そうですか、もうそんなになりますか。思い起こせば、1996年(平成8)に編著として出版した『水・河川・湖沼関係文献集―これから水と河川及び環境を学ぶ人のために―』がきっかけでした。この本は1882年(明治15)から1994年(平成6)に国内で発行された水・河川・湖沼関係の単行本およそ1万冊を収録したものですが、それを陣内秀信さんが見つけてくださって、ミツカン水の文化センターをご紹介いただいたんです。
発端は私が水資源開発公団(現・独立行政法人水資源機構)に勤めていたときに「本を集めて整理してはどうか?」と上司から言われたこと。それ以来、本を収集して分類してきました。
水に関する本はほんとうにたくさんありますが、特に河川に関する本はその川が流れている地域に足を運ばないと入手できないものが多いです。私の地元、筑後川の本が関東ではなかなか見つからないように、信濃川に関する本なら新潟県へ行くのが一番いい。ときどき坂本貴啓さんの連載「Go!Go!109水系」の取材に同行させてもらいましたが、書店を覗いては希少な本を購入したこともあります。
2008年(平成20)5月ですね。口コミで徐々に知られるようになり、「こういう本はないですか?」と全国から多くの人が訪ねてくれました。それでネットワークが広がり、知り合いも増えたのは私にとってかけがえのない財産です。
2020年(令和2)3月に、所蔵していた約1万2000冊を久留米大学御井(みい)図書館に寄贈しました。全国の大学図書館や国立国会図書館にない貴重な資料も多いとの評価を受け、「古賀邦雄河川文庫」を開設してくれました。きちんと管理してくれるのでありがたいことです。
今も書店に行くと、新しい河川の本が毎月並びますので、目についたものは買い求め「納入河川書」として御井図書館に納めています。毎月50冊ほどでしょうか。これはもう私のライフワークですね。
使命感というほど大げさなものではありませんが、「本を通じて当時の状況を記録として残しておく」ことは後に役立つのではないかと考えています。地球環境では気候変動とそれへの対処が問題になっていますし、線状降水帯という言葉も最近出てきたもの。これらはほんの一例ですが、私が生まれた頃と今とでは大きな変化がありますからね。
水は生活すべてにかかわってくるものです。水があるから米や野菜ができるし、水があるからエネルギーも生み出せます。「水と食料とエネルギー」がなければ人間は生きていけません。なかでも「水」はその基盤をなすものだと思うので、読者の皆さんにはこれからも興味をもってもらいたいですし、ぜひ現場も歩いていただきたいです。
ミツカン水の文化センターがすごいのは継続していること。かつていろいろな機関が水や河川に関して取り組んでいましたが、今はなくなってしまいました。ですからずっと続けていただきたいですし、時にはみんなで集まって話し合うシンポジウムも開いていただきたいですね。
古賀さんには「水の文化書誌」の連載だけでなく、当センターのアドバイザーとしても長年にわたり数々のご助言をいただきました。坂本貴啓さんの連載「Go!Go!109水系」の取材にもご同行いただき、編集部に知識を授けてくださいました。ありがとうございました。