季節を問わず最近とみに増えているゲリラ豪雨。都市の川が氾濫すると被害は甚大です。急速に市街化が進んだ鶴見川流域では、さまざまな治水対策が進められています。ふだん目にすることのない「遊水地」を見学し、洪水を食い止め安全な暮らしを守るため、どのような工夫が施されているのかを学びました。
国土交通省関東地方整備局 京浜河川事務所 流域調整課長
早迫 義治(はやさこ よしはる)さん
1986年(昭和61)、建設省関東地方建設局(現 国土交通省関東地方整備局)へ入省。2013年(平成25)4月より現職。鶴見川流域に関する調査・計画を担当する。
神奈川県横浜川崎治水事務所 河川第一課長
藤崎 伸二郎(ふじさき しんじろう)さん
1987年(昭和62)、神奈川県に入庁。2014年(平成26)4月より現職。
公益財団法人横浜市体育協会 前 新横浜公園管理局事業部担当課長 (現 神奈川スケートリンク管理課長)
南部 信治(なんぶ のぶはる)さん
1996年(平成8)、財団法人横浜市スポーツ振興事業団(現 公益財団法人横浜市体育協会)入職。横浜国際総合競技場(現 日産スタジアム)で2002年FIFAワールドカップTM日韓大会の運営に従事。体育協会本部事務局などを経て2013年(平成25)日産スタジアム事業部担当課長に着任。2014年(平成26)4月から現職。
ライター・編集者/ミツカン水の文化センター事務局
前川 太一郎(まえかわ たいちろう)さん
生協職員、業界紙記者を経て編集制作会社に入社。まちづくり・地域活性化をテーマとする広報誌および書籍の編集業務を担当。2010年12月に独立。フリーランスのライター・編集者として、水の文化やまちづくり、東北の復興支援活動、団地再生問題などを追う。
東京都町田市小山田を源流として、神奈川県川崎市、横浜市を縫って京浜工業地帯から東京湾へと注ぐ鶴見川。幹川流路延長42.5kmはフルマラソンとほぼ同じ距離です。流域面積は大阪市と同様の235km2。国で管理する109の一級水系のうち、幹川流路延長で99位、流域面積で106位なので、非常に小さい規模の川といえます。ところが流域内の人口密度は名古屋市に匹敵する1km2あたり8000人と、全国第1位。密集した住宅地を流れる川だけに、川幅を広げるなどの河川改修が容易ではなく、遊水地や調整池などの、集中豪雨時にあふれた水をいったん貯留する治水施設の役割がとても重要になります。
第17回里川文化塾では2つの遊水地を見学し、管理している行政と指定管理者の方にお話を聞きました。JR・横浜市営地下鉄新横浜駅からバスで向かった先は、鶴見川と恩田川の合流点に近い川和(かわわ)遊水地と、2002FIFAワールドカップ決勝戦が開催された日産スタジアム(横浜国際総合競技場)のある鶴見川多目的遊水地です。
神奈川県と東京都をまたいで流れる鶴見川は国の管理する一級河川ですが、国の直轄管理区間(下流域)と、自治体に管理委任している区間に分かれます。午後に見学した鶴見川多目的遊水地は国土交通省の管轄、午前中に見学した川和遊水地は神奈川県の管轄による施設です。
鶴見川ではどのような治水対策が施されているのでしょうか。国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所の早迫義治さん、神奈川県横浜川崎治水事務所の藤崎伸二郎さんのレクチャーを元にまとめます。
蛇行が激しく勾配が少ないので、昔から氾濫による水害が広範囲にわたり頻発したのが鶴見川です。流域平均2日雨量343mmを記録した1958 年(昭和33)9月の狩野川台風(台風22号)では、2万戸以上の家屋が被災しました。床上浸水の被害を受けたのは2700戸で、そのうち数百戸が庇(ひさし)まで水没したのです。
水害が多いのは地形的な要因だけではありません。流域の市街化が急速に進んだためでもあります。狩野川台風が襲った1958年の市街地率は約10%で人口は約45万人。それが1975年(昭和50)には市街地率約60%、人口約120万人に、さらに2000年(平成12)には市街地率約85%、人口約188万人に達しました。全国109の一級河川で最も流域の市街化率が高い河川です。
市街地開発によって森や田畑が住宅や舗装道路に変わります。土がコンクリートやアスファルトになると、雨水が地中に浸透せず、地表面をすべり落ちて、短時間で河川への流出量が一気に増大し、氾濫が起きやすくなるのです。
河川の氾濫を防止するためには、通常は築堤や川幅の拡張、川底の浚渫などの河川対策を行ないます。しかし市街化が急速に進む鶴見川流域では、河川対策だけでは追いつかない状況でした。そこで全国に先駆け、流域が一体となった「総合治水対策」が推進されました。
雨水貯留管やポンプによる排水などの下水道整備。残り少なくなった農地や緑地など自然環境による保水・遊水機能の保全。雨が一度に川へ流れないようにいったん溜め込む調整池(民間・公共合わせ流域で約4400カ所、約300万m3)や宅地における雨水浸透マスなど、流出抑制施設の整備。そして今回見学する、川和遊水地や鶴見川多目的遊水地といった洪水調節施設の設置や河道整備。このように、下水道対策、流域対策、河川対策を一体として取り組む総合治水対策が進んできました。
調整池や雨水浸透マスなどの設置には、企業と市民の協力が欠かせません。そして、私たちのふだんの暮らしでも、ちょっとした気配りで、お金をかけず治水対策に貢献できることはあります。例えば、雨の日は風呂の残り湯を流さない、雨水を貯留して植物の水やりに利用する、といった工夫です。
急速な市街化は、集中豪雨や台風といった災害時だけでなく、平常時でも流量の低下や水質の悪化など河川機能に弊害をもたらします。そこで2004年(平成16)、「鶴見川流域水マスタープラン」を策定し、流域の市民、市民団体、企業、行政が連携して健全な水循環系の再構築を目指しています。
下水処理場の浄化機能を向上させ、昔のような清流を取り戻す。源流の森や上流域の緑地など、保水機能のある自然地を守り育てる。震災時などに緊急用物資の輸送や救助活動に役立つ水上交通のための防災船着場を整備する。市民が水辺にふれあう場所と機会を提供し、ふだんから河川への関心を高める。
このような「水」に関する総合的なマネジメントプログラムとして、鶴見川流域水マスタープランは海外からも注目を集めています。鶴見川流域水マスタープランの情報発信拠点でもある鶴見川流域センターには、最近3年間で26の国と地域が視察に訪れました。
神奈川県では時間雨量約60mmに対応できる治水対策として遊水地の整備を進めてきました。鶴見川の支流、恩田川との分岐点近くにある川和遊水地について、神奈川県の藤崎さんが紹介してくれます。川沿いに設置する遊水地は、どんなところが治水に有利なのでしょうか。
「上流で洪水の一部をカットするので下流にそれ以上の流水をもたらさないことが遊水地の優位性。また、鶴見川のように流域の市街化が進んだ河川に有効な治水対策です。市街地では集中豪雨時に河川への流入量が一気にピークに達するから、そのボリュームだけを遊水地でカットすればいい。都市化の進んだ河川ほど、遊水地によるピークカット効果が大きいわけです。ただ、ピークが2回来る洪水で、1回目で満杯になってしまうとピンチですが、それでも、長期の工事になる河道改修に比べればはるかに費用対効果の高い治水対策です」
横浜市営地下鉄車両基地の地下にある面積2.6ha、貯水容量12万m3の川和遊水地は、総事業費135億円(半額国費補助)をかけて2008年(平成20)3月に完成しました。川の水位が高くなると、堤防より一段低い越流堤から川の水を流入させ、水位が下がれば、排水樋管から少しずつ川へ放流するしくみです。
6年間で6回の流入がありました。直近だと2013年(平成25)10月16日。台風26号により、時間最大雨量37mm、流入量3万9000m3を記録しました。貯水容量の約4分の1に達し、現在(2014年6月)までこれが最大の流入量です。
藤崎さんと臼井正治さん、小池良宣さんの案内で、実際に川和遊水地の中へ入ってみました。
長靴に履き替え、汚泥の残った滑りやすいコンクリートの床を、ゆっくり気をつけながら歩きます。全216本の支柱が目立つ、ひんやりと広大な地下空間。貯水容量12万m3という数字を実感しました。上部は地下鉄の車両基地で荷重が大きいため、天井には多数の梁が出ています。予想していたほど匂いはありません。見学に備えて当日の午前中から稼働させたという換気扇が効いているのです。支柱の天井近くに「高水位5.46m」の表示。満杯になるとそこまで水没する、ということです。排水樋門が1m×1mと意外に小さいのに驚きました。藤崎さんによれば、溜まった水を10時間かけて少しずつ川へ放流するから、これくらいの大きさでいいのだそうです。
いちばん端の越流堤まで行きました。バス移動中に橋の上から見た越流堤の内側です。こんな機会でもなければ、めったに入れるところではありません。藤崎さんが越流堤の構造について説明してくれました。
「ゲートなどはなく、人的操作を入れずに、水位が高まると自然に流入します。越流堤と遊水地の間にスペースを設けているのは水の勢いを殺ぐため。流木などの大きなゴミが入ってくるのを円形列柱の〈越流堤スクリーン〉が防ぎます」
遊水地は浸水被害を防ぐ効果が高いですが、そうした「治水」だけでは川を守ることになりません。水道水や緊急時の水上交通路としての「利用」。自然の保水機能を維持する「環境」。こうした総合的な観点から川を守ろうとする鶴見川流域の取り組みは先進的なモデルです。ふだんから川と親しみ、まずは関心をもってほしい、そして川を好きになっていただきたい、と藤崎さんはメッセージを送ってくれました。
川和遊水地は専用の地下空間でした。しかし新横浜駅近くの鶴見川多目的遊水地は地上の遊水地。通常は野球場、テニスコート、運動広場、競技場、サッカー場、医療施設などに利用され、いざというときは洪水調節機能を担う遊水地となります。
国土交通省の早迫さんが概要を説明してくれました。
「本流と支流の分岐点で水があふれやすい立地を利用した遊水地で、整備前は田んぼが広がっていました。通常の堤防より3mほど低い越流堤から河川水を流入させ、河川水位が下がったら排水門を開けて貯留水を川へ戻します」
面積84ha、貯水容量390万m3。川和遊水地の実に30倍以上にも及ぶ、きわめて大規模な遊水地です。2003年(平成15)6月から供用が開始されました。道路を挟んで北側の運動場エリアが鶴見川に近く、浸水頻度は1〜2年に1回。南側のサッカー場エリアまで浸水するのは4〜5年に1回ということです。
敷地内には、日産スタジアムをはじめ、横浜市の総合保健医療センターや障害者スポーツ文化センターなどがあります。越流時に水が流れ込んだら、こうした施設は大丈夫なのでしょうか。誰もが抱く疑問に早迫さんが答えます。
「これらの施設は、河川水が遊水地に越流しても浸水しないピロティー(高床)方式の構造です。ふだんピロティーの1階部分は駐車場に利用されていますが、越流が予測される際には事前に車両を退避させ安全を確保します」
過去11年間で合計13回の越流がありました。これまでで最大は2004年(平成16)10月9日の台風時。貯留量約125万m3と、貯水容量の32%に達しました。最高水位5.34mで、日産スタジアムのピロティー支柱が地上から6割がた隠れるくらい水が来たのです。
国土交通省では、鶴見川多目的遊水地がなかった場合をシミュレーションして、治水効果を「見える化」しています。
「約125万m3の貯留量があった際に、下流の亀の子橋地点で観測水位6.93mでした。もし遊水地がなかったら水位は7.9m程度になったはず。その水位を上回ると堤防が危険な状態になる〈計画高水位〉はこの地点で8.27mですから、ほぼギリギリ。遊水地のおかげで約1mの抑制効果があった試算になります」
鶴見川多目的遊水地を管理する国土交通省の施設・鶴見川流域センターの屋上から遊水地の全景を眺め、早迫さんと高木修治さんの案内で北側の公園エリアをぐるっと歩いて、鶴見川沿いの越流堤まで行ってみました。
「野球場やテニスコートのある北側エリアは海抜2.5m。サッカー場や医療施設のある南側エリアの海抜は4m。少ない越流水だと北側の低い敷地の浸水で済み、多くなると南側の高い敷地まで浸水する構造になっています。南側まで流入したのは、これまで2回。先にふれた2004年10月と2013年4月です」
ふだんは立ち入り禁止の越流堤の上に立ちました。越流堤は鉄線の枠組みに石が詰まったものが段組みになった「籠マット形状」です。アスファルトと自然の岩石を利用した籠マット多段積工法は多孔質で透水性が良く、沈下などの地盤変化にも追従する柔軟性が高いため、護岸によく利用されるとのこと。
水位観測計の鉄柱が立っています。これにあまり近づくとセンサーが感知して「人の背の高さまで水位が上昇した」という誤った情報が配信されてしまうので要注意、と早迫さん。出水の状況は監視カメラによって管理棟からわかるようになっています。狭小河川の鶴見川は、集中豪雨だと1時間足らずで水位が4m以上上昇することもあるので、豪雨時には警戒が必要です。
鶴見川流域センターから越流堤まで20分は歩きました。川沿いの北側エリアを浸し、同センターのある南側エリアにまで流入する水量がどれほどのものか、想像に難くありません。
鶴見川多目的遊水地一帯の「新横浜公園」は神奈川県横浜市が管理しています。河川水が越流してきた際の対応について、新横浜公園指定管理者(横浜市体育協会・横浜マリノス・管理JV共同事業体)の業務に携わっていた公益財団法人横浜市体育協会の南部信治さんが話してくれました。
新横浜公園指定管理者は、鶴見川多目的遊水地兼用の都市防災機能をもった公園の管理者として、河川氾濫による越流時には水防対応の業務を遂行しなければなりません。
2013年(平成25)4月6日。鶴見川上流の集中豪雨により越流し、南側まで浸水しました。大雨予報があったこの日の対応を、南部さんは時系列で振り返ります。
「13時、民間気象会社からの情報を分析し、国土交通省の方々と連絡を取りつつ水防対策会議を開きました。16時、水防対策本部を設置。16時57分、大雨警報が発令され、18時には北側園地を閉鎖しアクセスを制限しました。20時、今後の降水量予想が少なかったので保安要員を残し、職員は自宅待機に。22時、横浜市アメダスで時間雨量36mmを観測。これは想定の範囲内で、越流はないと思っていました。ところが23時に海老名市アメダスで時間雨量83.5mmを観測。想定外の降水量です。23時10分、待機命令職員を緊急召集。23時22分に越流が始まり、24時頃にはピークに達しました。翌7日の2時28分に越流は停止。鶴見川の水位が安定したのを見計らい、3時56分に排水門を開けて放流を開始しました。排水門を閉じたのは翌日の午後12時56分です」
春先の爆弾低気圧。台風並みの気圧低下が集中豪雨をもたらしました。30分足らずで足首から腹部まで水位が上昇。越流水が足元をすくい、バランスを崩すと足首からさらわれ飲み込まれそうで怖かった、と南部さんは述懐します。
4月7日午前5時に撮影した写真を見せてくれました。あたり一面、湖のよう。屋根近くまで水没したレストハウス、荷物を運び出す間もなく水流により散乱した倉庫内……等々。史上2番目だった越流量の猛威を物語っています。
浸水した新横浜公園の復旧作業はどのように行なわれるのでしょうか。
「越流した水が排水されるのを待って、まず鶴見川から流入してきた魚類の確保、ゴミや汚泥の除去をします。これは職員総出による作業です。そして園内を洗浄し、アルコール消毒を施して、公園の一般開放に至ります」
4月6日の越流時は、5月初旬の大型連休前に公園を再オープンするのが目標でした。4月29日には、ほぼ全面オープンできたそうです。
Q「2013年4月6日の越流では何万tの水が鶴見川多目的遊水地に貯留されましたか。また、鶴見川の上流から下流までの被害状況はどうだったのですか」
早迫さん 「およそ92万tで、貯水容量の4分の1です。あのときは短時間豪雨だったので川の氾濫(外水氾濫)による被害はありませんでした。ただ、下水道管路などの冠水(内水氾濫)はあったと聞いています」
Q「第一駐車場が浸水して発券機が3カ月間使えなかったとのことでしたが、浸水しても被害を受けないしくみになっていなかったのですか」
南部さん 「駐車場の機械類は、本来ならワイヤーで吊るし上げたり、取り外して日産スタジアムの高い階層に一時移設するなどし、機械類を浸水から守る作業を行ないます。しかし率直に言って、その対応が間に合いませんでした。それくらい短時間で降雨量が増し、越流のスピードも速かったのです。以降の越流では本来の対応をしており、機械などの被害は発生しておりません」
Q「4月7日の午前2時28分に越流が止まり、約1時間半後の午前3時56分に排水門を開けたとのことでしたが、こうした放流のタイミングは国土交通省が判断されるのですか。何か管理規定があるのでしょうか」
早迫さん 「排水門の開閉判断と操作は国土交通省で行ないます。操作ルールが決まっており、川の水位が下がったのと、降雨量の低下を見極めたうえで排水門を開けます。鶴見川多目的遊水地の場合、公園という公共施設ですから、平常時の状態への早急な復旧と、治水上の安全管理を総合的に勘案しながら判断しています」
Q「1958年(昭和33)の狩野川台風の記憶があります。以後、いくつも水害がありましたが、鶴見川の治水対策によって市街地の水害の危険性はどの程度軽減されたのでしょうか。また今後の震災や津波の対策についてはどうでしょう」
早迫さん 「国の直轄区間に関しては、鶴見川で戦後最も規模が大きかった狩野川台風(2日雨量343mm)クラスを目標に定めて整備を進めている最中です。自治体の管轄区間も時間雨量60mmを基準に整備を進めている途上です。したがって、再び狩野川台風のような台風に襲われた際に100%安全とはまだいえません。もちろん、総合治水対策によって安全性は高まりました。内水氾濫による被害はたびたびありますが、外水氾濫による浸水被害は、1982年(昭和57)の台風18号(被災家屋数2710戸)を最後に出ていません。しかし、危険性がなくなったわけではない。30年間、大きな水害が出ていないことで油断せず、今後も治水対策を進めていく必要があります。地震・津波については、下流域で液状化が懸念される箇所の堤防強化などの対策を講じています」
「市街地の最新の治水事業を施設の見学も含めて理解できたことにたいへん満足しています」(20代男性)
「都市河川の治水対策がよくわかりました。他の河川の流域における対策との比較があれば、なお良かったと思います」(20代女性)
「施設を管理している職員の〈生の声〉を聞けたのが良かった」(30代男性)
「個人では入ることができない遊水地や越流堤を見学できて、その運用まで知ることができて参考になりました」(30代男性)
「実体験に基づいて越流時の対応を語ってくれた南部さんのお話がたいへん勉強になりました」(50代男性)
「遊水地や調整池は絶対に必要ですが、用地費や施設費が高額なので、今後は雨水浸透や田んぼの保全にも国費を投入すべきと考えます」(70代男性)
私たちはふだん「遊水地」や「調整池」の存在をあまり気にもとめませんし、どこにあるのかも知らない人がきっと多いでしょう。しかし、市街化の進んだ都市河川では、川の氾濫を食い止めるこうした治水施設がいかに重要か、よくわかりました。今回は、越流堤によって河川水を一時貯留する遊水地を見学しましたが、雨が川へ一度に流れ込まないように一時貯留する調整池が鶴見川流域に4400カ所あることも驚きでした。散歩のときにでも、近所の調整池を見つけてみたいものです。
行政の人たち、指定管理者の人たちが、遊水地をどのように管理し、越流が起きたときにどのような対応をするのか、〈生の声〉を聞くことができました。「川は1年のうち360日、恵みをもたらしてくれる。怖いのは残りの5日だけ」(藤崎さん)との言葉が印象に残ります。360日の恵みを私たちはもっと噛み締めるべきかもしれません。日ごろから水辺に出て、川によく親しんでいれば、5日間の怖さにも謙虚な気持ちで向き合えます。
いつもは見えない水の流れが一気に浮上して暴れまくる都市の集中豪雨。そういう日には風呂の残り湯を流さない。そういったささいなことから、私たちも治水対策に協力できる。それを知ることができたのも収穫でした。
(文責:ミツカン水の文化センター)