機関誌『水の文化』29号
魚の漁理

おさかなで生きる

さかなクン

さかなクン

魚類の知識は4000種に及び、食・魚食についての知識もプロの料理人をうならせている。現在は、千葉県館山市に在住。クールアースアンバサダー、水産政策審議会特別委員、「環のくらし応援団」、Team Love H2Oのメンバーなど、多数の役職を担っている。http://www.sakanakun.com/

フィッシュギ(不思議)ですね〜。子供のころからお魚を大好きでい続けたら、魚屋さんや漁師さん、研究者の先生、水中カメラマンさんなど、大の憧れの、お魚に情熱をかけておられる素晴らしいみなさまと知り合うことができて、お魚のさまざまことを教えていただくうちに、どんどんとお魚の世界が広がっていきました! !

出会いは小学校2年です。友だちが僕のノートにウルトラマンと8本足の生きものが闘っている絵を描いたのを見て、「びゃ〜、何だ、この不思議な姿の生きものは! ?」。放課後に図書室に駆け込み図鑑で調べたら、「あっ、見つけた、タコというんだ!」。

それからはタコ大好きのタコ少年。魚屋さんにタコを見に通ったり、母に水族館に連れて行ってもらって、マダコがタコ壷から出てくるまで1時間以上水槽の前でじーっとしていたり。

海で元気なマダコに会いたくて、田舎がある千葉の白浜の磯に行きました。早朝から日が暮れるまで探してもタコにはなかなか会えなかったのですが、面白い生きものをたくさん発見しました。

岩場の上をピョンピョン跳ねるカエルのようなカエルウオや、緑色に輝く目をキョロキョロ、ヒレをパタパタさせて泳ぐキタマクラ。巨大なナメクジのようなアメフラシ。

それに黒潮に乗って千葉・房総の磯までやってきた、珊瑚礁に暮らすカラフルなお魚たち。「なんで、千葉なのに熱帯魚がいるの! ?」と図鑑で調べて黒潮のことも知りました。

あるとき、海でメジナやショクサイフグの子を大きな潮溜まり(タイドプール)から網ですくってきたら、海水を張った大きな容器の中で元気に泳いでくれました。そのあとふっと昼寝してしまい、目覚めたら、メジナたちはみんな死んでしまっていたんです。えっ、さっきまで元気に泳いでいたのに何で! ?

このとき−。命の尊さを知り、お魚を飼うための水の管理方法を覚えていきました。

初恋のお魚はウマヅラハギです。小学校3年のとき、水族館で母に買ってもらった下敷きに、たーくさんのお魚たちの写真が並んでいました。その中にひときわお顔の長ーいお魚を見て、「カワイイ、会いた〜い!」と思ったら、翌日、知り合いの北海道のお寿司屋さんが送ってくれた毛ガニの箱に、小さなウマヅラハギが3匹入っていたんです。

早速願いが叶って「うきゃ〜、うれしい」とウマヅラハギを手にとって顔を正面から見たら、わっ、お魚って正面から見ると不思議な可愛さ! と発見! !それからは、お魚は正面や両目が見える角度で描くようになりました。

これも不思議なんですが、ウマヅラハギだけじゃなく、好きになったお魚には、どんどん会えました。

図鑑で見て憧れていたアカマンボウには、高校3年のときTVのクイズ番組に出演したときに最初に出会えて、クイズで正解できました。会いたかったセミホウボウにも三重県で漁船に乗せていただいたとき、会えたんです。

「セミホウボウは年に1、2回しか網にかからないし、今は季節が外れてるし」と漁師さんが言われていたとき、セミホウボウが水面に現れたんです。

今も、時間があると日本の各地で漁師さんの船に乗せていただきます。

日本にはなんと! 4000種以上のお魚がいることが知られているのです! !でも、そのうちに食用として流通するお魚はごくわずか・・・。だから、もっとたくさんのお魚に会いたくて、漁船に乗せていただきます。でも、網にかかっても、小さいお魚や、姿・形の変わっているお魚は、その場で捨てられてしまいます。

小さなお魚が網の中に入っても、再び海に戻れるように、網の目を大きくされている漁師さんたちがいらっしゃいます。すると、小さなお魚は海で育つことができるし、漁師さんが使われる氷の量が少なくなるし、小魚と大きな魚を分ける選別に必要な時間も節約できて、とっても自然に優しく省エネにもなるそうです。

漁師さんの網に入る、食用にされないさまざまなお魚はいただいて帰ります。元気なお魚は、家の水槽で飼育したり、水族館に寄贈します。

多くの地域で流通されないお魚の中にも、他の地域では大事に扱われるお魚もいます。

例えば関東では捨てられてしまうサッパは、岡山県のみなさまにはママカリという名でとっても好まれています。色が派手で多くの地域では食用とされないベラの仲間のキュウセンは、関西のみなさまにとって、とってもおいしい白身のお魚として高値で扱われています。

最近心がけているのは、「こまめな生活」。電気をはじめ、エネルギーを大切に使います。

食事も食べきれる量をつくり、

「命をいただきます」

という気持ちで残さずおいしくいただくと、食器もキレイで洗うときは布やスポンジだけで済み、洗剤もいらないんです。そうすれば、水も汚さなくて済みます!

すべてのものに感謝して、エネルギーを大切に使い、みなさまと一緒に、地球に優しい生活をしていきたいです! !

さかなクンがつくったケムシカジカの標本。

さかなクンがつくったケムシカジカの標本。口が大きいので、包丁を入れなくても口から身を取り出せ、皮が丈夫なためきれいな標本をつくることができるそうだ。しかし、先の鋭く尖った歯が内側に向かってズラリと生えているので、指を入れると怪我をしてしまうから要注意。尻尾をつかんで、ピンセットなどで身を取り出すと、うまく皮だけが残る。中に綿を詰めて乾燥させれば出来上がり。 「身はテレビの収録のときに天ぷらにしておいしくいただきました!」と、さかなクン。



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    機関誌 『水の文化』 29号,みずだより,さかなクン,魚

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