機関誌『水の文化』19号
合意の水位

水管理委員会の仕事 水の地域政府

オランダの田園風景には、風車が何台も連携して、高い水路へ水を排出する仕組みがある。

オランダの田園風景には、風車が何台も連携して、高い水路へ水を排出する仕組みがある。



編集部

「水の地域政府」のようなもの

子供向けのオランダ地理絵本に『Holland Compass』というものがある。目次を見ると「土地形成の歴史」「ポンプ機械」「敵としての水」「水利工学」「輸送手段としての水」「食料資源としての水」など、さながら「オランダ版水の文化テキスト」なのだが、その中に「水管理」に一章が割かれている。内容は、ウォーターズカップ(waterschap)の仕事の紹介だ。英語ではwater boardと表記するが、どうも日本語には適訳がない。とりあえず「水管理委員会」と訳すが、そこにはこう記されている。

「オランダの水管理は運輸水利省、地域政府と水管理委員会が責任を持っています。水管理委員会は、地域レベルで、水管理、水防、水質、沈泥と汚染の防止、交通路としての水路を扱っています」

つまり、日本の土地改良区のように、用排水施設に資金を提供し使用権を得る者だけから成る組合ではなく、その土地に住んでいる全員が水管理委員と関係し、自治的に地域の水全体を管理する組織が水管理委員会だ。その証拠に、水管理委員会は水に関する徴税権を持ち、役員メンバーは投票で選ばれる。まさに、「水の地域政府」のようなものなのである。

オランダの土地はポルダーの集合体である。ポルダーは堤防と水路で囲まれた干拓地だが、この堤防のメンテンナスや水路の水位は重要な管理項目だ。泥炭地で排水された水は、水車やポンプでより高い所にある水路に、順次汲み上げられていく。そして、最終的には海につながる場所が一番高い水路となっていて、大規模な排水機場があり膨大な水が排出されている。

この一連のシステムがうまくいかなければ、土地はすぐに水であふれてしまうだけに、水管理の仕事と責任は重大だ。それを、国ではなく、地域の委員会が主導しているのである。日本には、地域の水管理に横断的に責任を持った地域組織は存在しない。水管理委員会とは、いったいどのような組織なのだろうか?

管理しなくてはならない水の流れ

ラインラント水管理委員会の広報官、ホエクさんは言う。

「我がラインラント・ウォーターズカップは12世紀につくられたオランダで一番古い水委員会です。市民がつくった団体としても、おそらく世界で一番長い歴史があるでしょう」

ラインラント水委員会は、北ホラント州と南ホラント州をまたぎ、アムステルダムの一部から、ワッセナー、ライデン、ムイデン、ゴーダなどを含んでおり、その広さは1100平方km。人口は1300万人だ。この地域の中には200のポルダーのほか、多くの湖、川、運河が存在し、西側は北海に面している。

「水位の調整には神経を使います。運河や湖、水路といったすべての水をコントロールしており、現在は、NAP60cmの水位を保っています。このあたりは球根栽培が盛んな地域で、水位が2cm高ければ球根は腐り、2cm低ければ枯れてしまいます。これほど微妙な調整が必要とされますから、雨が降ったら大変です。1mmの雨が降ると、100万tの水が増えますから、水位を保つために、4カ所の排水機場から排水します」

ここでも、地下水位は大きな関心事だ。地下水位のコントロールは、水路の水位調整の大きな目的でもある。この感覚は、日本ではあまり意識されていない。秋田の八郎潟干拓でももちろん排水には気を使っているが、稲作を主としているためか、地下水まで含めた厳密な水位コントロールは、これまであまりされてこなかった。

「オランダでは朝から晩まで雨が降り続くことは、ほとんどありません。雨は主に、夏から秋に降りますが、春から夏はあまり降らないため、逆に水分が蒸発して水路の水位は下がります」

水路の水位が下がれば、地下水位も下がる。オランダは建国以来建造物の基礎に木の杭を打って地盤を強固にしてきたが、水位が下がると木の杭も腐ってしまうそうだ。そんなことも、水位を一定に保たねばならない理由の一つである。

  • ラインラント水管理委員会 ホエクさん

    ラインラント水管理委員会 ホエクさん

  • 上:ラインラント水管理委員会の管轄するカットヴィークの排水機場(右建物)。ラインラントのポルダーの水は、ここから絶えず北海に向けて排水される。 下:排水機場の建物の裏側と、内陸側を管制するポンプのオペレーター。

    上:ラインラント水管理委員会の管轄するカットヴィークの排水機場(右建物)。ラインラントのポルダーの水は、ここから絶えず北海に向けて排水される。 下:排水機場の建物の裏側と、内陸側を管制するポンプのオペレーター。

  • ラインラント水管理委員会 ホエクさん
  • 上:ラインラント水管理委員会の管轄するカットヴィークの排水機場(右建物)。ラインラントのポルダーの水は、ここから絶えず北海に向けて排水される。 下:排水機場の建物の裏側と、内陸側を管制するポンプのオペレーター。

地域水政府としての水管理委員会

1850年(嘉永3)には、オランダ国内に約3500の水管理委員会が存在した。しかし、その後統廃合を繰り返し、2000年(平成12)には57、さらに2002年(平成14)には45に集約されている。統合後の水管理委員会は、「連合水管理委員会」とか「ポルダー委員会」などと呼ばれている。

水管理委員会がユニークなのは、地元の行政府とは独立していること。自ら、市民が守らなくてはならない規制をつくり、税金を賦課し徴収することもできる。そして、地域の水管理だけに専念する組織である。

任されている仕事は、

  1. 水コントロール:堰や運河や砂丘を使って洪水を防御する。
  2. 水管理:水量の総量管理や、適正水位を維持する。あるいは表流水の水質を改善する。
  3. 内陸部の水路や道路の管理を行なう、等。

ただし、飲料水は水管理委員会の範疇外で、水道会社が行なう。水道会社は、オランダの場合すべて国営である。また、広域の地下水は自治体が管轄する。

とはいえ、水は表流水も地下水も一環した存在だ。したがって、統合的な水管理を行なうためには、環境管理、地域計画、自然保全といった総合的な視野で臨むことが要求される。その結果、水管理委員会は市や州や農業者や自然保全組織等と協力していくことになる。さらに、田園地域と都市の両方で活動することが求められる。つまり水管理委員会は、水循環に応じた、自治政府のような組織なのである。

水管理委員会では、水循環を、「飲料水の生産と供給、排水路を通した余剰水の集水と移動、そして排水の浄化」と定義している。

事業コストは年間2500万ユーロ(2005年〈平成17〉1月現在、1ユーロ:140円55銭)。これを、農民、住宅保持者、市民全員が負担する。農民ならば土地の大きさにより、1ha当たり45ユーロ。住宅保持者は家のランクによるが、年間19ユーロ。市民は一人年間16.5ユーロ。市民で住宅保有者はダブルで払うことになる。さらに、水質保全には、年間7500万ユーロかかるそうで、1世帯につき年間120ユーロ。さらに工場もランク別に支払っている。政府からは一切資金を受けずに独立しており、役員は直接選挙で選ばれる。

投票は手紙でも電話でもインターネットでもできる。ちなみに、初めのころは市民には投票権がなく、農民のみに与えられていた。ところが、都市化が進むにつれ、市民にも当事者として投票権が与えられたという経緯がある。その投票権も一人1票ではない。農業に従事し都市に居住する市民である場合は2票の投票権を持つ。つまり、その人の立場によって投票権が割り振られている点が興味深い。

ウォーターズカップはオランダ政府ができるより先にあった、と言われるとおり、まさに民主主義の原型がここにあるように感じられる。

水管理委員会の役員

それでは水管理委員会の役員には、どのような人がなっているのか。

ユトレヒト郊外で酪農を営んでいるビッカーさんは、120haの土地を持ち、160頭の乳あ牛を飼っている。この農場は奥さんと息子さんの3人で営んでいる。ビッカーさんは西オランダ農業組合委員をしている他に、地元のホーフヘームラード水管理委員会の役員もしている。農民を代表して立候補して、選挙で選ばれて役員になったというが、水管理委員会としては、どのような仕事をしているのだろうか。

「水管理委員会の仕事は水量と水質の管理です。このあたりの土地は、できてから約700年経っています。地表30cmが粘土層でその下が泥炭層ですから、地下水が50cmから60cmほどでないと農業ができません。地下水を高くすると、機械が通れない、良質の牧草が生えない、牛の足が濡れるといった弊害が起こります。現在は50cmで調整していますが、水管理委員会ではこの地下水の高さを議論しています。この点が、一番政治的なポイントです。このポルダーは1600haありますが、10年に一度、地下水の高さを政府と調整して決めなくてはなりません」

ここでも、地下水位は大きな問題だ。さらに、水質面についても、

「肥料が混じった水は雨とともに全部排水口に戻ってきます。うちでは排水が外に流れ出ないようにしています。オランダの排水基準は今でも大変厳しいのですが、EUの中で一番厳しい基準にしようという動きがあります」と話す。

役員として、今までで一番苦労したのは、1995年(平成7)の洪水のときだという。

「川の水位がものすごく上昇しました。周囲はみんなあふれ出て洪水に。さらに増水すれば堤防を壊さなくてはならないが、壊すべきかどうか、あのときは本当に困りました。壊すとなれば、何十万という人と家畜を移動させなくてはならず、金もかかるし、リスクも大きい。しかしより大きな被害を食い止めるためには、その決断を我々がしなくてはならなかったのです。結局それ以上増水せず、堤防は壊さなくて済んだのでほっとしました」

お題目だけの役員ではなく、重い責任を背負っているのだ。農家は土地と密着した暮らしをおくっているだけあって、そのリアリティはひとしおである。現在、役員としてビッカーさんは、問題に感じていることがあるのだろうか。

「ここを自然保全地域に戻そうという動きがあり、環境団体と協議しているぐらいで、この地域については、ほとんど問題はないと言っていいでしょう」

ビッカーさんの33歳になる息子も語り始めた。

「環境団体に対する考え方は、私も父も同じです。彼らとは何回も話し合いました。彼らは、15年も昔の自然地域に戻そうと言います。でも我々は、ここが今も充分自然の状態だと思っています。自然についての考え方が、我々と環境団体とでは違っていることが問題だと思っています」

合意形成は話し合い、と言いながらも、そこに共通の言語がないと対話が成立しない。互いの違いをわかっていても、なおぶつかり合う利害と思惑を、多様なシナリオをつくりながら調整するオランダモデル。このようなオランダ人の姿を「積極的妥協の上手さ」と表現した人もいるし、「国民一人ひとりが水と闘っているから意見調整がしやすい」ということもできるかもしれない。

しかし、単に足して二で割ったり、互いが得をするような「利害調整」だけが合意形成ではない。

ビッカーさんは、話のついでに出たデルタ計画について「ハリングフリート堰は多分開くでしょう。私は反対の立場ですが、自然も大切ですし。淡水をどこまでキープし、塩害をどの程度防げるのか見守らなければならないと思っています」と言う。

こうした言葉の裏には、計画、調整、試験実施、本格実施、監視、変更、という合意形成のためのプロセスへの信頼が感じられる。さらに言えば、さまざまな相反する意見を代表するNGOがあり、それらの意見を反映する場があるからこそ、社会としての合意形成のプロセスも信頼されるのではないか。

「ヨーロッパでは、財産を子供に無償で譲ることは稀で、親の生前に売ることが一般的だ。会社を経営していれば株を売るし、オランダでは相続する農地の半額までは税金がかからないから、農家も土地を子供に売る場合が多い。もちろん安くはするがね。ここのポルダーの平均は110haの農地で牛45頭というところで、集約的農業のほうが、効率がよく大きな利益が得られるから、農家の規模は大きくなる傾向にある」

と、オランダ農家が集約化していく理由の一端を話してくれた。ビッカーさん自身も少しずつ息子に任せて、新しく建てる新居に移り、母家は息子に明け渡す予定だ。離農者は年間3%から4%ということで、農業従事者の豊かさが底支えになっていることがわかる。酪農は生きた動物相手だけに、大変な重労働だが、それを補って余りある見返りが得られるのだ。

「バカンスにだって、毎年行くのよ」

とビッカーさんの奥さんが言うので、こんなにたくさんの牛を飼っているのに、どうやって家を空けるのかと聞くと、農作業を請け負う下請け会社が存在するという。

「バカンスでお金を使う上に、代わりの人にお金を払うから、二重の出費。でも、リフレッシュすることは、人生で大切なことだから」

前向きに生きるオランダの農家の在り方が、垣間見えるエピソードであった。

  • ビッカーさん親子と彼らの農場。毎朝、毎晩2時間ずつかけて搾乳したミルクは、1万5000リットルのタンクに貯蔵され、3日に1回出荷される。 15km離れた所には25haの耕作地があって、トウモロコシと小麦をつくっているそうだ。この辺りの平均からすると大規模だが、奥さんのヤンさんと息子のヤコさんの3人でやりくりしている。父のリッタさんは西オランダ農業組合の理事と水管理委員会の役員でもある。 右上の写真の斜めに立っているのは、雨量計だ。

    ビッカーさん親子と彼らの農場。毎朝、毎晩2時間ずつかけて搾乳したミルクは、1万5000リットルのタンクに貯蔵され、3日に1回出荷される。 15km離れた所には25haの耕作地があって、トウモロコシと小麦をつくっているそうだ。この辺りの平均からすると大規模だが、奥さんのヤンさんと息子のヤコさんの3人でやりくりしている。父のリッタさんは西オランダ農業組合の理事と水管理委員会の役員でもある。 右上の写真の斜めに立っているのは、雨量計だ。

  • ホーフヘームラード水管理委員会組織図

    ホーフヘームラード水管理委員会組織図

  • ビッカーさん親子と彼らの農場。毎朝、毎晩2時間ずつかけて搾乳したミルクは、1万5000リットルのタンクに貯蔵され、3日に1回出荷される。 15km離れた所には25haの耕作地があって、トウモロコシと小麦をつくっているそうだ。この辺りの平均からすると大規模だが、奥さんのヤンさんと息子のヤコさんの3人でやりくりしている。父のリッタさんは西オランダ農業組合の理事と水管理委員会の役員でもある。 右上の写真の斜めに立っているのは、雨量計だ。
  • ホーフヘームラード水管理委員会組織図

【サスティナブルな都市実験都市ニューランド】

世界初の円形サスティナブル・シティ

ユトレヒトの西にアメルスフォルトという町がある。この郊外につくられたニュータウンが「ニューランド」と呼ばれるサスティナブル都市だ。

アメルスフォルト市の広報のヴィエタさんは「この計画の発端は、持続的発展という概念を打ち出した1986年(昭和61)のブルントラントレポートです。住宅の基準耐用年数は50年に見積もられていますが、私たちは持続可能な建築とは、建築そのものだけではなく、町全体が持続性を持っていなければならないと考えています。いくつかの家にソーラーパネルや風車をつけたからといって、その町が持続的存在とは言えません。一番の基本は柔軟性にあると思います」

ニューランドの水循環と道路

「この町の水処理はクローズドシステムとなっており、中で発生した水は中で処理します。ですから外側の農家から汚染された水がやってくることはありません。雨水は中央部にある池に溜まるようになっており、そこに公園をつくりました。溜池のようなものですが、島をつくり、草を植え、自然の浄化作用を期待しています。オランダの目下の問題は地下水位がどんどん下がっていくことにあります。ですから、できるだけ雨水は溜めるようにしているのです。この溜池の水は汚染されていないので人工的に浄化する必要はありません。水を浄化するためにエネルギーを使うことは、持続的なやり方とはいえないと考えています」

さらに特徴的なのは、この町の交通計画だ。町は円形状につくられ、外周道路と中心から伸びる放射道路の組み合わせで街区が構成されている。

「車をできるだけ使わないということにも意識を配りました。直線道路は一番スピードが遅い歩行者や自転車専用にし、自動車は環状線しか走れません。住民が必要な施設、すなわち教会、スポーツホール、学校、病院、ショッピングセンター、文化センターは中心部に集まっています。ここには、車で行くよりも徒歩や自転車で行ったほうが早くなるように、道路を設計しているわけです」

確かに、この町の中心部に車でたどり着くためには、延々と町の外周を回らなくてはならない。

「例えば、200〜300m先のショッピングに行ったり、子供を迎えに行くのに、車をちょこちょこと動かすことが、一番環境に悪影響を与えます。これをなくそうとしました」

  • 左:アメルスフォルト市広報ヴィエタさん。右:人工的につくられた町でも、もとからあった水辺が生かされている。

    左:アメルスフォルト市広報ヴィエタさん。右:人工的につくられた町でも、もとからあった水辺が生かされている。

  • 右中のイラストは、もともとの地形、高低差や水路を示している。

    右中のイラストは、もともとの地形、高低差や水路を示している。 緩やかにカーブを描く道路は環状線、直線道路は環状線をつなぐもので、自動車は環状線しか走れない。

  • 環境に配慮して設置された太陽光パネルに関しても、建築デザインや耐久性を考えて、期ごとに設置方法が進歩している、とヴィエタさんは教えてくれた。計画通りにいかない現実に、柔軟に立ち向かうオランダ人らしいエピソードだ。

    環境に配慮して設置された太陽光パネルに関しても、建築デザインや耐久性を考えて、期ごとに設置方法が進歩している、とヴィエタさんは教えてくれた。計画通りにいかない現実に、柔軟に立ち向かうオランダ人らしいエピソードだ。

  • 左:アメルスフォルト市広報ヴィエタさん。右:人工的につくられた町でも、もとからあった水辺が生かされている。
  • 右中のイラストは、もともとの地形、高低差や水路を示している。
  • 環境に配慮して設置された太陽光パネルに関しても、建築デザインや耐久性を考えて、期ごとに設置方法が進歩している、とヴィエタさんは教えてくれた。計画通りにいかない現実に、柔軟に立ち向かうオランダ人らしいエピソードだ。


住宅計画

ニューランドが世界的に有名になったのは、住宅屋根にソーラーパネルがつけられ、電気を自前でまかなおうとした「メガワット・プロジェクト」による。現在、500軒の家や道路に、面積にすると1万2000平方メートルのソーラーパネルがつけられている。これは、300家族が1年間に必要とする電力をまかなう能力を持っている。

ソーラー住宅パネルというと、問題になるのは太陽光の方向である。概ね8割は南に面しているとはいえ、家によって発電効率は当然のことながら差が出る。そこで、ソーラーパネルの維持管理は、エネルギー供給会社が行なうこととし、公共の場にもソーラーパネルを設置して、地区全体のエネルギー効率が増すような仕組みをつくっている。

現在のニューランドの人口は約1万5000人、世帯数は5200戸。1995年(平成7)から2002年(平成14)にかけて、年間1000人ずつ入居者を増やし、現在入居率100%だそうだ。居住者の平均年齢は35〜45歳程度。オランダでは、新たに住宅開発をしなくてはならない場合、最低賃金者のための住宅(ソーシャルハウジング)を40%用意することになっている。

ニュータウン開発時には、コミュニティをつくるのにも時間をかけた。「地域には、いろいろなスポーツクラブ、ブリッジクラブ、テニスクラブなどがあります。オランダのクラブ活動は、学校よりも地域での活動が活発です」

ニューランドでは雨水利用、地熱利用、ソーラーパネル、温水パネル、高断熱などを駆使して、エネルギー0住宅を模索中だ。35%のエネルギーが保持できれば可能な話だそうだが、現状ではロスが出て15%までしか活用できていないという。

ソーラーパネルに限っていえば、開発にはシェル石油が大きなウェイトを占めている。パネル自体のコスト、メンテナンスにかかる維持費を考えると、シェルからの援助があるから実現できたことではないかとも思われるほど。

こうした意味からも、この大規模社会実験は、今後も長い視野で見守っていかなければ確かな評価はできないだろう。

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