研究活動「みず・ひと・まちの未来モデル」は5年目を迎えました。
2025年度の対象地域は「京都」です。法政大学現代福祉学部准教授の野田岳仁さんの指導のもと、2年生のゼミ生12名と、ミツカンの若手社員3名が研究活動に取り組みました。
能登半島地震をはじめとする近年の大規模災害は、上水道システムの脆弱性と断水が広域かつ長期に及ぶ可能性を浮き彫りにしました。これを受けて、国も防災井戸の整備や地下水利用を政策課題として位置づけはじめています。しかし、防災井戸は設置するだけでは機能しません。日常的に利用され、維持管理されてこそ、いざというときに確実に機能するものだからです。では、防災井戸を単なる「非常用装置」にとどめず、地域の日常生活に埋め込まれた「日常装置」として作動させるには何が必要なのでしょうか。
本研究では、京都で日常に根付いた防災井戸の利用実態を明らかにするとともに、得られた知見をもとに政策提言をまとめました。
初訪問から8か月後にあたる2026年(令和8年)1月23日には、法政大学市ヶ谷キャンパスにて「研究成果発表会」を実施しました。
法政大学現代福祉学部 野田ゼミ
准教授 野田岳仁さん(研究指導・連載執筆)
野田ゼミ2年生 12名
2026年(令和8)1月23日に法政大学市ケ谷キャンパスで「研究成果発表会」を実施しました。
当日に発表・投影した資料を公開します。ぜひダウンロードしてご覧ください(一部非公開)。
研究成果発表 資料(PDF5.34MB)
「研究成果発表会」を終えた野田ゼミ2年生の皆さんに、8カ月におよぶ研究活動を振り返っていただきました。学生の皆さんに、京都で印象に残ったこと、研究活動を通じて成長したことなどについてコメントいただきました。

とりあえず
話しかけてみる積極性
一本鎗優来さん
いっぽんやり ゆうな
「とりあえず話しかけてみる」ということの大切さを知った一年でした。知らない人の家にいきなりピンポンをして井戸について質問することは、日常生活でなかなか経験できることではありません。「こうかもしれない、いや、違うかもしれない」と頭で考えるよりも、まずはそこにいる人に話しかけてみることで新しいヒントが得られたり、意外な繋がりが見えてくることもありました。また、そこで失礼にならないようなこれから社会人として必要なマナーなどもフィールドワークを通して知るきっかけになりました。
自ら動いて
確かな情報を得る力
佐藤愛さん
さとう まな
訳あって夏合宿には参加できませんでしたが、私は春のゼミ合宿で大きなものを得ました。それは、「自ら動いて確かな情報を得る力」です。ゼミ活動を始める前は、失敗しないことだけを考えて常に誰かと一緒に行動していました。そんな私も、調査を続けていく中で湧いた疑問に対して、自ら考え、調査することができました。これは、同じゼミ生の調査力や論理を組み立てる力、まとめる力の凄さに感化されたからだと思っています。自分を奮い立たせてくれるメンバーと同じ場で活動できたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
事実をもとに
論理的に考える力
小野心巳さん
おの ここみ
ゼミ活動を通して私が学んだのは、論理的に考える力です。これまでの私は、自分の目線で物事を捉えてしまい、事実をもとに整理して考えることができていませんでした。しかし、二回のゼミ合宿を経験する中で、誰にでも分かりやすく伝えるために、根拠を意識しながら論理的に考える姿勢が以前より身につきました。合宿では周囲との差を感じる場面もありましたが、必死に食らいつき続けたことで、春の頃よりも成長できたと感じています。
成果を急がず、
地域の論理に向き合う
小池杏奈さん
こいけ あんな
ゼミ活動を通して身についたのは、成果を急がずに本質的な地域の論理を探究する姿勢です。春の合宿では、研究の進め方や論理の組み立て方を十分に理解しないまま調査に臨んでしまい、思うように研究が進まない場面もありました。良い結果を持ち帰りたいという気持ちが先行するあまり、本来向き合うべき地域の人の思いや感覚を見落としてしまっていました。しかし、夏合宿までに論文を読み、論理の組み立て方を学び直したことで、夏合宿では京都のさまざまな地域の論理を自分たちで整理し、比較することができるようになりました。

自分の弱みと
向き合えた時間
又木花恋さん
またき かれん
私は、元々まちづくり経験はあるものの大学に入ってからは何もできておらず、周りと比べ劣等感を抱いていました。なんで自分はできないのだろう?と何ができないのかも分からない状態で迎えたこのプロジェクトで、私は自分の弱みを見つけることができました。合宿中のディスカッションで自分の考えを上手く言葉にできず何度もつまずきました。そんな中手を差し伸べてくれたのは、野田先生、そしてチームの皆さんでした。考える時間をもらいできるまで待ってくださいました。こういう経験を大学でさせてくれたこのプロジェクトに感謝しています。

思考前の行動の重要性
柳澤俊之介さん
やなぎさわ しゅんのすけ
この活動を通して、「思考の前の行動」の重要性を痛感しました。私は何をするにも、まず思考から入り、自分である程度の筋道を立ててからでないと行動に移すことができませんでした。しかし、二度の合宿を経て、思考の前に行動することで先入観や無意識的な誘導に縛られることなく研究が進められると実感しました。また合宿中、多くの住民の方からそれぞれの人生について伺い、一つ一つは独立していて、それでいてつながりがある、小説の短編集を読んでいるような気分でした。貴重な学びに感謝しています。

「守るもの」から
「使いこなすもの」へ
セイラー舞空
デイビッドさん
せいらー まいく でいびっど
亀屋良長さんへのインタビューは、私の伝統に対する価値観を根底から覆すものでした。観光地で育った私にとって、伝統とは「形を変えずに守り、次世代へ繋がなければならない重い責任」という認識でした。しかし、亀屋良長さんの「伝統は先人たちから受け継いだ知恵であり、今を生きる人のために使う道具である」という言葉に、心がふっと軽くなるのを感じました。他者の人生観を学び、自分の価値観に取り入れること。 その連続が、自分自身の生き方を豊かにしていくのだと強く実感しました。

客観的に課題を捉え、
粘り強く向き合う姿勢
新保有朋さん
しんぼ ありとも
内向的な性格もあり、当初は聞き取り調査に苦労しました。相手の懐に飛び込むのが上手な友人に圧倒され、自身の力不足を痛感する場面も多かったです。レベルの高い仲間に必死についていく中で、真剣に議論を重ねた時間は非常に貴重な経験となりました。この活動を通じて得た「客観的に課題を捉え、粘り強く向き合う姿勢」を学問の場に留めず、今後の社会生活におけるあらゆる局面で主体的に活かしていきたいです。

見方を変えると、
問いが変わる
山尾一環さん
やまお かずわ
私はこの活動を通して「物事の見方の重要性」に気づきました。これまでは答えのある問いに対する正解や、自身の意見を述べることが求められてきました。しかし、研究では一元的な視点をなくし、論理を主張する際には学問理解を深めて理論的基盤を整える必要があります。学問を自分のものとして咀嚼し、研究対象の考察へ発展させることが重要だと学びました。このような思考を発展させる経験は、私にとって貴重なものでした。今後もこの経験を活かし、学びに対する意欲を持って取り組んでいきます。
より深い言語化の経験
山本琴璃さん
やまもと ことり
問いを立てフィールドワークから論理を導き出す「研究」の手法を、この時期に学べたことが大きな財産になりました。そしてゼミが始まってから初めての活動を通じ、同期の価値観に触れ、素敵な仲間に恵まれたことを心から感謝しています。また、地域の方々へのインタビューでは限られた時間でヒントを探す難しさも痛感しました。一人で抱え込みがちな私でしたが、仲間に頼ることでより深い言語化ができ、助けられる場面が多くありました。この経験から、人に頼ることで自分自身も成長できるのだと気づくことができました。
固定観念を
手放して見えた世界
保科宇里さん
ほしな うり
私はもともと、物事に対して「こうじゃなきゃいけない」という強い固定概念を持っていましたし、正直それが悪いことだとも思っていませんでした。しかし、合宿に参加し、現場を見て、社員の方や同期、先生と多くの議論を重ねる中で、その固定概念は大きく崩れ、物の見方や考え方がとても素直になりました。住民の立場に立ったときに本当に必要なものは何か、地域に根づく論理はどこにあるのか。それらは、自分の中の固定概念を手放さなければ見えてこないのだと気付かされました。
地域の人びとにとっての
合理性の探求
菊島凪留さん
きくしま なる
今回の調査を通して自分に足りないこと、弱い所を痛感することができた点でとても意義のある時間になりました。ひとりで調査をするとどうしても結果に妥協してしまい、何となく現状に至るという形で調査を終わらせてしまうことが多かったです。しかし今回の調査ではミツカンの社員の方やゼミのみんな、野田先生がいたからこそ何となくではなく「なぜそうなるのか」、「地域の人びとにとっての合理性はどこにあるのか」をより探求することができました。きっとこの研究に対する貪欲さはこれからにもいきてくると感じています。