里川文化塾
開催レポート

第3回里川文化塾 小水力発電 はじめの一歩

 東日本大震災の影響により、この夏は、エネルギー不足が深刻な問題となり、例年以上に再生エネルギーへの関心が高まりました。  そこで、今回の里川文化塾では、流れる水が生み出すエネルギーを利用した小水力発電に注目しました。  家庭の屋根に設置すればすぐに発電できる太陽光発電や、風力発電に注目が集まるなか、導入の難しさもあって、過小評価されてきた小水力発電。  実際に小水力発電を行なっている川井浄水場を見学し、小水力発電適地の目利きである古谷桂信さんと一緒に、その潜在能力と可能性を考えました。

実施概要

日時
2011年11月17日(木)
第一部 川井浄水場見学会 14:00〜16:30
第二部 小水力発電セミナー 18:30〜20:30
会場
第一部 横浜市水道局 川井浄水場
第二部 横浜市技能文化会館 ホール
参加者数
第一部 16名  第二部 23名
古谷 桂信さん

ワークショップリーダー

環境フォトジャーナリスト
全国小水力利用推進協議会理事
古谷 桂信 ふるや けいしん

1965 年、高知県生まれ。関西学院大学社会学部で鳥越皓之教授のゼミに入る。海外ではグアテマラのマヤ民族、国内では水環境などをテーマに活動。高知小水力利用推進協議会事務局長、全国小水力利用推進協議会理事。
主な著書に『生活環境主義でいこう!』(共著/岩波書店 2008)、『どうしてもダムなんですか?』(岩波書店 2009)、『地域の力で自然エネルギー!』(岩波書店 2010)ほか。

川井浄水場見学会

 小水力発電というと、一般的には中山間地域の川の流れや用水路がイメージされますが、実は都市部でも行なわれているのです。今回は、横浜市の川井浄水場にある発電施設を見学させていただきました。

川井浄水場の小水力発電

 まずは横浜市水道局浄水部 小川昭彦さんから概要説明がありました。

 「川井浄水場は、横浜市旭区(東名自動車道の横浜町田ICの近く)にあり、毎日約10万m³の水を供給しています。水源は道志川系と相模湖系の2系統ありますが、小水力発電に利用しているのは相模湖系の水です。
 横浜市水道局では、環境への取り組みとして、2000年(平成12)からろ過池や沈殿池に太陽光発電(パネル)を設置しました。これに続く取り組みとして2006年(平成18)に導入されたのが、都筑区の港北配水池を利用した小水力発電施設です。しかしこの事業は横浜市と民間企業が共同で行なっており、水道局の役割は水のエネルギーの供給に留まっています。
 横浜市の単独事業として、川井浄水場での小水力発電が開始されたのは、2010年(平成22)です。

 川井浄水場の小水力発電には、沼本ダムから取水した水を貯めている相模原沈殿池(広さ:12万m²、貯蔵量:80万m³)から川井浄水場までの約10km、標高差20mの圧力差を利用しています。具体的には、相模原沈殿池から浄水場の接合井(せつごうせい)に流れ込む途中の導水管に、2機の発電機が取り付けられています。最大使用水量は4.8m³/s (2.4m³/s×2機)で、この際の最大発電容量は270kW(135kW×2機)です。設計上の理想発電量は115万kWh/年でしたから、期待通りの発電ができているといえるでしょう。

 この発電にかかわる事業費は約3億3000万円でした。調査の段階から施工に至るまで、NEF(財団法人新エネルギー財団)、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、NEPC(一般社団法人新エネルギー導入促進協議会)などの補助制度を利用させていただきました。年間115万kWhの電力量は、浄水場で使用する電力量の約30%をまかなっており、これは一般家庭約335軒分の電力量に換算されます。また年間約480tのCO2排出量削減にも貢献できると考えています。」

  • 横浜市水道局浄水部 小川昭彦さん

    横浜市水道局浄水部 小川昭彦さん

  • 相模湖系統の導水経路

    (資料提供:横浜市水道局)

  • 発電設備

    発電設備

  • 発電設備

    発電設備

  • 環境に関する補助制度

    (資料提供:横浜市水道局)

  • 横浜市水道局浄水部 小川昭彦さん
  • 相模湖系統の導水経路
  • 発電設備
  • 発電設備
  • 環境に関する補助制度


施設見学

 水道局からの概要説明に続いて、いよいよ発電施設見学会です。通常の見学では発電施設の中には入れませんが、今回は特別に中も見せていただきました。
 施設の中は発電機を回す音が大きく、水のエネルギーを感じることができました。参加者の多くは、初めて見る発電機の様子に興味津々。小水力発電だけを考えれば、もっと流量や水圧を上げることも可能ですが、あくまでもメインの水道事業に適した流量・水圧になっていることも教えていただきました。

川井浄水場の小水力発電施設 竪川水門

(左)川井浄水場の小水力発電施設。相模湖から送られる水が最大発電容量135kWの発電機を回している。
(右)発電状況を知らせるパネル。天候にかかわらず、常に100kW近くの電力を供給し続けられることが、小水力発電の大きな魅力。

浄水場の施設 発電状況を知らせるパネル

(左)普段は見られない浄水場の施設に興味津々。
(右)浄水場内だけで飲めるできたての水。一般家庭に送られる水は、消毒効果を長持ちさせるため、再度の消毒が行なわれる。



質疑応答

 最後に参加者からの質問タイムを設けました。横浜市水道局の小川さんに直接お話を聞ける貴重な機会を活かそうと、小水力発電にとどまらず、さまざまな質問が出されました。

Q.川井浄水場の水道水は、比較的良い水なのですか?
A.道志川の水は年間平均濁度が3.7度(2012年度〈平成22〉)と大変きれいな水源で、特に冬場は1.0度を下回る日が何日も続きます。このような原水を水道水にしますので、横浜市の中でもトップクラスの水が供給できています。

Q.水源となる道志川上流(山梨県)とは、どのような協力関係にあるのですか?
横浜市は、1916年(大正5)に時代に道志川の水源地域の山林2804町1段15歩を13万1414円96銭8厘で購入しました。現在その水源林は、横浜市が直接管理をしていますが、残念ながら、その周りの民有林は手つかずになってしまっています。そこで横浜市では水源林ボランィアの団体を立ち上げ、年間約15回、バスを出して道志村へ行き、間伐や下草刈りなどを行なっています。
(詳細は 第16回水の文化楽習実践取材「県境を越えてともに育み 流域の資源を守る」をご覧ください。)

Q.横浜市の水の需要と供給バランスは、どのようになっていますか?
A.現在、人口約370万人に対して、約120万m³/日を供給しています。市の人口は2018年(平成30)ぐらいまで増え続けることが予想されていますが、一方で節水機器がどんどん普及しているため、需要はほぼ横ばい、もしくは微減になると思われます。さらに東日本大震災の影響で市民の節水意識が高まっていますので、需要がさらに低下することも考えられます。また過去には横浜市でも渇水による対応に苦慮したことがありましたが、2001年(平成13)に宮ヶ瀬ダムができて以降は渇水による影響を受けることはなくなりました。

Q.横浜市の水ビジネス(国際協力事業)の現状と展望は?
A.横浜市では独立行政法人国際協力機構(通称:JICA)との協力体制のもと、比較的早くから、海外技術者の受け入れや、日本人技術者の派遣を行なってきました。現在では、技術者の交流に並行して、顧客サービス・人材育成・経理などのニーズも高まっています。以前の技術協力は、「設備はつくるが、維持管理は自国で」という方針で進められていましたが、実際には維持管理できていない例が多かったのです。そこで、横浜市では100%出資の民間会社を設立して、総合的なサポートを展開する水ビジネスを行なっています。

Q.水道管の取替えの考え方は?
A.現在、横浜市で使われている水道管で一番多いものは、昭和40〜50年に設置されたもので、これは全体の半分程度を占めています。これらを含め耐震性の高い水道管に取り替えていますが、横浜市の配水管をすべて取り替えようとすると、80年ぐらいかかる計算です。また水道管から各家庭につながる管では、いまだに鉛の管が残っているところがあります。本来、この交換は所有者である各家庭の責任なのですが、水道局では助成金を出して交換を促しています。

Q.海水を河川の水と同じように浄化できるか?
A.福岡には毎日5万m³の海水を淡水化できる施設があります。また他にも小さな淡水化施設はたくさんあります。ただし淡水化には電気を使いますので、浄水のコストは通常のものよりも高くなります。

水道局からのお願い

 最後のまとめとして、小川さんより参加者にメッセージをいただきました。

 「東日本大震災のとき、私は福島県いわき市に応援(給水隊)に行きました。その際、現地で聞いた話では他都市等からの給水隊が到着するまでの約1週間は、1日1人あたりたった2リットルの水の配給に、約3時間も並んだということです。ところで皆さん、ご自宅に非常用の水を用意していらっしゃいますか。一般的に人間が生きるには、1日約3リットルの水が必要だといわれています。これを最低3日分、家族の人数分を備えておいていただきたいです。テレビなどで給水車から水をもらう映像が流れていますが、非常時には、給水車の水はすぐには一般の方々に届きにくい状況になるからです。実際、横浜市には非常用の給水車は19台しかありませんし、それらは医療拠点等を最優先に回ることになっています。市内には、災害用地下給水タンクや配水池等発災直後から水を確保することのできる施設が整っていますが、被災状況によっては、みなさまがご自宅近くで水を確保するのに、災害発生から概ね4日目以降になる地域もあります。ですから、最低3日分の水の準備を各自でお願いします。そして、この話を皆さんが世間に広めていただけることを期待しております。」

 小水力発電のみならず、水道行政についてとても興味深い話が聞ける機会となりました。

小水力発電セミナー

 第二部では、会場を横浜市技能文化会館に移し、フォトジャーナリストで全国小水力利用推進協議会理事の古谷桂信さんをワークショップリーダーに迎え、小水力発電の基礎知識から今後の展望などを学ぶ「小水力発電セミナー」を開催しました。

里川文化塾会場風景。平日の夜にもかかわらず、多くの参加者が熱心に耳を傾けていた。興味を持つことが、はじめの一歩。
里川文化塾会場風景

里川文化塾会場風景。平日の夜にもかかわらず、多くの参加者が熱心に耳を傾けていた。興味を持つことが、はじめの一歩。



小水力発電とは

 日本では新エネルギーを1000kW以下と定めていますので、これに倣って小水力発電の規模も1000kW以下と定義されています。海外では「3万kW以下」や「1万kW」という定義もあるようですが、RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)による補助金を得るためには、この定義を守る必要がありますので、1000kWとしています。実際に、市民レベルが扱うような電力量は1000kW以下となりますので、今日はこの基準でお話をしたいと思います。

 また、一言で小水力発電と言っても、その目的から、「数軒のコミュニティの電源をまかなう目的のもの=農業用水等を使用」、「数百軒の地域の電源をまかなう目的のもの=一般河川等を使用」、「自治体が事業として実施するもの=上下水道等を使用」というように分類できます。
 小水力発電の特徴は、クリーンなエネルギーであることがまず挙げられます。つまり、疲弊した限界集落が適地であるということが、面白いと思います。さらに水の使用は権利関係が複雑になるために、さまざまな合意形成が必要となります。この合意形成を煩わしいと考える人にはマイナスの要素になりますが、ここに至るまでの過程が、地域の宝になるという考え方もできるでしょう。あまり知られていませんが、実際に小水力発電によって幸せになった町の事例はたくさんあります。

 小林久先生(茨城大学)のお話によると、ドイツは発電量3万kW以上の能力を持つ発電所を日本の1/4しか持っていませんが、小水力発電所は日本の10倍持っています。おかしいと思いませんか? 日本はドイツより降水量が2倍あり、勾配があって落差が利用できるにもかかわらず、小水力発電所の数は条件に恵まれないドイツのほうが多いのです。ドイツの水準で考えると、日本には2万ヶ所の小水力発電所があってもいい計算になります。日本には適地がたくさんあるのに、エネルギーを流しっぱなしにしてしまっているのです。

 都市に住んでいる人々は、自分たちは小水力との関連性が少ないと考えられるかもしれません。しかし、夏にキャンプに行ったり、スキーなどをされる人は、自分とつながっている地域で小水力を呼びかけていただきたい。地元の人は小水力のことを知らない場合があるので、都市の人から声をかけることが重要になります。今日、参加された人は、是非行動を起こしてくださるようにお願いします。

 他の自然エネルギーとの比較では、曇りや雨では発電できない太陽光や、風がないと発電できない風力に比べ、小水力は水が流れている限り、常に発電が可能です。また水量を安定させることで、出力を一定化させることができるのも、小水力のメリットです。ただし、太陽光パネルがどこの屋根にも設置できるのに対し、小水力は設置可能場所が限られています。また、設置コストが割高なのも弱点ではあります。知名度が低いことは、話をしていくことでどんどん広まっていくと思います。川が好きな人に、「自然を壊さないので使わせてください」とお願いをすると、何度も足を運ぶ必要はありますが、多くの場合は理解していただけます。

 今日は、みなさんに覚えてほしい数式があります。

 小水力発電によって得られる電力量は、流量(水の量)に落差、さらに重力加速度を掛けて求められます。また小水力発電での発電効率は70〜80%になりますので、それを掛けると発電量が算出できます。

 そうするとこの事例では73.5kWになり、35軒の家庭が一軒あたり2kW程度を使える計算になります。ホットプレートの最強が1kW、IH調理器を最強にすると3kWぐらいになりますが、これを35軒の家庭が同時に使うことはありえませんので、まず問題ありません。

 小水力発電ではこの発電量を安定して供給することができますので、ベース電源として利用することが可能です。太陽光は晴れているときに発電するのでピークカットの効果は大きいのですが、ベース電源には向いていません。

  • 小水力発電とは

    (以下全ての画像・写真の資料提供:古谷桂信さん)

  • 小水力発電とは

    小水力発電とは

  • 小水力発電導入可能性の検証

    小水力発電導入可能性の検証

  • 小水力発電とは
  • 小水力発電とは
  • 小水力発電導入可能性の検証


小水力発電の現場

 それでは、私が実際にかかわっている小水力発電書の事例をご紹介しましょう。
 水の文化39号でも紹介されているイームル工業の織田史郎さんは、中国電力の取締役まで勤められた方ですが、後に政界にも働きかけ農山漁村電源開発法を成立させるなど、小水力発電の普及に尽力されました。中国地方だけで小水力発電所を90カ所もつくった人です。

 今回は、織田さんが手掛けた小水力発電所の一つである、壬生発電所を紹介します。この発電機の取水口は、見方によっては河川環境を破壊する人工構造物と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は100年ぐらい使い続ける考えがあるのなら、こうしたものをつくってもいいのでは? と感じました。

 写真の上方に滑車が見えます。これは川が氾濫する等、水没の危険が生じた場合、発電機を鎖で引き上げる構造になっています。このように、パネルの設置後はメンテナンスが不要な太陽光と比べ、発電機のケアや水路の落ち葉拾いなどの手間がかかるのも、小水力発電の特徴です。これを欠点ととらえる人もいますが、この手間が地元の雇用につながりますので、私は良いことだと思っています。

 次に高知の山奥で、個人で発電をしている例を紹介します。
 これは実は発電機ではなく、モーターを逆回転させることで電気を起こしています。この方法は効率が悪いため、本来ならば10kW程度の発電量が得られる適地なのですが、実際は3kWしか発電していません。
 しかし個人使用ですので、この発電量でまったく問題はないのです。ちなみに、この発電機の所有者である伊藤さんは、小水力の自家発電と四国電力の電気を用途に合わせて併用されています。

 次に高知県檮原町(ゆすはらちょう)の小水力発電所のご紹介です。
 写真中央から流れ出ているのは余剰水で、実際に発電に使った水は、左下の小さいパイプから出されているだけです。
 この施設は非常に大掛かりで、町も力を入れて設置しましたが、残念ながら費用対効果が悪くなっています。もう少し効率の良い施設が設置できた可能性もあり、これだけを見て「小水力発電は採算が取れない」と考えるのは早計だと思います。

 最後に三原村の紹介をします。
 ここは非常に水の流量があり、しかも落差がある適地です。私と小林先生で、地域の人と話をしました。当時は、住民の方も小水力に関心がなかったのですが、その後、高知に協議会ができたこともあり、少しずつ村の方々に関心を持ち始めていただけました。小水力は設置コストが高いと諦めてしまいそうになっていた人も、「正しいデザインにすれば充分な出力が得られ、孫・ひ孫の代まで使い続けられる」と熱心に説明したところ、理解を示してくれるようになったのです。足繁く通った甲斐がありました。

  • 壬生発電所除塵機とヘッドタンク

    壬生発電所除塵機とヘッドタンク

  • 壬生発電所発電機と滑車

    壬生発電所発電機と滑車

  • 手づくりの発電機

    伊藤さん手づくりの発電機

  • 梼原町小水力発電施設

    梼原町小水力発電施設

  • 三原村住民との意見交換会

    三原村住民との意見交換会(2009年7月16日)

  • 三原村住民との意見交換会

    三原村住民との意見交換会(2011年10月28日)

  • 壬生発電所除塵機とヘッドタンク
  • 壬生発電所発電機と滑車
  • 手づくりの発電機
  • 梼原町小水力発電施設
  • 三原村住民との意見交換会
  • 三原村住民との意見交換会


これからの小水力

 このように、高知には小水力の適地があり、徐々にではありますが、これに取り組む人が増えてきました。他の地域にも、このような人がたくさんいると思います。これから小水力を広めるためには、こうした人々と、情報や知識を持っている都市に住む人々がつながっていく必要があると思います。お互いに力を合わせないと、郊外の限界集落だけでなく、都市にも未来はないと思っています。是非、みなさまにも協力をお願い致します。

質疑応答

 古谷さんに、参加者から寄せられたさまざまな質問にお答えいただきました。

Q.全国小水力利用推進協議会はどのような団体ですか?
A.大学教授・研究者・NPO関係者・小水力の専門家(発電機・コンサルタント)などで構成されています。会費を払えば誰でも入会が可能です。現在、個人で100人弱、法人で約30社に入会いただいておりますが、東日本大震災以降、大企業にも入会いただけるようになってきました。詳細は、ホームページ(http://j-water.jp/conference/)をご覧ください。

Q.認知度の低さを解決していくために、都市の若者ができることは何でしょうか?
A.全国協議会もしくは各地域でも協議会を立ち上げていますので、それらへ是非加入してください。友人・知人に小水力発電の話をたくさんしていただくのも効果的です。今までの経験上、川好きやアウトドア好きの人は反応がいいかと思います。

Q.東日本大震災以降、自治体の動きは変わってきましたか?
A.変わってきました。ただし現状では、「何かをしなければいけないのだろうが、何をしたらいいかわからない」という状況の自治体が多いと思います。実際に本気になって動き始めている自治体としては、高知県檮原町、徳島県上勝町、長野県飯田市が挙げられます。これらの地域は、地域活性化の先進自治体としても有名です。

Q.梼原町の小水力発電では、電気をどのように使っていますか?
A.紹介した梼原町の小水力発電施設の電気は、昼は隣にある小中一貫校、夜は街灯の電源として使われています。ただしこの使い方では採算が取れているとはいえません。小水力発電で採算が取れるようになるためには、固定買取価格制度で何円になるかがポイントです。今後の政治状況で変わってしまうかもしれませんが、このままいけば、固定買取価格は小水力発電に有利な金額に設定されると思っています。ただし、この金額が確定するまで待って、それから本気になって取り組むのでは遅いと思います。小水力発電が確実に採算が合うものになってしまうと、小さな町にも大企業が押し寄せて地元の人たちが参入できなくなる可能性があるからです。ですので、多少のリスクを冒してでも先行して動くことが重要だと思います。

Q.小水力発電は、半永久的に利用可能なものですか?
A.岩手県にある最古の発電所(旧宇津野発電所)は現在も動いています。導入時には大きなお金がかかりますが、しっかりメンテナンスをしていれば、エネルギーとなる水は半永久的に存在するので、発電施設も半永久的に利用可能だといえます。

Q.水を流す角度は、なぜ45度だと損失が少ないのですか?
A.斜度が大きくなると水泡などができて、エネルギーが小さくなるからです。本当は20〜30度が理想的なのですが、この場合は長い距離を流さなくてはならなくなるので、45度ぐらいが両方のバランスが良いのです。

Q.導入後のメンテナンスについてくわしく教えてください。
A.高知県三原村の例ですが、水路の落ち葉拾いなどが必要になため、地域のNPOに業務委託をしています。その他では、専門家による定期検査も必要になります。また水中のタービンの耐用年数が20年ぐらいになりますので、その交換のための費用も積み立てています。

Q.固定価格買取制度で電力会社が買わないことはありますか?
A.これまでは、安い値段で電力会社に買い叩かれてしまっていたため、協議会では売電を勧めていませんでした。これからは売電目的ならば、余剰電気を売電するのではなく、全部を売電する心づもりで取り組むことが大切だと思います。余剰電気を売る程度では、あまりメリットがないと思います。

Q.水利用権が問題になるのは、手続きが煩雑なところでしょうか?
A.取得する書類は決まっているので、その手続きを煩雑と思うか否かは、人それぞれだと思います。ただし水利権取得に要する時間は年々短くなってきていて、以前は1年半かかったものが、現在は1年程度になっており、さらに短くなることが予想されます。本気で取得しようと思えば、必ず取得できます。

Q.戦前につくられた旧中・小水力はどれぐらい残っていますか?
A.正確な数字はわかりませんが、10〜20kWレベルのものまで含めると、100〜200カ所程度ではないと思います。

Q.小水力発電用の日本製発電機はありますか?
A.規模が大きい発電機には日本製のものが多くありますが、小さなコミュニティのために使うような規模の発電機は少ないです。

Q.自然環境への弊害はありますか?
A.場所によっては魚やサワガニなどに影響が出る可能性はがあります。弊害ではなくリスクの話をすると、崖崩れや地震などの災害で壊れる可能性があります。小水力発電の適地は土砂崩れの適地でもありますので、これを避けて通ることはできません。三原村は高知県の中でも土砂崩れの危険性が低く、最初の事業としてリスクが低い場所として選ばれました。

Q.両国国技館のように雨水を集めて小水力発電に利用することは可能ですか?
A.都市部での雨水利用はあまり期待できないと思います。ただ静岡県御殿場市のような高台に降った雨水は使えます。高台にあって、それなりに人口がある地域は考えてみたほうがいいと思います。

Q.話をうかがって、小水力発電の適地には「地理的・環境的な条件が整った適地」と「経済的条件(利用者がいる(が整った適地」の2種類があると感じました。例えば都会に近く、地理的・環境的条件のいい八王子などは、小水力発電の可能性がありますか?
A.従来は利用者がいないと小水力発電は採算が取れず、これが拡大の足かせになっていました。ただし固定価格買取制度が実現すると、その場所に利用者がいなくても売電すればいいので、チャレンジする価値が出てきます。八王子のように人口が多い町では合意形成が大変かもしれませんが、「可能性がある」と思った人が、まず始めてもらいたいと思います。

 現状では未利用のまま無駄になっている水エネルギーは少なくありません。これらの水の流れを積極的に使っていくことは、水循環を使いながら守る里川のコンセプトにも合致することに気づかされたセミナーとなりました。



この記事のキーワード

    里川文化塾 開催レポート,古谷 桂信,神奈川県,横浜市,水と産業,エネルギー,小水力発電

関連する記事はこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページトップへ