機関誌『水の文化』24号
都市公園

全国の晩ご飯を見た

ヨネスケ(桂 米助)さん

ヨネスケ(桂 米助)(かつら よねすけ)さん

1948年千葉県生まれ。1967年、桂米丸に弟子入り。日本テレビのワイドショー『ルックルックこんにちは』の「突撃!隣のばんごはん」レポーターとして活躍。一旦終了したが、『ザ!情報ツウ』を経て、現在は『NNN Newsリアルタイム』内の人気コーナーとして引き継がれている。野球通としても知られ、本職である落語では、ヨネスケ流「野球落語」を創作し、披露している。 主な著書に『ごはんー〈突撃!隣のばんごはん〉はあなたに幸福をもたらす!』(講談社)、『新・相撲のススメ』(雄鶏社)、『過激に巨人阪神戦』(共著)(廣済堂出版社)DVD:『桂米助の野球落語』(テイチクエンタテイメント)

今は「突撃リアル! 隣の晩ごはん」という形で3週間に1回くらいやっていますけど、これまで20年、3千軒以上のご家庭の晩ごはんを見てきました。日本で行っていないのは、小笠原諸島くらいですね。やらせなし、打合せなしで、本当に突然行きます。「私は料理が好きなので、ぜひ来てください」なんてハガキをいただいたりするんですけれど、前もって打合せがあると思われるんでしょうね。突然行くと「今日はダメ」って断られたりするんですから、困っちゃいます。僕の家にだって突然行きましたよ。鍵をかけられたって、自分で開ければいいんだし。家族は冷蔵庫の残りもので、けんちんうどんを食べてました。僕がいないのにしゃぶしゃぶ食べられてるよりはいいですけどね。

行き先を決めるのはいいかげんです。「そろそろマツタケが食べたいから、山梨県へ行こう」ということもあるし、僕のパスポートの期限が切れちゃう。千葉の松戸で更新するから、松戸へ行こうっていうときもある。とりあえず行き先を決めていても、道が混んでるから途中で高速道路を降りちゃえって、別の場所に行くこともある。そこで家を探すんです。

20年もやっていますと、「この家は入りやすい」「この家は入りにくい」というのは見ただけでわかるようになりました。たとえば町並み。猫が寝てる。三輪車や自転車が乱雑に置かれてる。子供たちが遊んでる。おばちゃんたちが立ち話をしている----。こんな町は「息をしている」んですよ。そういうところだと、会話が進むし、あったかい。視聴者のみなさんが観ていても、ほっとするんです。新興住宅地できれいな町なんだけど、話していても心がないように見えるところはダメ。息をしていないんですね。古い家でも雑巾がけしてピカピカな家なんかはいいですねぇ。家が息をしている。

そうやって突撃して、断られることはしょっちゅうだし、そんなに怒らなくてもいいじゃないって思うときもあるし、本当にいろんな家があります。最近思うことを少しあげると、まず味噌汁が少なくなりました。ビーフシチューやスープに代わったんでしょう。あと自家製の漬物が減って、市販のものが多くなりましたね。この間は久しぶりに「おばあちゃんの代から60年使ってる糠床(ぬかどこ)」っていうのがあったなぁ。それから、そばやうどんを食べている家は結構あるんですけど、パンを食べていたのは20年で3軒くらいしかありません。1軒はお坊さんでしたよ。日本人はやっぱりお米なんですね。そして、大家族の家は、子供がみんな素直です。お父さん、お母さんが共稼ぎでいなくても、「ただいま!」って帰ってくると、おじいちゃんやおばあちゃんがいて、「お帰り」と迎えてくれる。愛に包まれてるんです。

北海道では短い夏を有意義に過ごす。車庫の前でバーベキューをするんですが、マトンはもちろん、北海シマエビとかウニとかエゾアワビとかが乗っかっていて、ものすごく豪華でした。そうやって夏を楽しむんですね。千葉に20世紀梨の発祥の地があるんですが、そこへ行ったときには、30代の主婦が3軒とも冬至の日にかぼちゃを食べていました。日本もまだまだ捨てたものじゃないなと思いましたね。

農家だと日の長い夏は遅くまで農作業をするから、晩ごはんの時間は遅くなる。冬だと早いんです。でも漁師さんだと夏でも冬でも変わりません。5時半頃からですね。早い家だと4時半から食べていることもあります。

そしてこれは山間部に多いんですけど、水がおいしいところでは必ず自慢されます。毎日汲みに行ってるんだとか、水道なんだけど、地下何百メートルから汲み上げてるとか、いろいろなんですけど、「この水はいいよ。飲んでってよ」と言われるんです。飲むと本当においしい。臭みがなくて、極端に言うとキレてるっていうのかな。ビールでもコクがあってキレがあるとか言うでしょ。あのキレです。おいしい水は一番のごちそうだし、水がうまいところは料理もうまい。これは実感です。

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