機関誌『水の文化』53号
ぼくらには妖怪が必要だ

描画:わたなべじゅんじ
『水の文化』53号
ぼくらには妖怪が必要だ

水の文化 53号 ぼくらには妖怪が必要だ
2016年 6月

正義感の強い妖怪・鬼太郎がさまざまな妖怪と対決する漫画『ゲゲゲの鬼太郎』は、アニメ、映画なども制作され長い間親しまれてきた。最近ではゲームソフトがもとになった『妖怪ウォッチ』が子どもたちを中心に大人気だ。しかし、日本人にとって妖怪とはそもそもどのような存在だったのだろうか。

水辺の妖怪として代表的なのは河童だろう。今はきれいな水や水辺のシンボリックな存在となっているものの、かつては人間の尻子玉を抜くと恐れられた、どちらかというと怖い妖怪だった。河童をモチーフにした「ゆるキャラ」が多数生み出されている現代とは何が違うのか。

民俗学者の柳田國男(やなぎた くにお)は、妖怪を「普通の人々の心意伝承に迫る民俗資料」としてその研究を奨励した。妖怪は人間が想像(創造)したもの。ならば妖怪を研究することは、その当時の人間や社会を研究することにつながる。
河童が「怖い」から「かわいい」に変化したのは、私たち人間の側になにかしらの変化があったからだと考えられる。

かつて自然を恐れ、敬った日本人が生み出した妖怪。その変遷を、水辺も視野に入れてたどることで、自然観などの変化について考えていきたい。

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水辺の妖怪ミニ図鑑

妖怪はあらゆる場所にいるが、ここでは編集部が独断で選んだ 「水辺に現れる妖怪」を紹介しよう。あなたが気になる妖怪は……?

Illustration by 蘭陵亭 子梅


小豆あらい 牛鬼 トイレの花子さん

小豆あらい:川のほとりや橋の下に現れ、音を立てて小豆を洗う。もし歌が聞こえても探さないこと。探すと川にはまって死んでしまうという。
牛鬼:牛と蜘蛛が合体したような牛鬼(うしおに)は、海岸や川の淵などの水辺で人や家畜を襲う。ぬれ女とコンビを組むこともある。
トイレの花子さん:学校のトイレで呼びかけると個室から返事が聞こえるという都市伝説の妖怪。昭和20年代にはすでに「花子さん」の話があったそう。

川獺 あかなめ

川獺:川獺(かわうそ)は子どもや娘に化けるといわれる。破れた笠をかぶり、提灯を手にするなど人間のような雰囲気をもつ。
あかなめ:汚れた風呂場に出るが、風呂桶の垢(あか)を長い舌でなめるだけで悪さはしない。「風呂掃除をきちんとせよ」との教訓か。

水瓶 ぬれ女 船幽霊

水瓶:水瓶には水を自由に扱う能力があるらしい。鳥山石燕が『百器徒然袋』で描いた「瓶長(かめおさ)」は水瓶の付喪神(つくもがみ)とされる。
ぬれ女:頭は濡れた髪の女性で胴体はヘビ。前脚は人の掌。海辺や波間にいて、人に巻きつき食べてしまう。牛鬼と連携して人を襲うとも。
船幽霊:水難事故で死んだ人たちが亡者となって海に現れる。出会った人間を仲間にするために、海水を柄杓で船に注ぎ沈没させようとする。

参考文献&Web
『身近な妖怪ハンドブック』(文一総合出版 2012)
『HUMAN vol.06「特集 日本の魑魅魍魎」』(平凡社 2014)
『知識ゼロからの妖怪入門』(幻冬舎 2015)
『決定版 日本の妖怪』(宝島社 2015)
国際日本文化研究センターHP「怪異・妖怪画像データベース」

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