水を使う仕事、と聞いたとき、筆頭に挙げられるものの一つが紙漉きでした。
長年本誌で、和紙に取り組もうとしながら、なかなか実現できなかったのは、わかったような気になっていたから、ということが今回、取材してみてわかりました。
実は和紙について、何も知らなかったことがわかったのです。
同じ紙なのに、中国から伝わってきた唐紙と、経由地である韓国の韓紙と、日本の地場に根を下ろして命を与えられた和紙とでは、材料もつくり方も使われ方も違う、ということを初めて教えられました。
和紙の優れた特質と風土に根差した特性を、
どう生かし、次代につなげていったらいいのか。
紙をここまで高めてきた先人に恥じぬよう、21世紀における和紙の活路を見出したいと思います。
越前で開発された、手漉きの水彩画用紙 MO紙。和紙は〈流し漉き〉で漉かれるから、〈溜め漉き〉のMO紙は和紙とは呼べない。原料も異なっている。しかし、開発者の沖茂八さんの努力は、越前・五箇の水と紙漉き職人に共通する気概によって結実したといえる。