東日本大震災を受け、地域住民の災害時の“水”にかかわる問題への関心は高まっています。「津波」、「洪水」、「液状化」から、地震で水道が止まってしまった際の「生活用水確保」まで、災害時の水に関する問題は多岐にわたります。この企画では、板橋区成増地域を舞台に参加者全員でまちを歩きながら、まずはどんな課題がまちに潜んでいるかを探しました。そして、災害時の水問題についてみんなで一緒に考え、出てきた課題を〈子ども向け防災プログラム〉の形に落とし込むことを目指して実施しました。
<板橋区 地域コーディネートの達人>
板橋区立成増小学校地域コーディネータ
白鳥 円啓 しらとり のぶひろ
成増小学校のPTA会長任期中に学校支援地域本部を学校内に立ち上げ、地域コーディネーターに就任。PTA会長を終えた後も、地域コーディネーターの活動を行なっている。
<板橋区 防災マップの達人>
板橋区議会議員
坂本 東生 さかもと あずまお
板橋区成増生まれ。2007年より板橋区議会議員を務め、現在は第二期目。青年会議所にも所属し、大学や町会などさまざまな団体と連携して「板橋区防災マップ参加プロジェクト」を行なっている。
<防災プログラムの達人>
NPO法人プラス・アーツ理事長
永田 宏和 ながた ひろかず
2005年に神戸で初めて、楽しく学べる防災イベント「イザ! カエルキャラバン!」を開発し、その後、国内・海外を問わず各地域に展開している。その他、企画・プロデューサーとして活動。
NPO法人プラス・アーツ
社会のさまざまな分野が抱える悩みを、"アート"そのものの力ではなく、アーティストの持つ既成概念にとらわれない創造力を導入することで、それぞれの課題や問題を解消し、再活性化させることを目的に活動。特に「防災教育」に力を入れ、子どもが楽しく学べる防災体験プログラムを各地で実施している。
・NPO法人プラス・アーツに関して詳しくはこちら http://www.plus-arts.net/
・防災体験プログラムに関して詳しくはこちら http://kaerulab.exblog.jp/16345172/
最近、ゲリラ豪雨が多発し、浸水の被害が身近な地域でも出ています。今年の夏には九州でも豪雨による大規模な水害が発生しました。このように水害は地震と同様、「すぐ身近に起こること」として迫ってきているように思います。こうした状況下では、子どもたちが自分の身を守るために、「災害時にどうしたらいいか」を自分で考えられるようになることが必要です。
2011年3月に東日本大震災が起こり、防災教育を実施していたNPO法人プラス・アーツは、次のステップとして〈水の防災プログラム〉を考えることの必要性を感じていました。そこで今回の里川文化塾では、プラス・アーツの協力で「災害時にどうしたらいいか」を自分で考えるための知識や技を伝えるプログラム開発を目指しました。
しかし、何かを伝えるためにはリサーチが必要であり、1日のプログラムだけでは、リサーチから分析、プログラムへの落とし込みを行なうことは、到底不可能でしょう。そこで、「こんなことが考えられないか?」「こういう手法を使ったらいい」など、プログラム開発のきっかけづくりに絞ったワークショップを行ないました。
かつて多摩川は、嵐が来ると流域に大きな被害をもたらす「暴れ川」でした。生活用水、農業用水として安全に利用するには、堤防を築いて洪水を防ぎ、必要な水量だけを引いてくる水路をつくらなければなりません。
今回ワークショップを行なった板橋区成増地域は、武蔵野台地の北端にあたり、中央を横切る段丘崖線を境に、概ね南部は海抜20〜30mの武蔵野台地(A)、北部は海抜0〜5mほどの荒川沖積低地(B)になっています。北は荒川、北西は白子川によって埼玉県と隣接しており、荒川に近い北部では新河岸川が西から東に流れ、南部では石神井川が西から東に横切っているように、とても川の多い地域です。
成増小学校を起点に、成増地域を南北2つのグループに分け、実際にまちなかを歩きながら課題を発見するための“公開リサーチ”を行ないました。それぞれの案内人は、プログラムコンシェルジュの白鳥さんと坂本さん。成増小学校の門を出て、それぞれ反対方向にスタートしました。
地図上だけではわからないことを、自分の足を動かして実際にリサーチしていきましょう。
まず、白鳥さんがお話してくださったのが、小学校の敷地内に通っている暗渠である「百々川(ずずむきがわ)」についてです。小学校の体育館脇を通っているのですが、これは昔小学校の敷地がもう少し狭かったという証拠。小学校の開校時〔1950年(昭和25)〕はまだちゃんとした川があり、子どもたちが遊んでいたという話が残っているそうです。しかし、戦後の高度成長時期にフタを閉めてしまったという過去があり、中には面影がまったくなくただの道になってしまった所もあります。また、源流コースは高低差が比較的緩いので、「ここに川があったのかな」「ここには谷があったのかな」ということを確認しながらリサーチを進めていきました。
実は、写真のような緑道になっている場所は暗渠の上なのですが、この先に一時避難所の公園があるため、火事など発災時の子どもたちの避難路となっており、子どもたちの逃げ道という位置づけになっています。公園も同様に、きれいに埋め立てて、普段子どもたちが遊ぶ馴染み深い場所になっていますが、窪地になっており比較的水が溜まりやすい場所になっていました。
・火災時の避難経路ではあるが、水害時には危険な場所になってしまうことを子どもたちに知ってもらう。
・子どもたちが、状況に応じて判断ができるように、情報をきちんと伝えたい。
百々向川は、白子川の支流で、暗渠化されていて今は見ることができません。源流は、現在の光が丘公園敷地内にあったといわれる<於玉ヶ池 おたまがいけ>という説があります。戦前は特攻隊の出撃基地ともなった成増飛行場と神田區武蔵健兒學園(花岡学院)の地に、戦後はグラントハイツというアメリカ軍基地の宿舎が建ち、1973年(昭和48)に返還されて光が丘公園になりました。戦前の成増は、東京都心に近く、美しい水も豊富だったことから郊外の保養地的位置づけを持っていたとのことです。百々向川以外にも、「蛍川」と名前のついていた場所があり、きれいな水が流れて蛍がいた、といわれています。この辺りは湿地帯で、いろいろな川の源流となっていました。
・板橋区は、都心に近く、整備された住宅地というイメージもあるが、一方で実は、とても緑が多く水源や川の多い地域。そのため、ゲリラ豪雨などによる水害の可能性に住民があまり危機感を持たないことが問題である。
ここは、道路が交差点に向かって傾斜になっているので、明らかに水が溜まりやすい危険な箇所になっているのですが、子どもたちがいつも通る場所です。参加者も、道路の上で低い姿勢になり傾斜をよーく確かめていましたが、どちらの方向を向いても、明らかに交差点の真ん中にいる自分のほうが低くなっていると確認できました。
また、そこから進んでいった暗渠沿いは、排水溝に枯れ草などが詰まると排水能力が低くなり、水が溢れる恐れのある所もあります。
・ゆるやかな高低差だが、四方から交差点の中心に向かって傾斜になっているため、水が集中してしまう。避難する際にこういった所は通らないよう、周知する必要がある。
Q.光が丘公園周辺の住宅街から水が出たという記録はありますか?
A.記録はないが、水が出たという話は多くあります。また、この辺りは昔田んぼや畑だったので、特に北側に水が出やすく、近年でも板橋区自体がゲリラ豪雨が多いため、水が出ることがしばしばあります。
成増の北側には、成増小学校を起点として徐々に傾斜を下っていくように百々向川が続いていきます。国道254(川越街道)を越え、東武線成増駅の北側へと進んでいくと、住宅街の南側と違い、駅前は商業施設も多く人通りも多い所です。
こちらのコースでは、スタートの前に坂本さんから<百々向川>の名前の由来を教えていただきました。
Q.百々向川の名前の由来は?
A.実は、<百々向川>という名前は暗渠になるときに統一された名前です。
元々、現成増小学校周辺の川には<谷津田川>という名前がついており、訛って<やすだ川>とも呼ばれていたそうでした。光が丘公園の手前に水が沸いている沼があり、ここが源流となっていたようです。その先にある赤塚には<谷津>という地域があるので、名前の由来にきっと関係があるのでしょう。
川を下り白子川に合流する辺りには現在「ずうこう」と地元の人々が呼んでいる地域があります。成増北口通り商店街の周辺です。これは昔あったとされる瑞光寺にちなんでいますが、その一画に<百々向>と呼ばれる場所がありました。そのため、短い川ではありますが上手を<谷津田川>、下手を<百々向川>と呼んでいたようです。
どこがヤツダとズズムキの境目なのか定かではありませんし、両呼び名が併用されていたのかも知れません。いずれにしても昭和の中頃、この川を暗渠にする際に当時の地域の実力者が<百々向川>へと名前を統一したそうです。
では、ここから窪地コースのスタートです。
百々向川は、川越街道を大きく横断して北側へと続いています。交差点の上には歩道橋がかかっており、そこの上から見下ろすと、川の跡だということや、窪地になっていて水が溜まりやすい地形であることがわかります。
また、その交差点の一角には、<小治浜衛窪申尊>と書かれた地蔵場があり、こんな民話が残っているそう。
『昔ここを流れていた百々向(ずずむき)川に一本の丸木橋が架けられていた。とてもさびしい場所で、毎晩のように強盗が出没し、通行人から恐れられていた。ある朝立派な橋が架け替えられていて、橋のてすりに「たくさんの悪いことをしたので、罪ほろぼしにこの橋を造る。小治兵衛」と書かれた木札が下げられていた。その後は便利になったばかりか強盗も出なくなったというものである。』
窪地コースを暗渠を辿って進んでいくと、駅前の大きなスーパーマーケットの真下を横断するように暗渠がはしっています。さらには、このスーパーマーケットの地下駐車場は、暗渠と同じ高さのレベルで存在しています。
・こういった人が集まる場所でもしゲリラ豪雨が起こった際、地下に流れ込んだ雨水がどこから吹き出すか分からない恐さがある。その土地の歴史や地形を知ることで、危険を予測し、回避することができるようになる。
こちらのコースには高低差が激しく、谷になっている所が多く見受けられます。そのため、下水道から水があふれたり、暗渠の水が地上にあふれてきたりする場所が、各所に予測されます。
暗渠を横断するそれぞれの道は、周りの土地の高さと合うように、かなりの量、谷地を造成しているため、本来の地形が改変されていると考えられます。
・高低差の激しい所の谷部分には、住宅が連なっている。比較的古い家に関しては、嵩上げした土台の上に家が建てられているが、新しい家はそうではない。やはり、土地の歴史や地形の特質を理解して暮らすことが必要だと思われる。
成増地域で唯一、この名前の表記が残る場所が、緑道の先に設置されている看板です。これはまさに百々向川の上にあります。<川>という文字がついている看板を見ることで、元々そこが川だったことに気づく人は、どれくらいいるでしょうか。
各グループそれぞれ、実際に街の中でリサーチしてきた課題点を、等高線のひかれた地図の上に書き留めていきました。
・小学校の避難経路に指定されている道もあるが、幅が狭く避難するとき危険である。[①]
・ある交差点では、周りの道路が全て交差点に向かって傾斜になっており、あきらかに水が溜まりそうだった。この交差点では、10年前にも水の氾濫があった。[②]
・暗渠の上にできた道は見通しが悪く、窪地状になっている。[③]
・両側にブロック塀やコンクリートの基礎があり、逃げるといっても、どこにも動けないのではないか。[③]
・起伏が激しい。[①]
・明らかに水が集中するのが分かるような谷地になっているにもかかわらず、住宅が密集していた。[①]
・元々田んぼや沼地だった場所に住宅が建ち並んでいて地形が見えにくくなっている。土地の歴史を知ることが必要。[①]
・この場所は2年前にも集中豪雨で浸水の被害に遭った。[①]
・原因として考えられるのは、排水管がL字型で水が流れにくいこと、暗渠にゴミや土が溜まっていて流れが滞ってしまったことなど。[①]
・水が浸かりやすく逃げ場がない場所に幼稚園や公園などがあった。[①]
・土のうステーションが設置されていた。[②]
今回はコンシェルジュの方々の話を聞きながらまちを歩いたからこそ、色々なことがわかったのではないかと思います。地震が起きたときもそうですが、見えないものを「知る」ことは大切です。
午後からは、午前中のフィールドワークの経験を生かしながら、「楽しみながら学ぶ水の防災プログラム」の開発に取り組みました。
まずは、プログラムリーダーNPO法人プラス・アーツの理事長、永田宏和さんが、「子どもが楽しいと思うプログラム開発のコツ」をテーマにレクチャー。楽しみながら学ぶ新しい形の防災訓練「イザ! カエルキャラバン!」の話など、豊富な実例を交えて、楽しく学ぶプログラムを開発するためのアイデアを教えていただきました。
防災プログラム開発の達人
永田 宏和さん
今日のタイトルは「楽しみながら学ぶ水の防災プログラムをつくるためのワークショップ」です。最初に伝えておきますと、今日だけでいきなり完成度の高いプログラムをつくれたら誰も苦労しません。今日は、フィールドワーク、ヒアリングなど、いろいろな形で調べてわかってきたことを、“人にどう伝えるのか”という部分について、ノウハウのかけらのようなところを、みなさんにお伝えしたいと思います。
今回の成増でのこの取り組みが、水害に悩まされている全国の地域や世界の国々に広がっていけばと思っていますので、是非皆さんもそういう意識で取り組んでもらえればと思います。
伝えるための素材・リソースはリサーチによってしか明らかにできません。例えば地震災害であれば、被災地にたくさんの伝えるべき知恵、知識、技や教訓、物語があって、それらは調べれば調べるほど明らかになっていきます。それらが集まった段階で、いきなり子どもを集めて、わかったことを伝えても、全然伝わらないんですよね。そこには、「伝えるための手法=編集」が必要で、編集が入ることによって、子どもたちにやっと伝わる。それが、私が考える"プログラムが生まれていく構造"です。
最初に「編集」の話をします。私が理事長をしているNPO法人プラス・アーツは、名前自体が編集手法を表しています。
私たちは防災だけでなく、教育、環境、福祉などさまざまな課題をテーマに活動しているんですが、それは<課題>に対してアーツをプラスするということなんですね。“アーツ”というのは、デザインやアートなどの持つ「クリエイティビティ」、もっと言うと「既成概念にとらわれないような新しい発想」のことで、例えば、「今までこうだから、こうだ」という凝り固まった考え方を「ちょっとこうしてみたら」と違った角度からつついてみることで、「こんなやり方もあったのか!」と発見を促す手法です。その手法がそのまま「プラス・アーツ」という団体名になっています。
私たちは、楽しくするという手法も、場をつくるための工夫の一つであって、場ができさえすれば学びは生まれていくという発想をしています。
創意工夫を行なう際は、「楽しいか」ということが重要です。つくった人が楽しくないと、できたプログラムを実施する人はきっと楽しくないですよね。極端なことを言うと、つくっているときには、悪ノリするくらいのほうがプログラムとして強度の強いものになります。そのプログラムにきちんと学びがあるか、という点は最後に検証しないといけません。
アウトプットは、楽しくて良いのですが、最終的にはしっかりと“学び”があるかを検証しなければならないので、情報収集作業などは、かなり綿密・徹底的にやっています。
また、最終的に集めた情報を全部盛り込もうとすると、子どもにとってはお腹いっぱいでノーサンキューとなってしまうんですね。伝えたいことを一つのプログラムに詰め込むのは無理なので、情報を分けるといった編集も必要になります。
学びというのは一方通行では駄目で、手法としては、子どもをプログラムをつくる側に巻きこむということもあります。人に物事を教えるためには、教える本人が一番よくわかってないといけませんから。
例えば、小学校の高学年が担い手になって低学年に教えるという仕組みを学校に取り入れたら面白いと思います。6年生になったら1年生に防災教育をするという仕組みにすれば、5年生あたりから、「来年は1年生に教えないといけないからきちんと勉強しておかないと」と、そういう意識が生まれていくので、どんどん学びの深さが深まっていくのではないかと思っています。
実は、自分たちが昔体験していた遊びの中や、普通にテレビを見ていても参考になるものがいっぱいあります。また、子どもたちの様子をじっくり見ていると、彼らが惹きつけられる要素が見つかります。それは今も昔もあんまり変わらないと感じています。
体を動かすと頭も活性化しますし、盛り上がるので場もなごみます。小学校低学年の子どもに効果的です。低学年とか幼稚園の子どもたち用のプログラムを見ていくと、体を動かすプログラムが多いんですね。お遊戯などがそうです。
〈防災体操〉
私たちが開発したプログラムだと、「防災体操」がこれに当てはまります。これは、防災の知恵を体操をしながらジェスチャーで覚えてもらうというプログラムで、例えば、地震が起こったら火事と津波がくることを『かじがおこって、つなみがくるよ』と、体で表現してもらいます。2人1組で行なう動きもあって、社会性も身につくようになっています。
今は子どもたちの遊びの世界はテレビゲームが支配しているような状況だと思いますが、でもやっぱりイベントなどで絵本とか紙芝居を実施すると、子どもたちはたくさん集まってきて、本当にじっくり見てくれます。読むのが上手くないスタッフが実施しても、子どもはしっかりと見てくれますから、伝えたいことを紙芝居や絵本にするという手法は有効です。しかしながら、世の中に出ている多くの教育的紙芝居は、成功していないと思います。というのも、正しい話というのは、そのときはわかった気になるのですが、すぐに忘れてしまいます。そのときは「ふんふん」と聞いてくれるんですけど、ひっかかりがなく、流れてしまうんですよね。
〈間違い紙芝居〉
私たちがよくやるのは、最終的にクイズで確認したり、また、今日も後ほど実演しますが、「間違い紙芝居」。これは、主人公がひたすら間違ったことをしながら、ギリギリセーフで助かるという物語なのですが、1回目を読み終わった後に「実は今読んだ物語の中に、8つ間違いがありました」と言うと、子どもたちは「もう1回やって!」と言いますよね。そして、2回目は必死で見てくれますよね? 聞いてくれますよね? 聞きたくなる、見たくなる、その環境をつくるために、「間違いを探す」という手法を使いました。普通だったら2回3回聞くのを嫌がりますけど、逆に「読んでくれ」と言いますから、そうすることで、学びの深さが深くなります。
〈人形劇「おたま劇場」〉
これもひっかかりを盛り込んだ人形劇です。お父さんガエルと息子のおたまじゃくしが避難リュックについて掛け合いをする人形劇なのですが、お父さんガエルがとことん間違えるんですね。「乾パン」を持っていかなきゃいけないのに、「海パン」を持って出てきたり、「笛」を持っていかなきゃいけないのに、「ふで」を持っていったり、ダジャレ満載の話なんですけど、その間違いをゲラゲラ笑うことで正しいほうをちゃんと覚えるという手法ですね。
〈アニメーション「ORANGE」〉
「ORANGE」は演劇をベースにして、それをアニメ化した作品です。演劇は主に大人が観に行くものなのですが、アニメだと子どもでも観ることができます。アニメは子どもたちみんな大好きですからね。また、この作品は、神戸の小学校の4年生以上の授業の中で、実際に使われています。最初、学校の先生からテーマが重いので4年生には無理だと言われたのですが、子どもたちの感想を見ると、作品のメッセージがしっかり伝わっていたことを確認できました。作品に強度があると、想定されている学年を超えることを実感しました。
このORANGEの他にも、クレイアニメ「お助け犬・ポチ」、テレビゲーム「KIKU-KIKU」など、体験手記を子どもに親しみやすいメディアに変換した作品はいくつかあります。
これは一番簡単にできるやりかたですね。学ばせたいことが答えになるクイズを考えて、子どもに出題するだけで、一定の効果が得られます。ひとつだけ、注意すべきこととしては、問題が簡単すぎると子どもはすぐに飽きてしまうということ。簡単なものから入って難しいものにしていく、または、簡単なものと難しいものが入っていて、それらにトライアルしていくような演出をしてあげると、同じクイズでも子どもの注目度が違ってくるという傾向があります。
〈持ち出し品なぁに? クイズ〉
持ち出し品を60秒で暗記するクイズ。暗記というちょっとした工夫を入れただけで、子どもたちは必死になって覚えてくれます。
子どもは、競わせるほうが明らかに盛り上がります。しかも、ちゃんと技を学んで、その技を使ったほうが早いということが競技を通して実証できるんです。例えば、バケツリレーは「水を一杯に入れるのではなく6分目くらい入れたほうが良い」、「掛け声を出しながらバケツを回す」という技があるのですが、そのコツをしっかり守ったチームが本当に勝ってしまいます。
子どもたちが大好きなゲームを活用する手法です。特にカードゲームは近年、教育的な効果が評価されています。ゲームの中にしっかりと学びの要素を取り込んだり、プレーヤー同士の交流を生み出したりするなど、ひと工夫、ふた工夫が求められます。ただし、ゲームをつくるとなると、相当な時間と労力がかかるので、その点は、注意が必要です。
ゲームは制作に労力がかかりますが、完成するとすごく広がっていきます。実際にプラス・アーツが開発したゲームの中には、全国の学校の先生が購入して授業で使われているものもあります。また、海外ではタイで洪水対策の知恵が盛り込まれた「タイ版」がつくられる動きも起こるなど、大きな広がりを見せています。
低学年向けのプログラムを考える上では、「学びの環境づくりに主眼を置く」ことが重要です。興味を引き積極性を生み出すために、体操、人形劇、紙芝居、カルタなどが有効です。小さいのでどうしても提供するほうが中心になりますが、おもしろいから興味を持ってのめりこんでもらい、最終的にしっかり学んでもらうという仕組みをつくることが大切です。
高学年、中学年になると、「一緒につくる」ことを盛り込むことで、すべてが学びになります。例えば、紙芝居、防災カルタなどを一緒につくって低学年の子どもと一緒に遊んでもらうようにすれば、それだけで学びの形が変わってきます。
私たちが開発した防災イベント「イザ! カエルキャラバン!」は、学生さんたちと一緒に、一年近くの時間をかけて約170人の被災者の声を集め、そこから「これだけは伝えよう」という知識や技を抽出することから始めました。「被災地の現場ではこういうことが役に立ってこういう風にしていた」という本物の情報を収集し、それらの情報を、これまでにお伝えしてきたような手法に組み合わせることで、プログラムを生み出してきました。
集めた情報にどう編集を加えて「楽しく」アウトプットするか、子どもに考えさせる環境や子どもが自分から積極的に取り組む姿勢をどうつくり出すか、そういったポイントが、カエルキャラバンのそれぞれのプログラムには盛り込まれています。
例えば、「水消火器で的当てゲーム」というプログラムがありますが、大人気プログラムのため、毎回行列ができます。その行列をオリエンテーションの時間として活用し、並んでいる間に、震災時のリアルな写真や、火災時の対処方法、火を消す際のポイントなどについてレクチャーをします。自分の順番が来ていざ体験をするときには、しっかりとした知識が身についている、という仕組みです。
被災地でけが人を運ぶものがなかったという声から生まれた「毛布で担架タイムトライアル」というプログラムでは、タイムを計ることで子どもの競争意識を掻き立てるよう工夫をしています。あるタイムを出しても、少し時間が経てば他の子どもに自分のタイムが抜かれていて、子どもは、抜かれたらまた参加してその記録を抜きたいという気持ちになりますから、何度でも参加します。繰り返し体験することで復習効果が生まれ、自然な形で知識が身につきます。
「なまずの学校」というカードゲームがあります。紙芝居で問題が出題され、その答えを手持ちのアイテムカードから答えるのですが、カードの仕組みを取り入れたことで、答えが正解・不正解という2択ではなくなります。実際の災害時では、多少使い勝手が悪くても、現場でそのアイテムしかなければ、それを使うしかありません。このゲームはひとつの問題に対して5〜6種類の答えがあって、現場で調達しやすいものを選ぶと高い得点がもらえるという仕組みになっています。また、正解例の中に自分が出したアイテムがなくても、理由を言って出題者が納得すれば正解になるという特別ルールがあります。デジタルにはないアナログの良さを生かしたゲームだと思います。
カエルキャラバンのプログラムの中から、「水」をテーマにしたプログラムを参加者全員で体験しました。
食器がなくなっても、紙で食器をつくれることを学んでもらいます。新聞紙を食器の形に折った後、ビニール袋をかぶせて利用することで、水で洗うことなく繰り返し使うことができます。
物語の中に間違いが隠れていて、話を聞きながらそれを探す紙芝居です。自然な形で繰り返し体験することを促し、学びの深さを深めるプログラムです。今回実施するのは水害をテーマにした物語で、避難のしかたや服装など、川が氾濫した際に注意すべきポイントを学ぶことができます。
実際に成増地域に住み、地域で活動をしておられるゲストをお招きし、成増地域の水害の悩みや、防災の取り組みについて、公開ヒアリングを行いました。
まずは、今回のプログラムをコーディネートしてくれた白鳥さんに、自身の活動について簡単に紹介していただきました。
成増小学校は約600人の中規模校。毎年4クラスの学級が新たにでき、板橋区の中でも子どもたちが増えているエリアにある小学校です。
これまで学校でさまざまな団体が活動する際には、副校長先生がすべての窓口をやっていました。しかしそういった体制だと、先生が忙しく、なかなか対応しきれない現状がありました。そこで、学校と地域をコーディネートする役割として、学校と地域との間に地域本部を置き、外部の団体との交渉は、すべて本部が担うという形になりました。この枠組みは全国的に増えてきており、これによって、学校の中で地域のさまざまな団体が活動しやすくなりました。
「子どもたちに直接的に行なう活動」と「教職員へのサポート活動」の二つの活動を行っており、成増小学校は、特に先生へのサポート活動に力を入れています。先生たちをサポートすることによってできた時間を、子どもたちにきちんと向き合う時間として使ってほしいということで、積極的に動いています。具体的には、ボランティア養成講座、教職員向けの研修などを通して、「地域が学校の先生を教える」ということをしています。
成増小学校地域支援本部では、ESD(持続可能な開発のための教育)の取り組みを進めています。具体的には、自分たちが子どものとき学んだことが、社会の中のこういうところに役立っているんだということに気づくための教育のことで、子どもたちが大人になったときに、子どものときに学んだことがちゃんと役立つような学習をする、ということです。このことを実現するために、担い手づくりをしたり、さまざまな教育を包括的に捉えて実施したりするような取り組みを実施しています。
成増小学校の中では、東日本大震災に関連したさまざまな取り組みを実践しています。というのは、先ほどお話した「ESD」の取り組みで、気仙沼が世界的に有名だということもあって、以前から私自身も何度も気仙沼に行き、つながりがありました。そういったつながりを生かし、今年2月、気仙沼の先生を呼んで成増小学校の4、5、6年生が東日本大震災について学びました。事前学習によって当時のことを学んだ後、体育館の中で、気仙沼の先生からの話を聞く特別授業を行ないました。
また、同じ日に先生たち向けの校内研修会や、地元の人たちや都内の他地域のコーディネーター研修会を実施し、防災と教育との関係について、参加者同士で話し合いました。
私が継続的に参加している気仙沼での防災研修会の中で、必ず言われることは、「子どもたちが自分で自分の身を守る力をどう身につけるか」ということで、まずはそれを最初にやらなければならない、ということです。今日のプログラムでも、まちの中の危険な場所、子どもたちが「ここは危ないな」、と自分で感じられる力を身につけることを、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
続いて、この地域でデジタル防災マップをつくる取り組みを進めている坂本さんに、自身の活動について話していただきました。
全国的に、まち歩きの防災マップをつくっている地域は多いですが、実際にこの地図を使って防災訓練をやったの、と言われるとそれは別の話だと思います。この間、石巻で私と同じやり方でデジタルマップをつくった大学院の先生に、津波がきてどうでしたか、と聞くと、「全然役に立たなかった」という答えが返ってきました。しかしながら、「地図をつくった地域は誰も死んでいない」と言っていました。地図をつくっていなかった地域では犠牲者が多く出ましたので、地図は役に立たなかったが、地図をつくるプロセスは役に立ったのではないかな、と思います。
板橋区役所では、区役所の中だけで100枚くらいの種類の地図があります(例えば、観光、道路、教育、環境、緑、土木、学校区、避難所地図etc・・・)。しかし、100枚の中でデジタル化(ここでいうデジタルとは、PDFなどではなくGISとして処理可能な形式にという意味)されている地図は、ごくわずか。防災関連で調査を依頼したら、職員が紙に手で書きこんできた、という笑えない話もあります。部署同士で横のつながりもないので、せっかく価値のある情報が共有できないという課題があります。それを解決するために、地理情報をデジタル化して1枚の地図に合わせるというのが、私が今取り組んでいるデジタル地図の統合化というプロジェクトです(平成24〜26年で徹底して推進していくということで進めています)。
地図を1枚につなげるということは、簡単なようですごくハードルが高いことです。お金もかかります。人材育成も必要です。しかしながら、イニシャルコストさえカバーできれば、その後の管理・更新コストが飛躍的に下がる、情報管理が容易になる、課題発見が容易になる、という利点があります。なかなか踏み出す自治体は少ないというのが現状ですが、板橋区はデジタル化に踏み出しています。
気仙沼の地図を見ながら、地図をデジタル化することのメリットについてお話したいと思います。気仙沼では、デジタルで津波の浸水予想図をつくっていました。東日本大震災の津波の波が到達した場所を照らし合わせると、ほぼ予想通りになっています。
津波予想図がどういう地図だったかというと、基本的に土地の高低差をタテ5m×ヨコ5m、高さ10cmでとって色分けしたものです。
板橋区の洪水ハザードマップですが、新河岸川(しんがしがわ)と荒川で被害想定はまったく別ものです。荒川が氾濫すると板橋区の北3分の1が水没するので、対策の打ちようがありません。必死になって逃げてください、としか言いようがない状況です。
一方、新河岸川が氾濫した際には何とかできるかもしれません。そういった際に、このハザードマップが活用されるわけですけれども、このマップの問題は、メッシュが広すぎることです。100m角の大きさでメッシュがとられているため、これでは詳細がわからない。100mの中には階段もあれば窪みもあって、何の役にも立たないだろうというのが、板橋区のハザードマップの現状です。
一番考えないといけないことは、「細かく見る」ということです。板橋区で行政を執り行なうときはだいたい1kmメッシュで板橋区全体(約32km²)を1ユニットとして政策を考えますが、これだと住んでいる人のライフスタイルや地域の災害特性までは見えてきません。せめて100mメッシュ、1駅分くらいのユニットサイズで、一つひとつの地域を細分化して考えていくことが大切です。
またそれ以上に大切なことは、防災マップをつくることは、地図をつくって終わりなのではなく、地図を使うのが目的だということです。あくまでも手段として地図をつくる、そして、「自分の命は自分で助ける」という目的のために行なわれるべきものだと思います。
最後に、1番大切なのは、よそ者、若者、バカ者にきちんと向き合うということです。地域活動の際によく陥るパターンが、地域の長老といわれる人たちが、よそ者や若者を疎外して活動を進めることなのですが、いろいろな世代を取り込むことが大切だと思います。
板橋区は地元が強いとよくいわれていますが、板橋区の町会加入率は53%。また、生まれも育ちも板橋区という板橋区民は、全体の20%です。マンションに住んでいて、普段地域活動をしていない人たちをしっかり巻き込んでいかないといけないということが数字に表れています。
デジタルマップは「坂下地域」というエリアでつくったのですが、この地域は名前の通り、坂の下にあります。基本的に0〜3m地帯。新河岸川が氾濫すると浸水4mといわれており、水害のときの避難所になっている小学校も水没2m。この状況を何とかしないといけないということで、この地域でデジタルマップの取り組みを始めました。
今回想定したのは、一番水害が起こりやすいパターン。具体的には金曜午後4時、前日に台風。豪雨と台風による複合的な集中豪雨によって、新河岸川が氾濫し、サイレンが鳴った、という設定です。ゲリラ豪雨は時間100mm降っていて、内水氾濫も起こる可能性がある。そんなとき、あなたはどうしますか? という問いを参加者に投げかけ、ロールプレイング的に考えていきました。
この取り組みには、小学校、中学生、大学生、企業の人、町会の人など、できる限り全部の世代の住民を入れていきました。また、町会など既存の人為的境界にこだわらず、地理的な要件だけで地域分けをし、多種多様な住民の参加を試みながら、マップを完成させました。
午前中のフィールドワークの中で気になったこと、また、それぞれの話の中で疑問に思ったことなどを、参加者同士で出し合い、地域の課題について、より深い情報を共有しました。
Q1.フィールドワークの際に見た「土のうステーション」ですが、土のうステーションに関して区民がどれくらいのことを知っていて、使い方の訓練などがどれだけ行なわれているのでしょうか?
板橋区には自由に土のうを持っていくことができる「土のうステーション」が300カ所くらいあります。実はこの土のうステーションが設置されたのは最近。2年前の水害の際に土のうがあまりにも足りなかったために設置されました。正確にいうと、土のうではなく「砂のう」です。高齢者でも運べるように、小ぶりなものが設置されています。
土のうを積む区としての訓練は、まだ実施されていません。地域センター毎に防災訓練をしているので、地域によってはその中で土のうの積み方を訓練している地域もあると聞いています。使い方については、ホームページや区の広報をご覧ください、ということに留まっているのが現実です。
Q2.成増小学校の学区域はどれくらいなのでしょうか?
成増小学校の学区域はかなり広いです。東上線から南、白子川より東、光が丘の信号から北のエリアが成増小学校の学区域です。東上線の北には成増ヶ丘小学校と赤塚第二中学校があり、成増小学校の子どもたちは赤塚第二中学校に通うことになりますので、フィールドワークで歩いたほぼ全域を、子どもたちは移動することになります。
Q3.昔、沼地だった土地を造成して高島平に団地をつくったと聞いていますが、その際には、どういった水防対策が配慮されたのでしょうか?
高島平は昭和40年代から造成が始まり、60年代の頭まで結構水があふれていました。そこで、地下に生活雑排水や雨水を流す巨大な管を二本通した結果、水があふれなくなりました。というのも、練馬・杉並・中野・板橋区の雨水は、石神井川と白子川と荒川でしかさばけません。石神井川と白子川でいくら雨水を処理しようとしても、結局荒川に入ってくるということで、表層の雨水だけではなく、下水に入った雨水・汚水も高島平で処理しなければならないという状況でした。そういった水に関する大きな課題があった中で、二本の幹線を通して処理をしたという歴史があります。
Q4.土のうが頻繁に活用されているという話を聞きましたが、板橋区の都市計画における水防対策がうまくいっていないのではないでしょうか?
土のうがなぜ頻繁に使われるかというと、私たちが一般に考えるような大きな水害ではなく、局地的な雨による内水氾濫、つまり、下水の管で処理しきれない量の雨水が流れ込むことによる雨水の氾濫の際に土のうが使われるというのが大半です。現在、処理しきれない雨水をさばく方法として、赤塚第二中学校と成増ヶ丘小学校の校庭に水を貯め、下水管にすぐに雨水が流れないようにする工事をしています。
東京都、北区、板橋区、練馬区では、新河岸川を氾濫させないために、地面で水をどれだけ蓄えさせておき、どの順番で水を流していくのかということについて、話し合いを進めています。
Q5.新河岸川流域の地盤沈下は止まっているんですか?
短期の地盤沈下は止まっていると思いますが、長期的な地盤沈降については、認識できていません。あくまでも板橋区ができることとしては、5年10年スパンでの短期的な水害対策をどうするのかということについてです。
Q6.土地条件図って?
2014、2015年(平成26、27)から板橋区としてデジタルマップをスタートさせるのですが、白地図でスタートするわけにもいかないので、地域の町会や青年会議所などがまち歩きをするなどして細かい情報を集め、それを地図に盛り込む作業を、今進めています。
Q7.白地図はどこで手に入るの?
グーグルで白地図を見ることができます。また、グーグルアースを活用すると、現在の等高線(造成された後の地形)を確認することもできます。
Q8.小学生に「地域を知る」という勉強は、プログラムとして実施されているのか?
3年生で成増地域のまち探検を行なっています。クラスを2〜3のグループに分けて、防犯をテーマにしてマップをつくっています。4年生で板橋区の区割りを勉強。板橋区全体のことを学びます。なので、高低差を見ていくことも、3年生から実施できる可能性はありますね。
子どもたちに等高線をひいた白地図を渡し、土地の低い所に色を塗ってもらい、土地の低い所に川が流れていることを伝える。また、板橋の谷戸マップと谷戸の地名があった所を対応させると、だいたいほぼすべてに谷戸や谷津が出てくる。地名とマップを照らし合わせることも面白いのではないか。
グループに分かれて、フィールドワークや公開ヒアリングによって集めた知識や自分の地域での経験を整理し、「水の防災プログラム」のアイデア(プログラムの素)を出し合いました。
<「知らない」ということを知る>
・自分の地域を知らない
・引っ越してきたのでその地域のことを知らない
・昔の地域がどのような地形だったのか知らない
・昔と異なる降り方(集中的、局地的)をする雨の原因と、それがどんな事態を引き起こすかについて知らない
・地域の人にどんな人がいるかを知らない
・洪水の経験がない
・土のうの使い方を知らない
・関心のない人たちをどういう風に巻き込んでいくのか
<知識や情報を伝承する>
・地域の知らない話:伝承
→家族の形態が変わっている現代では、自然な形での伝承は難しい?
・町内会の長老の話
→学校だけではなく、地域の人たちに協力を仰ぐ。そのためには間を取り持つコーディネーターが必要
・小学校区で地域の子どもたちが実際に通学路などの情報を地域や周りにいる大人たちから情報を提供してもらう
・経験者の人たちの話を直接子どもたちが聞く場をつくる
<地理的な要因から災害対策を考える>
・町内会、学区、住宅、生活圏と災害対策が一致していない
→過去の経験からどういった災害がこの場所で起こっているのかに基づいて、自分たちや家族の行動を学区の行動を考えるべき
・町内会などの人為的な枠組みは、誰かが決めた区域。便宜上決められたものではない枠組みの中で情報を共有するような仕組みが必要。
・しかしながら一方で、地域にはいろいろなしがらみがあるのも事実。それらのしがらみを超えてどういう風に手法として伝えていくのかを考えなければならない。
・町内会の長老たちの話を、どういう風にして子どもが自然に学ぶ仕組みに編集するのかという部分も重要。
<子どもたちに楽しんでもらうために>
・実際に水を使う
・学校のプールを使って長靴と運動靴のどちらが良いか体験してみる
・土のうづくり、土のう積み体験
・代用品でつくる土のうワークショップ
・土のうが実際に水を防ぐことができるのか実験
・地形の模型づくり
・まち歩き(氾濫しやすいポイント探し)
<興味のきっかけ>
・プールの時間の前後にプログラムを実施する
・保護者に興味をもってもらう
・着衣水泳
・まち歩き探検:先生方へのきっかけづくりも必要
・議会でも役所でも、土のうをどうしたら良いかという議論がある
・住民と設置者の考え方や活用度の違いに眼を向けることが必要
・区の防災訓練でみんなで訓練するなど、土のうを活用できる知識を伝達する枠組みを考えたい
<子どもたちに伝えたいこと>
・起こりうる水害の規模やイメージ
・雨が降ったらどんなことが起こるのか、雨が災害を起こす仕組み
・大雨や洪水の際、川が引き起こす危険の知識
・自分たちが住んでいる地域に水害が起こる危険性があることを具体的に教えてあげたい
→物語や絵本など、子どもに伝わるビジュアルが必要
(例)水がどこからきてどこにいくかといったことを伝える絵本「しずくのぼうけん」のようなイメージ
<水害の原因>
・なぜ水害が起こるのか、その原因
・住んでいる場所の地形が水害を引き起こすことを明らかにする
・地形の変化と歴史、現在の土地の標高(模型で見せる)、土地の歴史(縄文時代からの歴史)
→動き、体験型が良いのでは(まち歩き?)
<対策を身に付ける>
・避難所の場所と経路
→災害の種類によっては場所や経路を個人で考える必要がある。その練習を、プログラムを通して行なう
・土のうの使い方
・水害時の服装
<実施の工夫>
・低学年までは親子で参加するものが良い
・個々人のライフスタイルに合わせて実施できる工夫
→子どもに宿題形式で家に持って帰って家で話し合ってもらう
イメージ・仕組み→原因→出口というプログラムの流れが良い。防災教育には流れがないといけない。
テーマ「自分達の街に関心を持つ」
<街を身近に感じる>
・情報を体験しながら得る
・知ることから楽しみを与える
<街をどのように知るか>
・見た目の街(建物)にとらわれず、地形を見る
・坂の位置を調べる
・川の通り道を探す
・昔の写真や地図を見せてから現場に出る
・地域の人に話を聞いてまわる
・地名から学ぶ
これらから地形と歴史を学ぶ
<相乗効果を狙う>
・お父さんとお母さんと一緒に街に出る
・危ない所が良くわかる
<地域特性を生かして>
・武蔵野台地の楽しみ
・坂に名前をつける
子どもは、「ミステリー」の要素を大好き。昔の写真や地図など、ヒントが盛り込まれたキットを渡して、推測しながら学ぶようにすれば、それがきっかけになってまちの歴史や地形を知ることにつながる。いきなり「ここは危険ですよ」と言ってもなかなか子どもには伝わらないので、まずこういった形で興味を持たせるプロセスをつくって展開するという流れは、すごく面白い。
地域コンシェルジュの坂本さん、白鳥さんのいずれからも、今回の取り組みをぜひ地域に落とし込みたいという言葉をいただきました。また、プログラムリーダーのプラス・アーツは、カエルキャラバンなどの実践の場を持っていますので、そういった場に、今回の取り組みをぜひ活かしていきたいと思います。
今回つくったきっかけが、成増地域の防災の取り組みや、参加された皆さまの仕事や暮らしに活かされることを願っています。
(文責:ミツカン水の文化センター)