dにもなるという。この辺りには、山から南に向けて標高100mから200mの扇状地が広がっている。鹿島川と高瀬川という2本の川が流れている間を、クモの巣のように支流が張り巡らされている。

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みずだより
水、土、木、無心になれるもの

永島 敏行

永島 敏行 ながしま としゆき

1956年、千葉県出身。1978年映画「サード」(ATG)でデビューし、第2回日本アカデミー賞主演男優賞など、各賞を受賞。俳優として映画・テレビ・ラジオ・舞台などで幅広く活躍する一方、ライフワークで米づくりに参加。農業に強い関心があり、定期的に青空市場を開催している。2005年には、(有)青空市場を設立、農業コンサルタント活動も行なう。
http://www.aozora-ichiba.co.jp/

 米づくりも15年になって、注目されるようになったけど、それほど大義名分があって始めたことじゃない。
 もともと旅館のうちの子供だったから、食の有難さや大切さ、料理して食べることに関心があったんです。
 田んぼにかかわるきっかけは、秋田の十文字映画祭。
 秋田でも次々に映画館が閉鎖され、危機感を持った地元の映画好きの青年たちが、1982年(昭和57)に自主上映サークル「夜間飛行」を結成しました。
 手探りで始めた上映会は大成功。でも、資金や運営の生き詰まりで活動存続が危機に。それを救ったのが、1991年(平成3)に各市町村に配布された「ふるさと創生基金」の内から与えられた補助金100万円だった。そのお金で、話題性のある映画祭を目指すことになったんです。
 スタッフの一人が大学時代の野球部仲間だったのがきっかけで、映画祭にもかかわるようになったんだけど、そいつが「休んでいる田んぼが借りられるよ」って。
 ちょうど娘が生まれて3年目。思いっ切り泥んこになって遊ばせられる場所が欲しかったのと時期が重なった。うちともう一組の家族とで、1993年(平成5)から年に4、5回通いながら米をつくった田んぼも、最初は1反の半分、今は1反に増えました。

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水の文化書誌 19
《水路》水と食糧とエネルギーの根幹

古賀 邦雄

古賀 邦雄 こが くにお
古賀河川図書館長
水・河川・湖沼関係文献研究会

1967年西南学院大学卒業
水資源開発公団(現・独立行政法人水資源機構)に入社
30年間にわたり水・河川・湖沼関係文献を収集
2001年退職し現在、
日本河川協会、ふくおかの川と水の会に所属
2008年5月に収集した書籍を所蔵する
「古賀河川図書館」を開設
URL:http://mymy.jp/koga/

 真の国際交流、国際貢献とは、一体どのような活動を指すのだろうか。それはパキスタン、アフガニスタンの戦火の中で、1984年(昭和59)から医療サービスを続ける「ペシャワール会」の活動にみることができるようだ。その行動は、医療行為だけでなく、生命の水の確保に、井戸堀り、カレーズの復旧、さらに農業用水路開削にも力を注いでいる。ペシャワール会代表中村哲著「医者、用水路を拓く」(石風社 2007)は、アフガン・クナール河に斜堰の取水堰を造り、全長13kmのマルワリード用水路の開削に悪戦苦闘する物語である。その諸元は、取水量4.5m³/s〜5.5m³/s、灌漑面積約9700ha、柳など水路沿いの植樹約12万5000本、分水路7.2km、付帯施設(橋・水道橋・遊水池)である。
 クナール河はヒンズークシュ山脈の雪解け水が一気に押し寄せてくる荒川、と思えば干天が続くと優しい川に変化する。低予算で、近代的な土木機器を欠く中で、人力に頼り、材料は近くの山から岩や石を採取し、多くの蛇籠(じゃかご)に拠った。用水路の土地は、地主や両岸の人々の確執に遭遇しながらも医療活動で培った長老たちの人脈で解決。竣工直後の洪水で取水堰、水路、遊水池が壊され、再々の改修に苦悩するが、4年の歳月を経て完成する。今では、沙漠地帯に緑が拡がっている。
 この取水堰設置の際に、筑後川における山田井堰の斜め堰を参考にしたというから驚く。中村哲はマルワリード用水路の施工中何度も帰国し、菊池川、白川、緑川を歩き、加藤清正の水制・石刎(いしはね)、鼻ぐり井出工法を学び、さらに山田井堰堀川水路を訪れ、斜め堰の水理を調査研究している。江戸期に完成した山田井堰に関しては、鶴田多多穂著「山田井堰堀川三百年史」(山田堰土地改良区 1981)、福岡県朝倉町史料編さん委員会編「堀川物語」(朝倉町教育委員会 2005)があり、その型式は傾斜堰床式石張堰で、取入水路、魚道、舟通しが設置されている。
 1953年(昭和28)6月、山田井堰は筑後川の大水害で決壊するが、改修がなされ、筑後平野へ灌漑用水を送り続けている。筑後川とクナール河における斜堰の施工には、時空を越えた不思議さを感じさせる。なお、アフガニスタンの水利灌漑については、東京大学西南ヒンドゥークシュ調査隊編「アフガニスタンの水と社会」(東京大学出版会 1969)が発行されている。

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文化をつくる
小水力の包蔵力

編集部

再生可能エネルギーの時代

 石油の値上げが、家計を直撃している。ガソリンや灯油の高騰のみならず、輸送費などのコスト増が消費財の価格に跳ね返ってきているのだ。
 化石燃料が枯渇資源だということは、以前からわかっていたことだ。近年はそれに加えて、温室効果ガスの発生源としても非難の対象になっている。
 そうした背景を反映して、俄然、脚光を浴びているのが更新性エネルギーとか再生可能エネルギー (Renewable energy) といわれる自然エネルギーである。
 日本では現在、エネルギー資源の主力として利用されている化石燃料や原子力に替わるものとして「新エネルギー」と命名した再生可能エネルギーを奨励している。1997年(平成9)には、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」として「石油に対する依存度の軽減に特に寄与するもの」の利用を推進する法律が定められている。
 こうした動きを受けて、NPOや各種団体が旗揚げし、太陽光、太陽熱、風力、地熱、水力、バイオマス、海洋温度差、潮力、波力などといった自然エネルギーの多様な利用が試みられている。

近くて遠い水力利用

 ところが、再生可能エネルギーの先進国がヨーロッパであるために、どうしても、それらの国で実績を上げた方式や機器が採用されやすい傾向がある。太陽光パネルや風力発電などがそのよい例である。
 しかし実際には、ヨーロッパ諸国とは気象や風土も違い、そのまま持ってきても日本の条件にはそぐわない場合も多い。
 にもかかわらず、かつて日本の農業と産業を支えた水力は、ほかの自然エネルギーと比べて案外、見直されていない。
 なぜ、水力が見直されないのだろう。
 大規模にダムをつくって発電するという従来の水力発電の方式が、流域の環境破壊という観点から、ネガティヴにとらえられているのも一因だろう。選挙でダム建設の是非がしばしば争点にされるのも、そのような理由による。しかし、大規模ダムを争点にするあまり、小規模ダム(堰)の可能性を満足に考えてこなかったことは問題だ。

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