命の源である水を得るため、先人はさまざまな技や設備を生み出してきた。水を公平に配るための円筒分水や暮らしを守る堰堤などは「有形」の文化遺産として今も残る。一方、集落同士で定めた水の運用方法、あるいは集落内で守ってきた慣習などは「無形」の文化遺産だ。
「有形」「無形」を問わず、水にまつわる遺産には、その土地ならではの知恵と工夫が秘められている。今号は、水にまつわる遺産の地域における成り立ちと、実際に使っている人たち、維持管理を担う人たちの姿を見つめて、「使いつづけている水遺産」の意義を考えたい。
農民たちが掘り継いだ「上江用水路」によって穀倉地帯となった高田平野(撮影:川本聖哉)