機関誌『水の文化』57号
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特集 概論
|深川|川床

水辺を楽しむ大きなテラス

隅田川に面した2階部分は都内最大規模の広さ(86坪)の川床。公道と隅田川テ ラスの2カ所に通じる階段があり、誰でも出入りできる(提供:株式会社リビタ)

隅田川に面した2階部分は都内最大規模の広さ(86坪)の川床。
公道と隅田川テ ラスの2カ所に通じる階段があり、誰でも出入りできる(提供:株式会社リビタ)

築28年のビルをホテルとしてリノベーションした「LYURO東京清澄」。2階にある広いテラス(川床)は、東京都建設局河川部の社会実験「かわてらす」によるもの。誰もが水辺の楽しさを実感できる新スポットだ。

LYURO(リュウロ)東京清澄

地域住民に開かれた都内最大規模の川床

「23区内でありながら、客室からこれほど間近に川が見えてゆったり過ごせる場所はなかなかないですよ」と話すのは、住宅のリノベーションなどを手がける株式会社リビタの岡田尚子さん。

2017年4月、隅田川沿いの清洲橋下流にオープンした「LYURO東京清澄」(LYURO)は、個室やドミトリーを備えたシェア型複合ホテルだ。事務所兼倉庫だったビルをリノベーションした。

隅田川に面した開放的なテラスは、宿泊客やレストラン利用者だけでなく、近隣に住む人が散歩ついでに立ち寄り、水辺で思い思いの時間を過ごすことができる。

清澄白河の新たな「出会い」の拠点

施設利用者以外にも開放されているこのテラスは、東京都の社会実験「かわてらす」(注)がもたらしたもの。目的は、「水辺の魅力のさらなる向上と地域の活性化によって『恒常的な水辺の楽しさ』をつくることです」と東京都建設局河川部課長代理の遠藤英樹さん「ランナーたちを魅了する隅田川リバーサイド」参照)は語る。

川は公のものなので、事業者にも公共性が、つまり地域への貢献が問われるのだ。「ちょうど物件のお話があった時期にかわてらすを知り、応募した」(岡田さん)リビタは、地域の人との合意形成を図るため準備段階で説明会を開く。

「近隣の方との話し合いはスムーズでした。この辺はレストランが少ないので『こういう場所ができるのはうれしい』と前向きにとらえてくださったからです」(岡田さん)。

オープンから早5ヵ月。「リピーターが増え、国内外問わず女性専用のドミトリーが特に人気です」とLYUROで接客にあたる塚本由紀子さんは言う。歌舞伎観劇の帰りに一人でドミトリーに宿泊する都内在住の女性もいるそう。

LYUROでは、近隣のクリエイターを招いたクラフトマーケットやテラスでの朝ヨガ、シャワーを開放したランイベントなど、休日を中心に催しを行なっている。

「テラスでのイベントを通じて清澄白河の魅力を発信して『LYUROに行けばおもしろいことをやっている』そう思ってもらえる場所にしたい」と岡田さんは話す。

LYUROは地域住民をはじめとする人々の新たな憩いの場、出会いの場として機能しはじめている。

(注)社会実験「かわてらす」
東京都建設局が、隅田川および日本橋川を対象に河川敷地を活用して飲食等の営業を行なう事業者を公募するもの。条件を満たした事業者は「かわてらす(テラス)」が開設できる(2016年度で募集は終了)。

株式会社リビタ ホテル事業部ディレクターの岡田尚子さん(左)とLYUROスタッフの塚本由紀子さん(右)



(2017年8月28日取材)

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