大雪山連峰の主峰かつ北海道の最高峰「旭岳」(標高2291m)に抱かれるようにある旭岳温泉エリア 撮影:大塚友記憲
スノーボード アルペン選手
竹内 智香(たけうち ともか)
1983年(昭和58)北海道旭川市生まれ。中学生の時にスノーボード競技に取り組む。2002年ソルトレークシティ五輪22位、2006年トリノ五輪9位。2007年に練習拠点をスイスに移し、5年間スイスチームとトレーニングを積む。2012年12月の誕生日にワールドカップ初優勝。2014年2月、ソチ五輪スノーボード女子パラレル大回転で銀メダルを獲得。2015年世界選手権で3位。著書に『私、勝ちにいきます 自分で動くから、人も動く』がある。
「北海道の屋根」ともいわれる大雪山系。20以上の山々からなり手つかずの壮大な大自然が広がります。主峰・旭岳(あさひだけ)の麓(ふもと)に兄が経営する温泉旅館「湯元 湧駒荘(ゆこまんそう)」があります。私が小学校5年生のころに両親が経営を始め現在に至ります。
私がスノーボードを始めたのもそのころなので旭岳温泉と私のスノーボード人生は深くつながりをもつものとなっています。旅館から勇駒別神社(ゆこまんべつじんじゃ)までの坂道は、初心者だった私にとってハイクをしながら練習をする最高な場所であり、今となっては思い出の場所の一つです。初詣に行くたびに、懐かしく初心を思い出させてもくれます。
旅館には敷地内にそれぞれ泉質の異なる5つの源泉と湧水があり、絶え間なく湧出しています。豊富な源泉は加温や加水を必要としないちょうどいい湯加減なので、贅沢にそのまま17の浴槽にかけ流します。浴槽内の温度は33度~42度と比較的ぬるめの湯温が多く、ゆっくりとじっくりと温泉を楽しむことでき、湯あたりもしないやさしい温泉です。
それを証明するようにお客さまの忘れ物を保管する場所に、よく登山用のトレッキングポール(ストック)があります。登山で疲れきった体が温泉で癒されて、ストックを忘れてしまうほどいい湯なんだそうです。湧水と料理の相性はよく、出汁(だし)がおいしくて私はいつも食べすぎてしまいます。
旭岳温泉の繁忙期は夏から秋にかけてとなります。登山や北海道観光、そして紅葉と毎日満室に近い稼働となります。そのため夏は基本的にシーズンオフとなることが多い私も、家族やスタッフの方と一緒に働くことがよくありました。布団敷きや薪割り、洗い場といった裏方仕事はもちろん、お料理の配膳やフロントなどお客さまと接する仕事も経験しました。
アスリートとして過ごす日常では得ることができない経験を旅館ではたくさんすることができましたし、旭岳温泉で出会ったたくさんの方からいただいた温かい応援の声が何よりの力となっています。
旭岳では四季を通じて登山、スキー、スノーボード、クロスカントリー、ハイクなどさまざまなスポーツを楽しむことができ、自然から多くの学びを得ることができます。そしてその豊富な温泉は、私の心と体を癒やしてくれるかけがえのない場所となっています。スノーボードを始めたころから過ごしている旭岳温泉は私の原点であり、遠征やトレーニングの疲労を回復させてくれるのです。