2005年(平成17)3月、景観法に基づく景観行政団体となった東川町は、景観や環境に配慮した「東川風住宅」の建築を奨励している。自然景観と田畑や住宅などの文化景観を守り育てるため、「東川風住宅設計指針」を設定し、新築、建て替え、庭づくりでの活用を促している。また、2020年に実施した移住体験には定員を上回る応募があったという。東川町の住まいと移住促進策とは?
「グリーンヴィレッジ東川」の街並み(写真は第三期造成中のもの)(提供:東川町)
東川町と施主さんが景観緑化協定を結んでいます。遠景の大雪山系と調和する勾配をもった屋根。豊富な森林資源と木工業の町ならではの木材の利用。瓦をイメージさせる重厚な屋根の色。派手さを抑え暖かみのある外壁の色。囲いは原則として設置しないか高さ制限を守り開放的な住宅景観にする、といった規定です。ゆったりした敷地に広い庭と植栽の緑が映えるすばらしい景色の住宅街になりました。以後の東川町土地開発公社の宅地造成でも、原則としてこの指針に基づいています。
毎年30区画前後ずつ、こぢんまりと売っています。ありがたいことに最近は需要が多いので、手広く宅地造成すれば多くの方に移住していただけますが、それをすると子育て世代が一気に増え、子どもたちが巣立った30~40年後には高齢化が加速し、人口バランスが崩れてしまいます。無理して人口を増やさず8000人規模を堅持するのが今後の課題です。
今は空き家が少なく、中古物件ご希望の方が待機中ですが、そのうち必ず増えてくるでしょう。それを見越して、まだ無登録ですが空き家バンクのしくみはつくっています。家財道具などを整理しておけばご遺族が家を賃貸・売買しやすい、とお勧めしたわかりやすい終活マンガも配布しました。
6月に東京の緊急事態宣言が解除されたタイミングを見計らい、4泊5日で東川町の生活環境を知る「移住体験ツアー」と、3カ月以上1年以下の条件でお試し居住する「移住体験会」の2件を募集しました。ツアーは6組の定員に対し23組の応募があったので、町長と協議し、補正予算を組んで23組すべて受け入れました。ただし、コロナ禍もあるので7月から11月まで6回に分けて実施しました。7月に参加された札幌の方はすでに移住され、アパートに仮住まいして、ご希望の空き家を探されています。東川の充実した子育て環境に惹かれて、お仕事はリモート主体でされるそうです。
「東川暮らし体験館」に仮住まいする8世帯を募集したところ、11世帯の応募があったので抽選で入居者を決めました。沖縄のご家族が「東川を気に入ったので定住します」と12月にアパートに移り住み、戸建て物件を探されています。
民間で450世帯分ほど、公営住宅も400世帯強は受け入れるキャパシティーがあります。ただし、民間アパートも稼働率が98%なので、家賃5万円前後の人気物件はなかなか空きが出ません。
2世帯だけ入れる施設「大雪遊水ハウス」がありますが、最長2カ月でした。なので今回の施策で、短期(4泊5日)、中期(2カ月)、長期(3カ月以上1年以下)の三段階になったわけです。長期の拠点、東川暮らし体験館は、北海道警察の官舎を町が取得したもので、部屋には最低限の電化設備、ベッド、食器類を備えつけていますから、ハードル低くお試し居住ができます。
農家宅地の需要が高いです。田んぼのなかの一軒家ですね。そんな環境でのびのびと子育てしたい、と。虫などとも一緒に住むのが平気なら、満々と水を張った水田に囲まれるのは、もっとも東川らしい暮らし方かもしれません。
(2020年11月20日取材)