水分をたっぷり含む果実は、食後のデザートとして大好きな人が多い。旬に贈答品としていただいてもうれしいものだ。しかし、ふだんから食べている割に、私たちは果実のことをあまりよく知らない。
例えば、今ある果実の多くは、明治時代以降に導入されたものであることや、海外では水分を得るために果実を食べ、また野菜と果実を特に区別せずサラダとして混ぜて食べていることなど。
日本の果実のあり方は世界的に見るとやや特殊だ。甘みと見た目が重視される結果、高価になりがちで、日本人の果実摂取量は欧米人の半分以下といわれる。そして国内の果樹農家は稲作農家以上のスピードで減っているという。
人口爆発による食糧不足や気候変動など、地球が抱えている課題からも果実が果たす役割は重要となる。それは世界中でたくさんの果実を食べればその分だけ果樹が増え、緑地も広がっていくはずだからだ。おいしくて楽しい気分にさせてくれるみずみずしい果実が、私たちにもたらすであろうことについて考えたい。
湧き水に浮かべたスイカ(撮影 前川太一郎)
『水の文化』68号で取り上げる「果実」について
農林水産省が定める果樹(クリやウメ、ミカン、ナシなど=おおむね2年以上栽培する草本植物及び木本植物で果実を食用とするもの)のほか、文部科学省が「日本食品標準成分表」で定める「果実類」(草本植物から収穫されるものであっても通常の食習慣において果物と考えられているイチゴやメロン、スイカ)とする。ちなみに、メロン、イチゴ、スイカは、総務省の「家計調査」でも「生鮮果物」として扱っている。