泉 麻人
コラムニスト、作家。1956年東京都新宿区生まれ。慶応大学商学部卒。1979年に東京ニュース通信社に入社。『週刊テレビガイド』などの編集に携わった後、1984年からフリーのコラムニストに。コラム・小説を発表するほか、「テレビ探偵団」「出没!アド街ック天国」などのテレビ出演・司会を手がけ、若者文化、レトロカルチャーや東京風俗のオーソリティとして活躍中。 主な著書に、『ナウのしくみ』(文藝春秋1987〜)、『「お天気おじさん」への道』(講談社2005)、『青春の東京地図』(筑摩書店2007)など。
有名人ランキングには、いろいろな種類がありますね。でも、『みずみずしいと感じる有名人』のアンケートは初めて見ました。僕自身も、これまで「みずみずしい」という切り口で考えたことがなかったですしね。
みずみずしさの基準て、何だろう?
「新鮮」とか「旬」なイメージですかね。アイドルで言えば、「清純」もキーワードかもしれない。健康的な輝きも、みずみずしさの要素でしょうね。
スポーツ選手なら、「さわやか」な感じが決め手かな。泥臭かったり、暑苦しい印象じゃなく、汗がきらっと光ってみえるタイプ。
そう考えて07年のランキングを見ると、ほぼ順当な感じですね。1位の長澤まさみは「スター」という言葉が似合うし、妥当だと思います。
一つだけ意外だったのが、藤原紀香の3位。彼女はセクシー系ですけど、「セクシー」と「清純」て正反対ですよね。ただ彼女の場合、均整のとれた体育会系のプロポーションだし、結婚式がさわやかなイメージだったから3位に入ったのかな。
96年のランキングでは、西田ひかるが1位、山口智子が2位だったのが意外です。どちらもデビューは88年ですけど、96年は山口智子が理想の女性の筆頭だったころでしょ。西田ひかるは確かに爽やかなイメージではあったけど。
松嶋菜々子は、両方の年に7位ランキングしてますね。みずみずしさってそう長年は続かないはずだけど、清涼飲料水のCMに継続して出ていると、フレッシュなイメージが崩れないのかもしれないですね。
07年のベスト10で特徴的なのは、96年にイチロー1人だったスポーツ選手が3人も入っていること。9年前に比べると、スポーツがエンターテイメントとして扱われることが増えてきたので、その表れでしょうね。全般的にスポーツ選手がタレント化しているし、スターも生まれやすい。
アイススケートでは、やっぱり浅田真央。
「ハンカチ王子」の斎藤佑樹と「ハニカミ王子」の石川遼は、どちらも王道のさわやか系。無垢な感じで、60年代ぐらいの古風なイメージもありますね。でも、マスコミへの受け答えなんかはそつなく上手にこなすし、昔の純朴なスポーツ青年とは一味違う。
古風と言えば、長澤まさみもけっこう古風な感じがします。デビューしたころの吉永小百合を思わせる、正統派スター的な雰囲気が漂う人です。
吉永小百合は今年9位に選ばれていましたね。これはちょっと驚きでした。60年代にこのアンケートがあれば、絶対1度はトップに選ばれただろうけど、07年にもランキングされるなんてすごい。
時代は螺旋状に巡ってますから、今は60年代の空気を感じさせる人が新鮮に見える時期なのかもしれないですね。
もし70年代、80年代にこのアンケートがあったら、アイドルではどんな人が選ばれていたかな。70年代の前半なら、南沙織、麻丘めぐみですかね。男性なら、郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎。スポーツ選手では、野球の太田幸司や原辰徳がみずみずしかったですね。
70年代後半はピンク・レディーもいたけれど、みずみずしさならキャンディーズでしょう。それとアグネス・ラム。彼女は今でいうグラビアアイドルですが、当時はそんなジャンルがなかったし、ピンナップ撮影が主な仕事。今の人気グラビアアイドルはバラエティー番組でボケ役なんかもやるので、ラムのころとはイメージが違う。
80年代は松田聖子、中森明菜、早見優が上位に入ったと思います。男では田原俊彦、野村義男、近藤真彦のタノキントリオ。これ以降は、ミュージシャンやアーティストの時代になって、アイドルは小粒になりましたね。
最後に、来年、調査をしたら選ばれそうな人を予想してみると、長澤まさみは、また上位に入るんじゃないかな。それと、蒼井優が上位にくる気がします。蒼井優は長澤まさみより少し影があるタイプ。長澤が大河だとすると、蒼井は谷川を思わせるみずみずしさなんです。今『どんど晴れ』に出演してる比嘉愛未(ひがまなみ)や、『のだめカンタービレ』の上野樹里も入ってくるかもしれない。
長澤、蒼井、比嘉、上野、それに今年4位だった上戸彩も含めて、コメディーがうまいのが共通点です。コメディーセンスのある若手女優がみずみずしく見えるっていうのは、これまでになかった特徴かもしれませんね。(談)