排水を自宅で処理して地球に還す〜既成概念を覆す「家庭排水浄化装置」〜

冨安 貢弘

冨安 貢弘 とみやす みつひろ
エコロジーコロンブス福岡 代表

1965年生まれ。福岡県出身。第一工業大学卒業。父親の研究を受け継ぎ、電力や薬品、汲み取りが一切不要で、土の中に生息する土壌微生物などを利用した家庭排水浄化装置「エコロンシステムK-36」を開発(特許工法)。口コミで広まり、国内ではおよそ250基を設置した。海外進出も視野に入れている。

排水は下水道に流すか合併処理浄化槽で処理するものと思い込んでいませんか? 冨安貢弘さんが普及に努める家庭排水浄化装置「エコロンシステムK-36」は、処理水はすべて敷地内に還元され、窒素やリン成分などの栄養分は土壌に還るシステムです。人の生活から発生する排水を自然界に循環するこの装置の仕組みと可能性について、冨安さんにお聞きしました。

地球のルールに従った排水処理を

 今の下水道のシステムは根本的に間違っている。私はそう考えています。

 土の上で生きている生物は自分の排泄物を土に還します。水中の生物は水の中に、水辺の生きものは土か水中に排泄します。それが地球上の生きものによる営みの基本ルールなのです。

 ならば人間も土に還さなければいけないはず。しかし、現実は下水道に流すか合併処理浄化槽(以下、浄化槽)で処理することになっています。つまり、土を飛び越え順番を無視して川から海に流している。その中には窒素やリン成分といった人間が食べものから摂取して、本来は土に還さなきゃいけないものまで含まれているのです。

 土に戻せば、窒素もリン成分も土がきちんと処理して再利用してくれます。
地球という生態系で循環すべき資源を、廃棄物として扱っているからおかしなことになるのです。

 資源を捨てずに再利用して循環しよう――。それが家庭排水浄化装置「エコロンシステムK-36」を開発した目的です。

 下水道を通して遠くに排水を流してしまう。私たちはそれを当たり前のことだと思っていますが、どういう水をどこに流すかは一人ひとりが考えなければいけないはずです。

 日本人はかつて、循環型の社会を自分たちの手で築いていました。徳川幕府時代、江戸のまちは100万人都市でしたが、きちんと循環できるシステムが成立していました。農民は江戸まで汲み取りにきたので、排泄物は肥料として使われる。リサイクルのシステムができ上がっていたのです。

 ところが、近代化を目指してヨーロッパを視察した明治政府の人々が、西洋の下水道を見て「これが文化だ」と勘違いした。当時のヨーロッパは、汚水をただ川下に持っていって捨てていただけなのに、です。

 排泄物を土に還すという知恵は、世界中で数千年引き継がれてきたものです。日本でも4〜50年前まで普通に行なわれていました。では、なぜ数千年も続けてきたことを止めてしまったのか?

 問題は臭いがして衛生的ではないということでしょう。で、あるならば、逆に臭いがしなくて衛生的であれば、これほど理にかなった方法はないということです。

 東日本大震災で痛感しましたが、やはり地球がいちばん強いのです。地球という「アニキ」のルールに従わないかぎり、私たちは生きてはいけないのです。

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微生物が〈勝手に〉分解してくれる

 私は1965年(昭和40)生まれなんですが、ずいぶん田舎のほうに住んでいたにもかかわらず、家のトイレは既に水洗トイレでした。それは父が開発した浄化装置を家庭用に応用していたからなのです。

 父の研究を受け継いで開発した「エコロンシステムK-36」は、電力や薬品、汲み取りが一切不要で、土の中に生息する土壌微生物等を利用した家庭排水浄化装置です。

 父は全国の高速道路のパーキングエリアなどで使われる大型の汚水処理装置を事業として手がけていました。1日に5000人分を処理するような大きな装置でしたから、一次処理、二次処理までは電力を利用するものでしたが、三次処理で「エコロンシステムK-36」の原型となるシステムを使っていたのです。私は父が40年以上前から研究してつくった三次処理の装置を改良して、一般家庭を中心に普及させています。

 汚水浄化の仕組みは、し尿や雑排水を流入管から消化槽内に流し、汚物やトイレットペーパーなどを沈殿。嫌気性の微生物(注1)によって消化・分解します。

 消化槽上部の上澄みは「エコロン」という微生物繁殖槽に浸漬させ、そこで嫌気性微生物と好気性微生物(酸素を利用して有機物を分解する微生物)によって浄化します。

「エコロン」は微生物が好む濾速(ろそく)を実現するための部材で、上澄みがゆっくり時間をかけて通る構造になっています。タマゴのようなかたちをした集合体です。上澄みはここを通って周囲の土壌(特殊培養土)に滲み出ていき、好気性の微生物がきれいにしてくれます。浄化された水は、もともとあった土壌や大気に還元され、自然界に還っていきます。

 つまり利用しているのは好気性の微生物と嫌気性の微生物だけです。地上に近いほうには好気性の微生物がいて、少し深い所には好気性と嫌気性の微生物両方がいる。地中深くには嫌気性の微生物がいます。汚水を生物的な速度でゆっくり分解して大地に戻していく仕組みです。

 昔、畑の横にあった肥溜めは、熟成させるための装置でした。発酵熱で回虫の卵などを殺して肥料として使うものです。肥溜めに蓋をして何もしないで放置すると、最後は水と炭酸ガスだけになります。

 中の有機物が分解して無くなっていく、この現象が消化作用です。一般に普及している浄化槽でも消化作用を利用していますが、臭気の問題を解決するシステムになっていないので、利用しきれていません。

「エコロンシステムK-36」では、土壌による脱臭が日常的に行なわれているので、人間が装置の上に立っても臭気を感じることはありません。これによって、余剰汚泥が発生しない完全消化を実現することができたんです。

注1 嫌気性の微生物
増殖に酸素を必要としない微生物。増殖に酸素を利用できる通性嫌気性生物と、大気レベルの濃度の酸素で死滅してしまう偏性嫌気性生物に分けられる。各々の性質によって、土壌中の浅い所、深い所に棲み分けているため、深い所には嫌気性の微生物が多い。

「エコロンシステムK-36」全体イメージ図
「エコロンシステムK-36」全体イメージ図

「エコロンシステムK-36」断面図
「エコロンシステムK-36」断面図

水の浄化工程(断面図参照)
し尿・雑排水を導入管より汚水槽(消化槽)内に流入させ、汚物(汚泥)・トイレットペーパーなどを沈殿させ、嫌気性の微生物によって「消化分解」させる。
一方、汚水槽(消化槽)内上部の上澄みを微生物繁殖槽(専用接触ろ材)に浸漬させて浄化し、さらにその周りを包む特殊培養土(ろ材)に毛細管サイホン現象によって浸潤させ、土壌微生物によって浄化させる。浄化された水は、土壌や大気に還元され自然界に還っていく。

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電力を使わないことが「発電」になる

「エコロンシステムK-36」は、住んでいる人数、あるいは利用する人数によって大きさ(長さ)を変えます。通常は1人1日200リットルと計算して、装置本体の大きさは幅1.3〜1.4mで1人あたり2m。4人家族なら8mとなります。ですので、設置するには幅1.3〜1.4m、長さ10mほどの敷地が必要です。

 庭さえあれば設置はさほど難しくありません。住宅街に住む人が、下水道につながずあえて「エコロンシステムK-36」を設置されたケースもあります。

 流入する量と消化する量のバランスがとれていれば、「エコロンシステムK-36」はメンテナンスがほとんど必要ないんです。ビジネスのことだけを考えたら、年に一度、微生物を追加すれば儲かるのですが(笑)、土着の微生物を利用するので必要ありません。

「エコロンシステムK-36」は装置全体が周りの自然環境と繋がっています。閉鎖されていないんです。上部は「特殊培養土」に接していて、さらにその周囲はふつうの土。土に繋がっているから微生物の餌はいくらでもあります。微生物は普段、勝手に生きていて、餌である汚水が入ってくると集まってきて仕事をするわけです。つまり、使っても使わなくても、常に同じ能力を無電源で保っている。

 一方、浄化槽はバクテリアを追加するなど、定期的なメンテナンスが必要です。液中に酸素を供給するために、24時間・365日、電気を使って曝気(ばっき/注2)もしなければなりません。

 浄化槽内部は閉鎖的空間です。周りの自然環境と繋がりがなく多様性がありません。たとえば、使用頻度の低い別荘等の浄化槽は、餌が入ってこない状態が続くとバクテリアが共食いしていなくなってしまいます。バクテリアがいなくなった浄化槽は、言ってみれば汚水が通過する高価な「ただの箱」と言っても過言ではないのです。

 また、床面積によって設置する浄化槽の大きさが決まっていたので、老夫婦2人で暮らしているのに8人用の浄化槽が設置されている、なんていうケースもあります。

 浄化槽を使う一般家庭では、年間使用電力の15%程度を浄化槽のために使っています。しかし「エコロンシステムK-36」は、電気をいっさい使いません。ですから、浄化槽を使っている家がこの装置に切り替えれば、電力を15%削減したことになる。7軒集まれば、家1軒分の電力が浮く計算になります。つまり、この装置を使うことで15%の電気を「生み出す」ことになる。使わないことが最大の発電。そう言うこともできるでしょう。

注2 曝気
空気を吹き込んだり攪拌(かくはん)することで酸素を供給し、それによって微生物の働きを促す。

「エコロンシステムK-36」の施工写真。
「エコロンシステムK-36」の施工写真。まず、装置を設置する穴を掘って、底を水準にする。

大型のU字構
大型のU字構が、汚水槽(消化槽)になる。

U字構をロストル(スリットの入った蓋)で覆う。
地表面に出るように清掃口を立ち上げ、U字構をロストル(スリットの入った蓋)で覆う。

専用接触ろ材〈エコロン〉を汚水槽(消化槽)の上に積み上げる。
専用接触ろ材〈エコロン〉を汚水槽(消化槽)の上に積み上げる。この部分が、微生物繁殖槽になる。

特殊培養土で装置全体を覆う。
特殊培養土で装置全体を覆う。消化・分解はすべて土中の微生物によって行なわれる。

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突破口はログハウスの雑誌

 下水に関する最大の問題点は、私たちに選択肢がないことです。例えば、新築住宅の場合、下水道につなげない宅地は浄化槽の設置が義務付けられています。規制緩和して「きちんと汚水を処理できる装置をつけること」とすればいいのですが、そうはならない。浄化槽も、「土地が狭い所でも設置できる」という利点はあります。つまり、選択できる状況をつくることが、人と水の関係を考える上で必要なのです。

 そう考えた私は、20代半ばから5年間ほど行政を中心に取り組みましたが、うまくいきませんでした。若かったので「行政の人は優れたシステムを探しているのだから、良い提案ならば採用してくれるはずだ」と思っていました。しかし壁は厚かった。もう事業をやめようとさえ考えました。

 あるとき「一般の人はどう考えているんだろう」と思い、意見が聞きたくてログハウスの雑誌に手紙を書いたんです。その思いが通じて、4ページの記事を書かせていただいた。31歳のときです。すると、その記事を見た人から直接私のところに注文が入るようになりました。

 その後も数回紹介してもらったことでネットワークができて、口コミで広がっていきました。特に北海道での施工が進みました。北海道は土地が広くて住宅が点在しているので導入するメリットが大きいのです。

 施工実績は全国250カ所ですが、北海道だけで50基設置しています。脚本家・劇作家・演出家の倉本聰さんが塾長を務める「富良野自然塾」(注3)のフィールドにも設置しています。

注3 富良野自然塾
NPO法人 C・C・C富良野自然塾のこと。閉鎖された富良野プリンスホテルゴルフコースに植樹をして森に戻す自然返還事業と、そのフィールドを使った教育プログラムを行なっている。

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農業への応用

 下の写真を見ていただければわかると思いますが、「エコロンシステムK-36」の上部は、植物の育ちがとてもよいのです。なぜ緑が青々としているのか?

 肥料成分が地表に浮き上がってきて、窒素やリン成分等がバランスよく含まれる土になっているんです。当然、化学肥料も農薬も与えてないんですけど、元気でおいしい作物が育ちます。まぁ、人間が一番栄養価の高いものを食べていますから、肥料としての栄養価も高いということだと思います。有機肥料による完全な有機栽培です。しかも、肥料の出所がはっきりしているので「安全・安心」しかも「おいしい!」食糧が手に入るわけです。

「エコロンシステムK-36」の清掃口から液肥を取り出して、肥料として直接用いることも可能です。

 ビニールハウスを装置の上に建てることも有効でしょう。装置の上は、自宅から出るお湯(廃熱)や消化作用による発酵熱により、土壌の表面温度が高いので、栽培に必要な燃料費が減らせる、というメリットもあります。

 昨年から、ある実験をスタートしています。アスパラガスの栽培を試しているのです。アスパラガスは根が横に張っていく作物なので、装置に悪影響をおよぼす危険性もありません。また、成長させるのに、ものすごく栄養が必要ということなのでピッタリの作物ではないかと期待しています。

 家庭で「エコロンシステムK-36」を設置して、自分たちの排泄物で野菜をつくるという「最小の単位」での資源循環が成立できます。完全な自給自足が理想ですが、現実的には米や肉・魚は買わなければいけないので、例えば自分の家で使わなかった液肥を地域で集めて肥料として農家に売ればいい。江戸時代と同じような循環型でお金や物が廻る仕組みをつくるのです。

 これは都市部に限った話ではなく、居住者の少ない地方でも成り立つのです。人が大勢訪れる観光地ならば、観光客の排泄物を「エコロンシステムK-36」で処理して液肥として地域で使うこともできます。CO2を出さずにおいしい野菜ができるという地域循環型の仕組み。人類を飢餓から救おうという壮大な試みです。

北海道の施工例。「エコロンシステムK-36」の上の緑が青々としているのがわかる。
北海道の施工例。「エコロンシステムK-36」の上の緑が青々としているのがわかる。

装置の上は暖かいので、自生する蕗が他に先駆けていち早く繁茂する。
装置の上は暖かいので、自生する蕗が他に先駆けていち早く繁茂する。

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具体化しつつある海外進出

 国内の行政はなかなか動いてくれないので、最近は海外に目を向けています。

 アフリカや東南アジアの国々は、化学肥料とF1品種(注4)を毎年大量に売りつけられています。1〜2年目はまあまあの収穫がありますが、土地がやせていく3年目以降は確実に減産します。だからますます化学肥料を買わされる羽目になる。ひどい国では収入の7 割を化学肥料に費やすと聞きます。しかしそれでも地力が落ちると土地を捨てて、新たな土地を開墾する。それが森林破壊につながっています。悪循環きわまりない。

 そういう国の人たちに「エコロンシステムK-36」を活かした栽培方法を覚えてもらえば、きっと変わります。

 昨年末、福岡市にある国際連合人間居住計画(ハビタット/注5)の会議で話をしたら、反応がすごくよかったのです。電力が乏しい国、衛生面で問題を抱えている国(ラオス・ミャンマー・バングラデシュ他)はとりわけ熱心でした。日本人のように「下水道につなぐ」という先入観がない彼らは「Very interesting!」と言ってくれました。国連パイロット事業として実施できる可能性もあります。

 彼らのような、国を代表する立場の人たちに教えたほうが、普及は早いかもしれませんね。「日本発のこんな技術がある」と海外で知られることで、逆に国内での知名度がアップすることも考えられます。

 私は、海外ではNGOとして活動するつもりです。国内で「エコロンシステムK-36」を設置してくれた人たちは、地球環境や循環型社会に対する意識が高いですし、語学が堪能な人もいます。NGOをつくるときには、そのネットワークも活かしたいと思っています。

 ビジネスとして考えたら、NGOよりも海外の企業と代理店契約を結んだほうが儲かるでしょう。しかしそれでは「リミット」に間に合わないと思っているんです。私は、2030年(平成42)くらいに「引き返せないスイッチ」が入ってしまうと考えています。いったんスイッチが入ってしまえば、どんなに素晴らしい思想や目標があっても何の意味もありません。

 人類の破滅は刻々と近づいています。それを回避するために必要なのは、水・食料・エネルギー等の問題とCO2削減です。地球のルールにしたがって持続可能な循環型社会をつくるための1つの装置として「エコロンシステムK-36」を広めたい。

 日本も崩壊へと向かいつつあるように見えますね。経済力は衰え、食料自給率も低い。お金の力で買っていたものが、そのうち買えなくなるでしょう。

 海外では、自国だけで生きていけるように着々と努力しています。日本だけがその努力を怠っているように思う。食料を輸入できなくても生きていく。そのためには、鎖国をしていた江戸時代のシステムが参考になります。

 たんに江戸時代を目指すのではなく、これまで引き継いできた技術に改良を加えればいい。「エコロンシステムK-36」も父の研究を引き継いだものです。文明とはそうして進化していくものでしょう。

注4 F1品種
1世代しかその性質が維持されない種のこと。収穫物から種が取れないために、農家は種苗会社から毎年買い続けなければならない。
注5 国際連合人間居住計画(ハビタット)福岡本部(アジア太平洋担当)
都市化や居住に関するさまざまな問題に取り組む国連機関。人々の居住問題が深刻化していることから、アジア・太平洋地域の開発途上国の居住問題に取り組んでいる。

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被災地で認められた「エコロンシステムK-36」

 海外に目を向けてはいますが、日本に機会がないわけではありません。東日本大震災を機に、自分たちの生活スタイルを「これでいいのか?」と疑う人たちが増えています。津波で大きな被害を受けた岩手県山田町に「エコロンシステムK-36」を設置したときもそう感じました。

 山田町が復興支援事業として整備した仮設公衆浴場「御蔵(おぐら)の湯」(注6)の排水処理用として導入したのですが、きっかけはNPOとして山田町で活動している知人から受けた相談でした。

 知人は「山田町で仮設の公衆浴場をつくる話が出ているが、大きな浄化槽をつくると700万円もかかる。被災後は水も電気もなくて困っていたのに、また電気をどんどん使って浄化槽を動かしていいものか?」と。そして「再び災害に遭った時に役に立つ装置を」と、被災地である山田町の人々が本当に必要なものを考えたときに「エコロンシステムK-36」を導入してくれたのです。大きな意義があります。

 私は「水と電気がなくなったら世の中は排泄物だらけになる」と公言していましたが、まさか東日本大震災のような事態になるとは思っていませんでした。被災直後の話をお聞きすると、トイレが使えなくて大変だったそうです。その点でも「エコロンシステムK-36」には可能性がある。少し大きめの装置を公園(避難場所)等の常設トイレ浄化処理装置として整備しておき、普段は上部を花壇などにしておく。災害などの非常時には装置上部の蓋(清掃口他)をすべて開け、直接排泄できるように仮設トイレを設営する。復旧後はそのままにしておくだけ。あとは土中の微生物たちが、すべて分解してくれるというわけです。これで電気や水がなくても、衛生的なトイレが確保できる。後処理も考えなくてすみます。

 東日本大震災で多くの人たちが「電気のない生活とはこういうものなのか」と考えたと思います。しかし現代のような便利な暮らしを経験したら、不便な生活に戻ることはできません。人間は一度味わった快適性や利便性を簡単に捨て去ることはできないからです。だからこそ、「エコロンシステムK-36」は無電源でも快適性や利便性を、少しも損なうことなく暮らしていける装置にする必要があったんです。親子2代で、随分時間がかかりましたけど…。

「エコロンシステムK-36」には、何千年も積み重ねてきた先人の知恵が詰まっています、西洋の近代化を追いかけるのではなく、江戸時代の考え方のまま発展していたら、もっとすごい装置ができていたかもしれません。私自身、これが完成型とは思っていなくて、装置自体をもっと小さくしたいですし、発生したガスをエネルギーとして取り出したいとも考えています。改良したい点はまだまだたくさんあります。人間を含めた生きものが、地球と共生するための基本ルールを守るために、これからも「エコロンシステムK-36」の普及に努めていきます。

注6 御蔵(おぐら)の湯
山田町が東日本大震災の復興支援事業の一環で同町八幡町に整備した仮設公衆浴場。2011年12月27日にオープン。停電時もガスを使って発電できるのが特徴。

山田町「御蔵の湯」の施工写真。土中の深さは1500mm。
山田町「御蔵の湯」の施工写真。12mの「エコロンシステムK-36」を設置した。
山田町「御蔵の湯」の施工写真。12mの「エコロンシステムK-36」を設置した。土中の深さは1500mm。NPOや地元のボランティアの人々も、工事を手伝ったという。

(2012年2月18日)

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