機関誌『水の文化』71号
南西諸島 水紀行


島暮らし「三種の神器」

シードル風の飲みものとなったリンゴの皮の抽出液(右が赤リンゴの皮、左が青リンゴの皮によるもの)

シードル風の飲みものとなったリンゴの皮の抽出液(右が赤リンゴの皮、左が青リンゴの皮によるもの)

浦 環

浦 環(うら たまき)

一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会 代表理事。東京大学名誉教授。1977年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専攻博士課程修了。工学博士。東京大学の講師、助教授を経て1997年に教授。2019年から五島列島に住む。著書に『大型タンカーの海難救助論』(成山堂書店)『五島列島沖合に海没処分された潜水艦24艦の全貌』(鳥影社)などがある。

 

五島列島の福江島に一人で住んで、魚と酒を友として大量に消費しています。それだけだと炭水化物が足りないので、パンに大量の自家製ジャムを盛り上げて毎朝食べています。季節ごとに果物を切り刻んで煮込み、大量のアルコールを加えて仕上げていると、家中が甘い香りに包まれて、幸せな気分になります。熟睡できます。梅、イチジク、甘夏、八朔、金柑、と島に生えている木から収穫するので、無農薬ですし、ワックスなしです。アルコールは、焼酎、ポルト、ラム、モルトウイスキーなど。アルコールを十分に残して火を止めます。

毎年、12月に秋田の友人から、硬いリンゴを送ってもらいます。昨年は30kgものリンゴをジャム化しました。大量に出る皮を水を加えて煮込み、絞ります。抽出液は、薄いリンゴジュースです。それを2Lのペットボトルに入れ、発酵させました。最初は同じ色だったのですが、青リンゴからは緑色、赤リンゴからはピンク色の「シードル風」へと変わっていきました。飲んでみると、薄い甘さとリンゴらしい味わい、シュワシュワ感がたまりません。しかし、なかなかの色です。

何人かの友人に、「飲んでみないか」と勧めたところ、たいていは「先生、勘弁してください」と断られました。勇気ある者たちは、「私は緑のが好きです」とか「いけますねえ」とか、「家のなかに漂っている菌がよいのではないでしょうか」とかの感想をもらいました。下痢することもないようでした。万歳。

水は、福江島中央にそびえる七ツ岳の麓の湧水を使っています。二週に一度、30Lを汲みに行きます。水・果物・菌の三種の神器がそろえば豊かな生活ができます。ありがとう。

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