魚を獲っても生のままならすぐに腐ってしまうけれど、干物にすれば多少日もちするのはなぜなのか? これは日に干すことで、細胞が含んでいる水分を「抜く」からだ。
人類が生き延びるためには、食料の見極めと確保、そして保存が大切だ。日に干す、発酵させる、塩を使うなど保存性を高める方法はいろいろあるが、今回はそのなかでも「水分コントロール」に着目した。水を抜いて保存性を高めた食べものがどのように生まれ、そして現代に受け継がれているのか。
水分をコントロールすることが食べものの保存性を高める――というのは科学が進歩した今だからわかることで、その知識のない時代に生きた人たちの試行錯誤は、大変なものだったろう。
そもそも高温多湿なこの日本で「水を抜く」という行為そのものが非常に難しいことだ。知恵と工夫から編み出された保存性の高い食べものの「今」はどうなっているのか。その土地の気候・風土に適した伝統的な手法を絶やすまいと奮闘する、あるいは現代にマッチした新しい手法に挑む人々の姿を追った。
日差しの強さと角度、そして仕上がりを計算しながらサバと真イカを干す。(静岡県熱海市の網代漁港)