里川文化塾
開催レポート

第13回里川文化塾 野草探しから草木染め&ガサガサ体験

第13回目の里山文化塾は、多摩川(川崎市側)を舞台に活動する「NPO法人とどろき水辺」の協力を得て、親子(または祖父母と孫)を対象とした「野草探しから草木染め&ガサガサ体験」を行ないました。 河原に生えているヨモギとイタドリで染めた「草木染め」のハンカチのきれいな発色。タモ網を手に恐る恐る入った多摩川での「ガサガサ」で出会ったたくさんの生きものたち。川辺で拾ったゴミの数々……。 たった半日の体験でしたが、子どもたちはもちろん、付き添いの大人たちも身近な川や水辺に関心を持つきっかけになったようです。

実施概要

日時
2013年7月21日(日)10:00〜15:00
会場
多摩川河川敷「とどろき水辺の楽校」フィールド
参加者数
24名
鈴木 眞智子

講師

NPO法人とどろき水辺 理事・事務局
鈴木 眞智子 すずき まちこ

「川」という自然のもつ教育力に着目し、多摩川を子どもたちの学びや遊びの場として活用しようと2001年に「かわさき水辺の楽校」を設立。多摩川が大好きな地域の大人たちが行政と協働しながら運営している。二ヶ領せせらぎ館多摩川エコミュージアム推進委員として参画し、2005年から2013年3月までNPO法人二ヶ領せせらぎ館多摩川エコミュージアム事務局長を務めた。2013年4月から現職。

榎本 正邦

講師

環境学習指導家 えのきん事務所代表
榎本 正邦 えのもと まさくに

多摩川流域をフィールドとする環境学習指導のプロ。「えのきん」という愛称で親しまれている。学習のポリシーとして、多摩川の魚や植物を採集するだけでなく、食べて体験するプログラム「キャッチアンドイート」も数多く実施。多摩川に棲む魚や野鳥などの生きものに詳しく、さまざまな環境団体や行政と活動をしている。今回は「ガサガサ」体験の指導を担当。

プログラムリーダー

ライター・編集者
前川 太一郎 まえかわ たいちろう

生協職員、業界紙記者を経て編集制作会社に入社。まちづくり・地域活性化をテーマとする広報誌および書籍の編集業務全般(企画・リサーチ、取材、執筆など)を担当。2010年12月に独立。フリーランスのライター・編集者として、水の文化やまちづくり、団地再生、東北の復興支援などを追う。

陸と水中の両面から川に触れる

 山梨と埼玉の県境にある笠取山山頂の南斜面下の「水干」(みずひ)を源とする多摩川は全長138km、流域面積1,240km²の一級河川です。江戸時代には、アユ漁など漁業も盛んで人々の生活にきわめて密着した川でした。

 ところが、高度成長期に生活排水や産業排水が流れ込み水質が悪化し、生きものも激減。一時期は「死の川」と呼ばれるほどひどい状態になったことはよく知られています。その後の下水道整備などによって水質はかなり改善され、ふたたび生きものが増えはじめています。

 今回はその多摩川を舞台に活動している「NPO法人 とどろき水辺」(以下、とどろき水辺)の皆さんのご指導のもと、河原に生えている野草を用いた「草木染め」と、川の中に入って生きものを探す「ガサガサ」を体験しました。陸と水中の両面から多摩川の生態系そのものを親子で観察・体験することで、いつのまにか縁遠くなってしまった水辺と私たちの暮らしのかかわり、そしてこれからの付き合い方について考えました。

 とどろき水辺は、2002年から市民(主に子ども)を対象とした体験学習「とどろき水辺の楽校」を企画・運営し、多摩川流域の環境と文化の保全に関する普及、啓発、環境教育活動を行なってきました。2013年4月にNPO法人格を取得し、より活動の場を広げ、多摩川全域にわたる環境の保全・維持に寄与することを目指しています。

  • 第13回里川文化塾「野草探しから草木染め&ガサガサ体験」会場

    第13回里川文化塾「野草探しから草木染め&ガサガサ体験」会場

  • 「とどろき水辺の楽校」へのアクセスマップ

    「とどろき水辺の楽校」へのアクセスマップ
    (提供:NPOとどろき水辺)

  • 第13回里川文化塾「野草探しから草木染め&ガサガサ体験」会場
  • 「とどろき水辺の楽校」へのアクセスマップ

土手に生えている「雑草」を観察

 夏休み最初の日曜日、神奈川県川崎市・等々力緑地近くの河川敷に9組のファミリーと大学生など計24人が集合しました。ここはとどろき水辺がふだんから活動している場所。川崎市市民ミュージアムのそばで、とどろき水辺の倉庫から徒歩で数分です。ガサガサの体験に適した魚濫川(ぎょらんがわ)というワンドがあります。

 当日のスケジュールは、まず河川敷で開会式を行ない、野草を観察した後にとどろき水辺の倉庫に移動して草木染めを体験。午後は河川敷に戻ってクリーン作戦(ゴミ拾い)、ガサガサ体験、そして多摩川の生きもの観察会を行ないます。

 とどろき水辺の御前大理事長の指導により参加者全員でラジオ体操。体をほぐした後、多摩川の土手に沿って歩き、講師の鈴木眞智子さんのお話を聞きながら、今回の草木染めに使う「イタドリ」と「ヨモギ」を探して歩きました。

 ふだんは「雑草が生えているな」としか見ていない土手の草むらも、あらためて観察してみると実にたくさんの種類の植物がひしめき合っていることに気づきます。「カタバミ」や「ヒメジオン」は、ちょうど花咲く季節でした。

「わが家では、土手で見つけた小さな花を一輪ざしにして楽しんでいます。多摩川で活動を始めてから、お金を払って買う園芸用の花には興味がなくなってしまったんですよ」と話す鈴木さん。

 土手には「アカツメクサ」もいっぱい花を咲かせていました。これは、非常に古い外来種の1つです。始まりは江戸時代、長崎の出島からぎやまん(ガラスの器)を輸入した際、一緒にクッション材として海をわたってきた草だったそうです。箱の詰めものだったから「ツメクサ」という日本名がついたという“トリビア”的なお話にびっくり。それが今では日本中に繁殖しているのです。もはや、日常的に目にする雑草の80%くらいが外来種(帰化植物)だと鈴木さんは言います。

「それに、ただの雑草という草はないんですよ。すべてに名前がついている。人間だって一緒でしょう。名前を大切にしてあげましょうね」(鈴木さん)

  • 集合場所の多摩川河川敷

    集合場所の多摩川河川敷

  • 草木染めの作業を行なったNPOとどろき水辺の倉庫

    草木染めの作業を行なったNPOとどろき水辺の倉庫

  • 鈴木眞智子さんの案内で河川敷の植物を観察

    鈴木眞智子さんの案内で河川敷の植物を観察

  • ヨモギ、アカツメクサなど自生している野草を手に取って説明

    ヨモギ、アカツメクサなど自生している野草を手に取って説明

  • 集合場所の多摩川河川敷
  • 草木染めの作業を行なったNPOとどろき水辺の倉庫
  • 鈴木眞智子さんの案内で河川敷の植物を観察
  • ヨモギ、アカツメクサなど自生している野草を手に取って説明

2種類の植物で草木染めに挑戦

 午前中の草木染め体験は、熱中症予防のため、冷房の効いたとどろき水辺の倉庫で行うことにしました。

 草木染めは、次のような手順で行います。

[用意するもの]
・洗って糊を落とした布
・みょうばん(食料品店に売っています)
・豆乳(成分無調整がよい)
・草花(ハルジオン、アカツメクサ、クズなど。今回はイタドリとヨモギ)

[染め方]
・草花を3cmくらいに切る
・鍋に水と細かく切った草花を入れて、30分ほど煮出して漉す
・布に豆乳で絵などを書き、乾かす
・鍋に煮汁をもどし、みょうばんと布を入れて20分ほど煮る
・火を止めて、しばらくそのまま置いておく
・染まった布を取り出し、水でよく洗い、干す

 さて、草木染めに使う草ですが、実は今日摘んだばかりのものは使いません。秋に枯れ葉になってから収穫したものを、しっかり干して使うほうが発色よく染まるのです。このため、とどろき水辺のスタッフの皆さんが前もって河川敷で摘んで、十分干したものを使った煮汁を用います。染め用の大鍋の中では、じっくり煮出した「イタドリ」と「ヨモギ」の抽出液がすでに湯気を立てていました。

とどろき水辺の倉庫で草木染めの手順を説明
イタドリ(左)とヨモギ(右)の抽出液

 参加者は白いハンカチを受け取り、成分無調整の豆乳で文字や模様を書きます。下地となった大豆タンパク質が反応して、濃く染まる部分ができるのです。さらに割り箸やペットボトルのキャップを使って、絞り模様をつくります。色をつけたくない部分をぎゅっと輪ゴムで縛ることで、面白いパターン模様が生まれます。

 絵付けが終わったら、いったん豆乳の水分を乾かすため、日に当ててよく干します。ちょうどランチタイムにさしかかったので、参加者は日陰で持参したお弁当を食べながらハンカチが乾くのを待ちました。

 ハンカチが乾いてから、「イタドリ」と「ヨモギ」のどちらで染めるかを選んで、鍋に投入。ミョウバンや石灰を入れて媒染させるため、20分ほど液の中で煮て染めます。いったいどんな色に仕上がるのかとしばし待って、お鍋から取り出したハンカチを水洗いし、ドキドキしながら広げてみると……。

 イタドリで染めたものはピンクがかった色、ヨモギのほうは黄みがかった色に、きれいに染め上がっていました。

 参加者の小2の女の子は1人で2枚のハンカチに絵を描きました。
「白い豆乳で描いた絵がきれいな色に変わって楽しかった」

 また大学で草木染めを学んでいるという大学生のグループも参加していました。
「豆乳を使って行う草木染めは初めてでしたが、きれいに発色するのでびっくりしました。大学に戻って、もう一度やってみようと思います」
「昔は、身近な自然にあるものの力だけで染めていたんですね。みょうばんや石灰を使うなんて、昔の人の知恵に感動しました」

 指導した鈴木さんも満足そうです。
「濃く染まらないこともあるのですが、今日はきれいに染まって大成功でしたね。今回はイタドリとヨモギの2種類だけでしたが、草木染めはほかにもいろいろな身近な植物で楽しめます。例えば秋に桜の落ち葉を集めて乾燥させておくとか、家庭にあるものではタマネギの皮などもよく染まりますよ。ぜひ試してみてください」(鈴木さん)

  • とどろき水辺の倉庫で草木染めの手順を説明

    とどろき水辺の倉庫で草木染めの手順を説明

  • イタドリ(左)とヨモギ(右)の抽出液

    イタドリ(左)とヨモギ(右)の抽出液

  • 豆乳で白いハンカチに絵を描いていく

    豆乳で白いハンカチに絵を描いていく

  • 豆乳で白いハンカチに絵を描いていく

    豆乳で白いハンカチに絵を描いていく

  • ペットボトルのキャップと輪ゴムで絞り模様をつくる

    ペットボトルのキャップと輪ゴムで絞り模様をつくる

  • 絵を描いたハンカチを干す

    絵を描いたハンカチを干す

  • 絞り模様が多いと乾きづらいので団扇で風をあてるとどろき水辺のスタッフ

    絞り模様が多いと乾きづらいので団扇で風をあてるとどろき水辺のスタッフ

  • 干したハンカチを鍋に投入。抽出液で煮る

    干したハンカチを鍋に投入。抽出液で煮る

  • ミョウバンや石灰を入れて媒染させる

    ミョウバンや石灰を入れて媒染させる

  • 鍋の中を覗き込む大学生チーム

    鍋の中を覗き込む大学生チーム

  • 20分ほど煮てから取り出す

    20分ほど煮てから取り出す

  • ざぶざぶとハンカチを水洗い

    ざぶざぶとハンカチを水洗い

  • もう1回干し直す。出来栄えは?

    もう1回干し直す。出来栄えは?

  • きれいに染まった草木染めのハンカチ

    きれいに染まった草木染めのハンカチ

  • とどろき水辺の倉庫で草木染めの手順を説明
  • イタドリ(左)とヨモギ(右)の抽出液
  • 豆乳で白いハンカチに絵を描いていく
  • 豆乳で白いハンカチに絵を描いていく
  • ペットボトルのキャップと輪ゴムで絞り模様をつくる
  • 絵を描いたハンカチを干す
  • 絞り模様が多いと乾きづらいので団扇で風をあてるとどろき水辺のスタッフ
  • 干したハンカチを鍋に投入。抽出液で煮る
  • ミョウバンや石灰を入れて媒染させる
  • 鍋の中を覗き込む大学生チーム
  • 20分ほど煮てから取り出す
  • ざぶざぶとハンカチを水洗い
  • もう1回干し直す。出来栄えは?
  • きれいに染まった草木染めのハンカチ

午後は多摩川で生きもの探し

 午後の「ガサガサ体験」のインストラクターは、多摩川の鳥や魚たちの生態を知り尽くした「えのきん先生」こと榎本正邦さんです。

「ガサガサ」とは、川と岸の境目にある草むらのこと。植物が水に浸かって根を張り、葉や穂を水の上に出して群生している環境は、水生生物にとって鳥や大型の肉食魚から身を守るかっこうの隠れ家なのです。また水に浸かった茎や根は産卵場所としても適しています。

 この草むらに川下から静かに近寄り、「ガサガサ」と足で揺すると、驚いた魚たちが逃げ出します。そこを待ち構えた網ですくい上げるのです。この遊びは多摩川で命名されたといわれ、今では里川の環境学習のプログラムとして広く認知されています。

 今回のガサガサ体験の場所は、多摩川の河口から約12kmの下流域。このため、上流から下ってくる魚と、河口から遡ってくる魚の両方が入り交じって生息しているエリアです。ここで今日、子どもたちはどんな魚を捕まえることができるでしょうか?

  • 安全に遊ぶため、大人も子どももライフジャケットを着用

    安全に遊ぶため、大人も子どももライフジャケットを着用

  • 水辺に行く前に河川敷でガサガサの説明を聞く

    水辺に行く前に河川敷でガサガサの説明を聞く

  • ガサガサ体験の講師を務める「えのきん先生」こと榎本正邦さん

    ガサガサ体験の講師を務める「えのきん先生」こと榎本正邦さん

  • 川に入る前に注意点を伝えるライフセーバーの河村淳(あつし)さん

    川に入る前に注意点を伝えるライフセーバーの河村淳(あつし)さん

  • 安全に遊ぶため、大人も子どももライフジャケットを着用
  • 水辺に行く前に河川敷でガサガサの説明を聞く
  • ガサガサ体験の講師を務める「えのきん先生」こと榎本正邦さん
  • 川に入る前に注意点を伝えるライフセーバーの河村淳(あつし)さん

川で遊ぶ前に「水辺クリーン作戦」

 ガサガサの体験場所となる多摩川の川岸は、人よりも背の高いオギやヨシで被われています。榎本さんを先頭に参加者はこの茂みを抜けていき、多摩川の水面までやってきました。ここで参加者は、土手からはまったく見えなかった川辺の姿を目にします。

 そこにはペットボトルやビニール、お菓子の袋、割れたガラスビンなどのゴミが落ちていたのです。中には不法投棄されたらしい、朽ち果てた自転車まで。

「全部がここで投棄されたものではないのですが、水かさが増した際に上流から流されてきて、ここのような浅瀬に溜まってしまうのです。川はつながっています。だからゴミは必ず持ち帰るようにしましょう」(榎本さん)

 そこでガサガサを始める前に、まずは全員でゴミ拾いをしました。暑さを考慮して短時間の作業でしたが、たくさんのゴミを集めることができました。

ゴミ拾いの風景
ゴミ拾いの風景ゴミ拾いの風景

ゴミ拾いの風景

魚濫川で「ガサガサ」にチャレンジ

 ゴミ拾いを終えた一行は、いよいよ多摩川にじゃぶじゃぶと入っていきます。川の水に触れた感触は冷たくて心地いいだけでなく、泥や藻のぬかるんだ感じが足もとから伝わってきます。確かになにか、生き物がうごめいていそうです。子どもたちには使いやすいよう柄を短くした特製の手網が渡され、親たちには捕った魚を入れるビニール袋が配られました。

 ここで榎本さんから「ガサガサ」をする際の注意点について説明がありました。1つは、生きものを触る前に手を水に浸すというもの。

「魚たちの体温は低いので、人間が乾いた手で触ると魚はやけどをしたような状態になってしまいます。触る前には手を水に浸して手のひらですくうようにして、魚になるべく触れないようにビニール袋に入れてください」と言う榎本さん。

 もう1つは生きものを川に戻すときです。「もしもポイッと川に投げたら、魚にとっては高いビルの上から落下したのと同じことになります。川の中でそっと手から離してあげましょう」と榎本さんが呼びかけます。

 榎本さんが参加者を連れて、多摩川の本流からつながった「魚濫川(ぎょらんがわ)」と呼ばれるワンド(静流域)に入っていきました。魚濫川は、もともと水路として人工的につくられたものでしたが、土砂が堆積し流れがなくなってしまったところを、1999年(平成11)に国土交通省が多摩川本流から水を引き、魚が生息できるビオトープとして復元したのです。

 榎本さんは、手網を持った子どもたちをガサガサのわきに一列に並ばせました。

「なぜ、網がカマボコ型をしているか、わかるかな? 魚が逃げないように、川の底にしっかりと網をくっつけられるようにするためだよ。私がばしゃばしゃと草を揺すって目の前を通り過ぎたら、すぐに網を持ち上げるんだよ」

 子どもたちは網を構え、魚を待ち伏せしているときから少し興奮気味。榎本さんの説明を聞いていたのか、いなかったのか、網を上げるのが早すぎる子あり、遅すぎる子ありで、榎本さんに「早く早くー!」とダメ出しされたりしています。

 網の中を覗き込んで、なにか生き物がいないかと探す目は真剣そのもの。「あっ、なんか動いたー!」「僕は石ころだけ」「ちっちゃいカニがいたー!」とみんな喜んだり、がっかりしたりしながら、榎本さんの後ろを付いていき、ガサガサを楽しみました。

  • えのきん先生に続いてポイントへ

    えのきん先生に続いてポイントへ

  • えのきん先生が足で水辺の草を揺らす

    えのきん先生が足で水辺の草を揺らす

  • 獲物はいないか手網を覗き込む

    獲物はいないか手網を覗き込む

  • 男の子の手網にドジョウが入っていた

    男の子の手網にドジョウが入っていた

  • 「なんか捕れたよー」とニコニコ顔の女の子

    「なんか捕れたよー」とニコニコ顔の女の子

  • 子どもに負けじと大人もガサガサ

    子どもに負けじと大人もガサガサ

  • モクズガニの大物を捕えた大学生

    モクズガニの大物を捕えた大学生

  • 一列になって待ち構えているところに魚を追い込む

    一列になって待ち構えているところに魚を追い込む

  • 「何が捕れたかな?」と獲物が気になる

    「何が捕れたかな?」と獲物が気になる

  • えのきん先生に続いてポイントへ
  • えのきん先生が足で水辺の草を揺らす
  • 獲物はいないか手網を覗き込む
  • 男の子の手網にドジョウが入っていた
  • 「なんか捕れたよー」とニコニコ顔の女の子
  • 子どもに負けじと大人もガサガサ
  • モクズガニの大物を捕えた大学生
  • 一列になって待ち構えているところに魚を追い込む
  • 「何が捕れたかな?」と獲物が気になる

もっとも多かったのは意外な生きもの

 子どもたちが夢中で魚を追っている間、お父さん、お母さんは、ビニール袋に入れた川の水をよく振って曝気(ばっき)水をつくり、子どもたちの後ろで待機しています。曝気水ならば、魚たちは元気に生きられます。子どもたちが捕ったらビニール袋に移していくのですが、その袋は見る見るうちにいっぱいになっていきました。

「身近な多摩川に、こんなにいろいろな生き物がいるとは今まで知りませんでした。とくにオタマジャクシがこんなに多いなんて……」

 参加者全員が驚いたのは、体長10cmほどのオタマジャクシが大量に捕れたことです。これはすべてがウシガエル(食用蛙)のオタマジャクシ。大人になると「ゴーッ、ゴーッ」と牛のような声で鳴く大きなカエルです。

「多摩川でもウシガエルが大繁殖しています。もとから棲んでいる魚などの生きものを食べてしまうと心配されているのです。特定外来生物法によって駆除対象に指定されているので、いったん捕獲したら川に放してはいけないし、家に持って帰って飼ってもいけないんだよ」と榎本さんは説明します。

 今まで、生きものが川でいっぱい見つかるのは楽しいし、ただ良いことだと思っていました。それなのに「飼ってはいけない」「生かしちゃいけない」生きものもいるなんて、初めて知った子どもたちは少なからぬショックを受けていました。

「うわー、またオタマジャクシだー」「袋の中身が、まっくろけになっちゃったよ」。次第に声が沈んできた子どもたちに、榎本さんは「みんなは今日、ゴミ拾いだけじゃなくて、多摩川の生態系を守るためのクリーン作戦にも協力してくれたことになるんだよ。ありがとう」とやさしく声をかけていました。

  • ビニール袋に入れた川の水をよく振って曝気水をつくる

    ビニール袋に入れた川の水をよく振って曝気水をつくる

  • 大漁だったウシガエルのオタマジャクシ

    大漁だったウシガエルのオタマジャクシ

  • ビニール袋に入れた川の水をよく振って曝気水をつくる
  • 大漁だったウシガエルのオタマジャクシ

生態系を守ることの難しさ

 1時間ほどのガサガサ体験を終えて河川敷に上がり、みんなの獲物を水槽に集めて「観察会」を行いました。

 今日のガサガサの大物大賞は「マハゼ」に決定! 目が上にでっぱっていて、いつも上目遣いしているようなユーモラスな顔の魚です。天ぷらの材料とされてきた江戸前を代表する魚の1種で、大きさから年越しの二年物のようです。ほかにも、ウキゴリやスミウキゴリ、マルタ、モクズガニなど、海から魚や生きものがここまで上がってきていることが確認できました。

 逆に、もともと中流に棲んでいるはずの「シマドジョウ」が多く見つかりました。多摩川本流では田んぼが減っているため、泥を好むドジョウが減り、シマドジョウが増えているそうです。コイの稚魚やヨシノボリ、タモロコ、アメリカザリガニなど、たくさんの生きものが捕れました。

「今日は捕れなかったけど、多摩川の本流ではウナギやアユが捕れることもあるんだ。最近は稚アユがたくさん遡上するようになっていて、アユの遡上を助けるために堰を開けている影響でハゼやウキゴリも一緒に増えていますよ」(榎本さん)

 ガサガサで捕った小さな魚を、記念に持ち帰ったりすることはしませんでした。あとで榎本さんが川へ還しました。

 それにしても、ウシガエルのオタマジャクシがなぜこんなに多摩川で増えたのでしょうか。榎本さんに教えてもらいました。

 大正時代、缶詰めにして輸出するためにウシガエルが北米から輸入されました。多摩川周辺でも養殖が行なわれていましたが、戦争などの影響によって、捨てられたり逃げ出したカエルが自然界へ広がっていきました。日本中で生息しているアメリカザリガニも、ウシガエルのエサとして同時期に輸入されたものです。 

 持ち込まれた外来種が、日本の固有種を駆逐してしまう可能性もある……それも経済的に豊かになりたいという人の営みから生まれた歴史の皮肉です。今日目撃したたくさんのオタマジャクシを通じて「生態系を守る」ことの意味とその難しさを、ガサガサ体験で知ることになりました。

  • 本日のガサガサの成果

    本日のガサガサの成果

  • オタマジャクシとアメリカザリガニなどの外来種は別のケースに入れた

    オタマジャクシとアメリカザリガニなどの外来種は別のケースに入れた

  • オタマジャクシとアメリカザリガニなどの外来種は別のケースに入れた

    オタマジャクシとアメリカザリガニなどの外来種は別のケースに入れた

  • 大物大賞のマハゼを間近で観察

    大物大賞のマハゼを間近で観察

  • ドジョウ(上)とシマドジョウ(下)

    ドジョウ(上)とシマドジョウ(下)

  • 川の下流では珍しくなったヨシノボリ

    川の下流では珍しくなったヨシノボリ

  • かわいいと好評だったコイの稚魚

    かわいいと好評だったコイの稚魚

  • モクズガニを子どもたちに見せる榎本さん

    モクズガニを子どもたちに見せる榎本さん

  • 恐る恐るモクズガニに触れる子ども

    恐る恐るモクズガニに触れる子ども

  • 本日のガサガサの成果
  • オタマジャクシとアメリカザリガニなどの外来種は別のケースに入れた
  • オタマジャクシとアメリカザリガニなどの外来種は別のケースに入れた
  • 大物大賞のマハゼを間近で観察
  • ドジョウ(上)とシマドジョウ(下)
  • 川の下流では珍しくなったヨシノボリ
  • かわいいと好評だったコイの稚魚
  • モクズガニを子どもたちに見せる榎本さん
  • 恐る恐るモクズガニに触れる子ども

川に親しむきっかけに

 今日のプログラムのほかにも、「干潟観察会」や「カヌー教室」、水源に近い山梨県小菅村での「源流体験」など多摩川を舞台としたさまざまな環境学習会を企画し、10年以上続けてきた鈴木さん。なぜボランティアでこのような活動を続けているのかをお聞きしました。

「開校当初参加してくれた小学生たちが、大学生になってボランティアで来てくれたりするのがうれしいからです。先日も街なかで昔の参加者とばったり出会ったので『今度はカヌー大会を開催するから』と教えたら、ライフジャケットなど自分で装備を購入してかけつけてくれたのです。中学生、高校生になるといったん川遊びから離れていきますが、大学生くらいになると落ち着いて、子どもたちの世話をするゆとりも出てくるのでしょうね」

 体験に基づく記憶はけっして忘れることなく、大人になってからあらためてその価値がわかったりするものです。こうして活動の裾野も広がっていきます。

 また、「水辺の楽校」開催中の鈴木さんに向かって手を振る親子がいるので、挨拶してみるとかつての参加者だったこともよくあるそうです。「水辺の楽校」の参加がきっかけになって、自発的に川に遊びに行くようになった人は多いようです。

「毎日のように川を見続けていると、雨による増水などで川の様子が変わってきているのがわかります。私たちはこれからもできるだけ長く『水辺の楽校』を続けていきますので、またいつでも遊びに来てください」(鈴木さん)

  • とどろき水辺のスタッフが荻の葉でつくった本物そっくりのバッタ

    とどろき水辺のスタッフが荻の葉でつくった本物そっくりのバッタ。参加者につくりかたを伝授した

  • とどろき水辺のスタッフが荻の葉でつくった本物そっくりのバッタ

    草笛のつくり方を教えるとどろき水辺の渡邉誠さん

  • すぐに吹けるようになった子ども

    すぐに吹けるようになった子ども

  • とどろき水辺のスタッフが荻の葉でつくった本物そっくりのバッタ
  • とどろき水辺のスタッフが荻の葉でつくった本物そっくりのバッタ
  • すぐに吹けるようになった子ども

参加者の感想

「草木染めはとてもきれいに染まりました。えのきん先生のお話はとても楽しく、勉強になりました。ガサガサは子どもたちがとても楽しそうでした」(40代女性)

「環境教育を専門に学んでいる大学生ですが、子どもたちにどんなふうに話をするのか興味がありました。鈴木さんの植物や外来種の説明は非常にわかりやすく、興味深かったです。草木染めについても、もっと知りたいと思いました」(20代女性)

「草木染めには適した季節があることや、魚籃川に生息する魚を、体験を通して楽しく学ぶことができました。期待していた以上に充実したプログラムでした」(20代女性)

「叔父さんに連れてこられて最初はわけがわからなかったけど、面白い先生や大人がいっぱいいて楽しかった。ガサガサ体験と、草笛をつくってもらったことが印象に残りました」(小学校5年生男子)

「家族でとても楽しい一日を過ごせました。川に入ったとき、足下がぬるぬるしているから息子が『出たい、帰りたい』って言うかなと心配していたんですが、父の手をしっかり握ってがんばって歩いてくれました」(40代女性)

「楽しかったです。子どもがうれしそうな顔をしていました。ガサガサ体験で多摩川にどんな生きものが暮らしているのかが体感できたこともよかったです」(40代男性)

多摩川での1日を通じて

 草木染めとガサガサ体験という二本立ての企画となった第13回里山文化塾。草木染めに惹かれて参加した人が川の生態系を知って驚かされたり、ガサガサ体験を目当てにきた子が豆乳のお絵描きに夢中になっていたりと、川に親しむきっかけは何でもいい、入り口はたくさんあったほうがいいのだと考えさせられました。

 川は決して危険な存在ではありません。正しい知識と体験を身につければ、とても面白い場所です。この経験が、川をきちんと理解して楽しむための第一歩になればうれしいです。

本日の参加者で記念撮影

本日の参加者で記念撮影



(文責:ミツカン水の文化センター)



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    里川文化塾 開催レポート,鈴木 眞智子,榎本 正邦,川崎市,多摩川,NPO,活動,体験

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